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<title>Ｃ言葉</title>
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<copyright>Copyright (c) 2011, 千歳</copyright>

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<title>うさぎの気持ち</title>
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<created>2011-11-20T08:24:40Z</created>
<summary type="text/plain"> 　　　１ 　われは天使。 　白き翼を持ち、頭上に輝く光輪を持つ神の使いである。 　しかし故(ゆえ)あって、いまは一羽のうさぎでしかない。 　神の不興を買い、姿をうさぎに変えられ、下界に墜とされてしまったのだ。 　下界の者たちの悲しみ、苦しみを理解せず、真摯な祈りを軽視していると、神はおっしゃるのである。 「お許しください！」 　天に向かって必死で訴えるが、神は耳を貸してくださらない。 「その姿で...</summary>
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<name>千歳</name>
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<email>ckotoba@gmail.com</email>
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<dc:subject>080_ショートショート</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.cnovels.com/">
<![CDATA[<br/>
　　　１<br/>
<br/>
　われは天使。<br/>
　白き翼を持ち、頭上に輝く光輪を持つ神の使いである。<br/>
<br/>
　しかし故(ゆえ)あって、いまは一羽のうさぎでしかない。<br/>
　神の不興を買い、姿をうさぎに変えられ、下界に墜とされてしまったのだ。<br/>
　下界の者たちの悲しみ、苦しみを理解せず、真摯な祈りを軽視していると、神はおっしゃるのである。<br/>
<br/>
「お許しください！」<br/>
<br/>
　天に向かって必死で訴えるが、神は耳を貸してくださらない。<br/>
<br/>
「その姿で生き、弱き者の気持ちを知るがよい」<br/>
<br/>
　神はただひと言そうおっしゃり、それ以上はなにも応えてはくださらなかった。<br/>
　経験上、こうなったときの神はもうダメだ。なにを言っても聞いちゃくれない。<br/>
　それでも、叫ばずにはいられなかった。<br/>
<br/>
「神よ！」<br/>
<br/>
　叫びながら翼をはためかせる。<br/>
　と、はためかせているのは翼ではなく耳だと気づいた。<br/>
　なんということだ。われのあの気高き姿は見る影もなく、いまやただの小動物である。<br/>
　パタパタ動かしていた耳をだらりと下げ、われはうなだれた。<br/>
<br/>
　……こうなれば神のご意志に従い、弱きものとして生きていくしかあるまい。<br/>
<br/>
　それにしてもここはどこだろう。<br/>
　改めてあたりを見まわす。<br/>
　アスファルトで舗装された道の真ん中に、われは立っていた。<br/>
　周囲の看板に使われている言語や、植物の種類などから、おそらく日本のどこかであろう。<br/>
<br/>
　ひとまず、今すぐどこかに身を隠さねば。<br/>
　弱肉強食の世界において、いまのわれは捕食される側――つまり被食者でしかない。<br/>
　このままボケーと突っ立っていては、捕食者の格好の的である。<br/>
　そう思い、われがいちばん近くの草むらに移動しようとしていたそのときだった。<br/>
<br/>
「え、ノラうさぎ？」<br/>
<br/>
　慌ててその声がしたほうを振り向くと、ひとりの人間が、われを見おろしていた。<br/>
　女である。年の頃は二十歳前後といったところであろう。<br/>
　被食者の本能により、一目散に逃げようとしたこのからだを、われは意志の力でその場にとどめた。<br/>
<br/>
　ちょうどよいではないか。<br/>
<br/>
　見たところ、都会の娘のようだ。<br/>
　よもや、われを捕まえて捌(さば)き煮て焼いて、夕餉(ゆうげ)の一品にしようなどとは考えまい。<br/>
　それに、われのこの天使印のかわいさをもってすれば、このような娘を虜(とりこ)にすることなど容易である。<br/>
　われは耳をフルフル震わせながら、つぶらな瞳で娘を見あげ、小首を傾(かし)げてみせた。<br/>
<br/>
「かわいい！」<br/>
<br/>
　娘は歓呼(かんこ)の声をあげた。そしてこわがらせないようにという配慮だろう、ゆっくりと近づいてくる。<br/>
　われに手が伸びる。このモフモフとしたからだを、そっと抱き寄せた。<br/>
<br/>
「どうしたの？　迷子になったの？　――かわいそうに」<br/>
<br/>
　われの頭をなでる手の優しさに、うさぎが本来持つ被食者としての本能も、どうやら安心したらしい。からだの震えがだんだん納まっていく。<br/>
<br/>
「――ね、うちにくる？」<br/>
<br/>
　よしきたミッションコンプリート！<br/>
　われの愛らしさにかかればこんなものだ。<br/>
<br/>
　かくてこの娘は、世界でただひとり、天使をペットに持つ人間となったのである。<br/>
<br/>
　　　２<br/>
<br/>
　ペットとしての暮らしは、まあ悪くはなかった。<br/>
<br/>
　娘は動物をそれなりに飼い慣れているらしく、食事もうさぎの食べるものをきちんと用意してきたし、水も欠かさず、トイレもこまめに掃除した。<br/>
　ケージの中に閉じ込められていることが不満ではあったが、かよわいうさぎを飼う側としては当然の判断であろうから仕方がない。<br/>
<br/>
「ただいまー」<br/>
<br/>
　家に帰ってきては、ケージからわれを取り出して頭をなでたり、ほほをすり寄せたりしてくるこの時間も、きらいではなかった。<br/>
<br/>
　ある日、娘がわれをケージから出しっぱなしのまま、居眠りをはじめたことがあった。<br/>
　われは娘の寝顔にむかってピョンピョンと跳ねていき、そのあどけない顔をまじまじと眺めた。<br/>
<br/>
　人間――<br/>
<br/>
　神が、自らをかたどって作られた存在。<br/>
<br/>
　下界では生態系の頂点に君臨しているが、天界から見おろす彼らはやはり儚(はかな)く、かよわき存在でしかない。<br/>
　そう、彼らは弱い。ひとにとっての、うさぎのように。<br/>
<br/>
「その姿で生き、弱き者の気持ちを知るがよい」<br/>
<br/>
　あの日、神から賜(たまわ)ったお言葉を思いだす。<br/>
<br/>
　――神よ。<br/>
<br/>
　弱きものの気持ちとは、この気持ちでしょうか。<br/>
　守られ、愛される者の気持ちを理解しろということなのですか。<br/>
　神の前では等しく弱き存在である人間に、もっと優しく接せよ、と？<br/>
<br/>
　ふと、眠っている娘の閉じたまぶたから、涙がこぼれ落ちていることに気づいた。<br/>
　……ふん、仕方のないやつだ。<br/>
<br/>
「泣くな、娘よ」<br/>
<br/>
　われは直接、娘の魂にささやきかけた。<br/>
<br/>
「この下界での苦しみなど、輪廻(りんね)を繰り返す魂にとっては所詮(しょせん)、生まれてはすぐ消えゆく泡沫(うたかた)のようなものでしかないのだから」<br/>
<br/>
「うーん」<br/>
<br/>
　娘が眉を寄せた。<br/>
　ううむ。この娘には、ちとむつかしい話だったか……。<br/>
　さて、どうしてくれようと悩んでいたところ、近づきすぎて、われの愛らしいひげが鼻をくすぐったのか、娘が今度はむずがゆそうな顔をした。<br/>
　慌てて下がると、寝ぼけた娘が手をさしのべて、われのからだを強く抱きしめる。<br/>
<br/>
　むむ、こら娘よ。そんなにしては苦しいではないか。<br/>
<br/>
　と、その腕の力がほどけ、優しくなった。力を込めれば、抜け出してしまえるほどに。<br/>
　娘が、寝言でわれの名を呼んだ。<br/>
　そして、満足そうな吐息(といき)。<br/>
<br/>
　……本当に仕方のないやつだ。<br/>
　あたたかく、やわらかな腕と胸の間で、われもそのまま眠りについた。<br/>
<br/>
　　　３<br/>
<br/>
　そのような穏やかな日々が過ぎていくなかで、われの存在は、静かに娘の生活の一部になっていった。<br/>
　そうだな、認めてもいいだろう。<br/>
　それは天使として――神の使いとしてあったわれが、これまで感じたことのない種類の、喜びの日々であったのだ。<br/>
<br/>
　しかし。<br/>
<br/>
　かよわき人間の庇護(ひご)のもと、このような日々が永遠に続くのだと思いかけていた頃――その日はあっさりと訪れた。<br/>
　われのこのかりそめの肉体が、このところ徐々に力をなくしていっていることには気づいていた。<br/>
　しかし、うさぎに許された時間は、悠久(ゆうきゅう)の時を神の御許(みもと)で過ごしてきたわれにとって、あまりにも短すぎた。<br/>
<br/>
　もはやからだを動かすこともかなわず、浅い呼吸を弱々しく繰り返すばかりのわれを、優しい手がなでている。<br/>
　もはや、われのつぶらな瞳は、本来の用をなさずなにも映せない。<br/>
　この身をなでる優しい手が震えているように感じるのは、おそらく気のせいではないのだろう。<br/>
<br/>
　われは悔やんでいた。<br/>
<br/>
　この心優しい娘を、少しでも悲しませないようにする方法は、いくらでもあったはずなのに。<br/>
　もはやなんの打つ手もなく、いまわれは、もっとも幸せになってほしいはずの人間を、これほどまでに悲しい気持ちにさせてしまっている。<br/>
<br/>
「その姿で生き、弱き者の気持ちを知るがよい」<br/>
<br/>
　まさに命のろうそくが吹き消されるその時、ようやくわれは神の意志を理解した。<br/>
　神のおっしゃった「弱き者の気持ち」とは、「守られる者の気持ち」ではなかった。<br/>
　弱き存在である人間にもっと優しく接せよ、という意味ではなかったのだ。<br/>
<br/>
「ごめんね、なにもしてあげられなくて」<br/>
<br/>
　娘が泣きながら話しかけてきた。<br/>
<br/>
　そうだ。この娘も、そしてうさぎも。<br/>
　愛する存在になにかしてあげたいと、これほどまでに強く思っているのに、なにもできない。<br/>
　そのような者の気持ちを、神は知れと。<br/>
　このうさぎの気持ちを知れと、そう神は、おっしゃっていたのだ。<br/>
<br/>
　娘の震える手を握り返してやることも、<br/>
　涙をぬぐってやることも、<br/>
　そっと抱きしめてやることも、<br/>
　なにも、このからだではできない。<br/>
　弱き身にあって、だからわれは、ただ祈った。<br/>
<br/>
　――どうかこの娘が、幸せでありますように。<br/>
<br/>
　うさぎの命が絶えると同時に、われは神の御許(みもと)にまかりこしていた。<br/>
　頭上には懐かしき光輪。背中には気高き翼。<br/>
　神の許しを得、元のからだに戻ったのである。<br/>
<br/>
　神の声なき問いかけに、われは答えた。<br/>
<br/>
「ひとつだけ」<br/>
<br/>
　神がうなずいてくださるのとほぼ同時に目を閉じると、われは再び娘のそばにいた。<br/>
　天使は実体を必要としないため、この姿は、娘には見えない。<br/>
　ちいさな亡骸(なきがら)をいたわるように抱きしめながら、うさぎの魂の平安を祈る娘を、背中の翼を広げ、そっとつつみこんだ。<br/>
<br/>
「泣くな、娘よ」<br/>
<br/>
　人間の聴覚には届かない声で、魂に向けてささやく。<br/>
<br/>
「われは、いつでもそなたと共にいる」<br/>
<br/>
　だから娘よ。<br/>
　そなたもきっと、何者かから、愛され続けよう。<br/>
　ずっと、幸せであるだろう。<br/>
<br/>
　われがそなたに愛され、とても、幸せであったように。<br/>
<br/>
]]>

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<title>HEAVYな涙</title>
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<modified>2011-11-07T11:39:18Z</modified>
<issued>2011-10-30T06:23:01Z</issued>
<id>tag:www.cnovels.com,2011://2.18588</id>
<created>2011-10-30T06:23:01Z</created>
<summary type="text/plain">　心優しい毒蛇ヘビーは、とある森に住んでいます。 　クマさえもひと咬みで殺してしまえる猛毒を持つヘビーを、森の動物たちは敬遠していました。 　だけど、そんなヘビーに仲良くしてくれる動物もいました。 　タヌキのポン吉は、ヘビーの幼なじみ。 　ちっちゃなころから、いっしょに果物を採ったり、ネズミ狩りをしたり、二匹はとても仲良しでした。 　ある日のことです。 　ヘビーは、ポン吉の前肢をカプリと咬んでしま...</summary>
<author>
<name>千歳</name>
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<email>ckotoba@gmail.com</email>
</author>
<dc:subject>080_ショートショート</dc:subject>
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<![CDATA[　心優しい毒蛇ヘビーは、とある森に住んでいます。<br/>
　クマさえもひと咬みで殺してしまえる猛毒を持つヘビーを、森の動物たちは敬遠していました。<br/>
<br/>
　だけど、そんなヘビーに仲良くしてくれる動物もいました。<br/>
　タヌキのポン吉は、ヘビーの幼なじみ。<br/>
　ちっちゃなころから、いっしょに果物を採ったり、ネズミ狩りをしたり、二匹はとても仲良しでした。<br/>
<br/>
　ある日のことです。<br/>
　ヘビーは、ポン吉の前肢をカプリと咬んでしまいました。<br/>
　ポン吉と夢中になってネズミを追い込んでいたときに、ネズミと前肢を間違えてしまったのです。<br/>
<br/>
「あ、ごめん！」<br/>
<br/>
　慌てて前肢から牙を抜いて、謝ります。<br/>
　返事はありません。<br/>
　ポン吉は、すでに死んでしまっていました。<br/>
<br/>
「父ちゃんを返せ！」<br/>
<br/>
　ポン吉のお墓の前で泣いていたヘビーに、ちっちゃなタヌキが叫びます。<br/>
　ポン吉の息子のポン太です。<br/>
<br/>
「ごめんポン太、ぼく……」<br/>
<br/>
　泣きながら、ヘビーはシャーと口を開きます。<br/>
<br/>
「ワアァ！」<br/>
<br/>
　その静かな泣き声があまりに恐ろしかったのでしょう。	<br/>
　ポン太は、転がるように逃げていきました。<br/>
<br/>
　ヘビーは自分自身を呪いました。<br/>
　こんな毒なんて、いらなかった。<br/>
　ぼくがせめて、毒のないただの蛇だったら、いまでもポン吉といっしょに、ネズミを狩れてたはずなのに。<br/>
<br/>
　カプリ。<br/>
<br/>
　思いつめたヘビーは、ついに自分で自分を咬んでしまいました。<br/>
<br/>
　意識が戻って、ヘビーは、自分が死んでいないことに気づきました。<br/>
　毒に耐性があったため、死ぬことができなかったのです。<br/>
　シャーと、ヘビーはまた泣きました。<br/>
　神様！　どうしてぼくに、毒を与えたんですか？　どうしてぼくには手足がないんですか？<br/>
　にょろにょろと長い体に固いうろこはみんなから気持ち悪がられるし、目から流れる涙は雨のように冷たい。<br/>
　こんなふうに、ぼくは生まれたくなかった。こんななら、生まれてこなければよかった！<br/>
<br/>
「せめて……せめてぼくから、この冷たい涙を取ってください。もう悲しい思いを抱えるのはイヤなのです」<br/>
<br/>
　その悲痛な訴えを、神様は聞いていました。<br/>
<br/>
「かわいそうに」<br/>
<br/>
　静かにヘビーに語りかけます。<br/>
<br/>
「よし。そなたの願いを聞き入れ、もう二度と、涙を流すことなどないようにしてやろう」<br/>
<br/>
　と、気がつけば、ヘビーの目から、涙が消えていました。<br/>
　神様が願いを叶えてくださったのです。<br/>
<br/>
「あれ。ぼく、なんで泣いてたんだっけ？」<br/>
<br/>
　口を閉じ、二股に分かれた舌をチロチロと出しながら、不思議がります。<br/>
　さっきまでの、この世界から消えてなくなりたいという絶望的な気持ちも、すっかりなくなっていました。<br/>
<br/>
　それからというもの、ヘビーは、二度と悲しい思いを抱かなくなりました。<br/>
　当然目から涙がこぼれることもありません。<br/>
　悲しみから解き放たれた日々のはじまりです。<br/>
　数日後、カエルを呑みこみながら、ヘビーは気づきました。<br/>
<br/>
「こんなに大きなカエルを捕まえたのに、昔みたいにうれしくないな」<br/>
<br/>
　喜びもワクワクもなく、心にあるのは静かな満足感だけ。<br/>
　――そう。<br/>
　神様は、ヘビーから悲しみといっしょに、喜びの感情も奪っていったのです。<br/>
　涙は悲しみと喜びから生まれるもの。涙を取り除いた、それが代償でした。<br/>
<br/>
　だけど、ヘビーはそれを悲しくは思いませんでした。<br/>
　悲しみを感じる心は、もうなくなっていましたから。<br/>
<br/>
　手足のない長い体に、固いうろこ。二股に分かれた舌に、鋭利なまなざし。<br/>
　森のどんな大きな動物も恐れる、猛毒の牙。<br/>
　そんな自分にお似合いの、冷たい心を、ぼくは手に入れたんだ。<br/>
<br/>
　満足な日々の中で、それでもたまに、ポン吉を思いだすことがあります。<br/>
<br/>
「なんで、こんな記憶を、ぼくはいつまでも心に残してるんだろう」<br/>
<br/>
　ヘビーにとっても不思議でしたが、それでもなぜか、ポン吉といっしょにネズミを捕った記憶を、消し去る気にはなれません。<br/>
　無機質な心の片隅に、大事にしまい続けました。<br/>
<br/>
　星降る夜、木の穴にもぐり眠りにつきながら、今夜もまたなぜか、あの夢を見ます。<br/>
<br/>
　捕まえた二匹のネズミ。<br/>
　ポン吉と笑いあいながら、なぜかすこし泣いているぼく。<br/>
<br/>
　実際には、二度と流せない涙を、<br/>
　もう二度と目にできない、ポン吉の笑顔を、<br/>
　こうやって見ることのできる夢の中だけが、毒蛇ヘビーに残された、安らぎの場所――<br/>
　いまとなっては、この世界にたったひとつだけの、大切な、心の置き場所なのです。<br/>
<br/>
]]>

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<title>eve Love - 2010 version</title>
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<modified>2011-02-16T20:02:44Z</modified>
<issued>2010-12-24T09:00:00Z</issued>
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<created>2010-12-24T09:00:00Z</created>
<summary type="text/plain"> 作詞・作曲・歌：lyuko 編曲：鈴木恵一 眠れなくて音楽を聴いてた 懐かしいかおりがしてる 子供のころよくかいでたあのかおり 眠れない記憶 いまごろもう　きっと夢をみてるから わたしはひとり　すこし前のメールを眺めてる ねえ　あなたはどんなあしたをプレゼントしてくれるのかな はじめてのChristmasEve　 きれいなillumination　 なのにねえなんでわかってくれないの 星空がみつ...</summary>
<author>
<name>千歳</name>
<url>http://www.ckotoba.com/</url>
<email>ckotoba@gmail.com</email>
</author>
<dc:subject>220_楽曲</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.cnovels.com/">
<![CDATA[<span style="font-family:'ＭＳ Ｐ明朝','平成明朝',serif;">
作詞・作曲・歌：lyuko<br>
編曲：鈴木恵一<br>
<br>
<br>
眠れなくて音楽を聴いてた<br>
懐かしいかおりがしてる<br>
子供のころよくかいでたあのかおり<br>
眠れない記憶<br>
<br>
いまごろもう　きっと夢をみてるから<br>
わたしはひとり　すこし前のメールを眺めてる<br>
ねえ　あなたはどんなあしたをプレゼントしてくれるのかな<br>
<br>
はじめてのChristmasEve　<br>
きれいなillumination　<br>
なのにねえなんでわかってくれないの<br>
<br>
星空がみつめてる<br>
きのうのあの夜が　<br>
いまより孤独じゃなかったと感じてしまう<br>
飾られた街並みも　楽しげな音も<br>
まぼろしみたいにすり抜けていく<br>
<br>
だけどね　きづいたの　あなたはいつも　<br>
わがままなわたしに　こたえようとしてくれていた<br>
はじめてのChristmasEve　<br>
０時の鐘の音が　イブの終わりをつげる中で<br>
抱きしめてくれた<br>
<br>
星空がみつめてる<br>
さっきまでのイブが<br>
いまはかけがえのない夜に感じてしまう<br>
MerryChristmas　MerryChristmas　<br>
すこし長いキスに涙がこぼれ落ちたの<br>
よりそったふたりの　重なる吐く息は<br>
すこしだけ空に近づいて　消えていったの<br>
<br>
覚えてる　胸にはいまでも輝く<br>
あの空と　ふたりのChristmasEve<br>
すれちがいだらけのChristmasEve<br>
忘れないあの日のChristmasEve<br>
</span>
<br />
<br />
　<span class="font_red">&#32;&#62;&#62;&#32;</span> 【<a href="http://www.youtube.com/watch?v=TbQwyWn0lCU" target="_blank">楽曲 eve Love - 2010 version を YouTube で視聴</a>】<br />
　<span class="font_red">&#32;&#62;&#62;&#32;</span> 【<a href="http://www.cnovels.com/rs/evelove.html">小説 eve Love</a>】<br />
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<title>短歌 0046 - 0050</title>
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<modified>2010-11-14T10:43:51Z</modified>
<issued>2010-11-13T15:00:00Z</issued>
<id>tag:www.cnovels.com,2010://2.18585</id>
<created>2010-11-13T15:00:00Z</created>
<summary type="text/plain">三十一文字の作品集。</summary>
<author>
<name>千歳</name>
<url>http://www.ckotoba.com/</url>
<email>ckotoba@gmail.com</email>
</author>
<dc:subject>110_短歌</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.cnovels.com/">
<![CDATA[<br />
[0050] 2010/11/14<br />
腹減るとないた　遊んでよとないた　か細い最期のニャーはさよなら<br />
<br />
<br />
[0049] 2010/11/13<br />
親友というにはすこしぎこちないけど友達じゃ片付けられない<br />
<br />
<br />
[0048] 2010/11/08<br />
もう好きじゃないはずなのに求め合う　見えない鎖繋がっている<br />
<br />
<br />
[0047] 2010/11/07<br />
自由だしクロはいいなというけどさ彼も愛にはしばられてるよ<br />
<br />
<br />
[0046] 2010/11/05<br />
かおりして目で追う違うそう違うあの子がここにいるはずがない<br />
<br />]]>

</content>
</entry>

<entry>
<title>短歌 0041 - 0045</title>
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<modified>2010-11-05T16:21:29Z</modified>
<issued>2010-11-04T15:00:00Z</issued>
<id>tag:www.cnovels.com,2010://2.18584</id>
<created>2010-11-04T15:00:00Z</created>
<summary type="text/plain">三十一文字の作品集。</summary>
<author>
<name>千歳</name>
<url>http://www.ckotoba.com/</url>
<email>ckotoba@gmail.com</email>
</author>
<dc:subject>110_短歌</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.cnovels.com/">
<![CDATA[<br />
[0045] 2010/11/05<br />
飲酒時のナイスアイデア書き留めておいたようだがまたも落書き<br />
<br />
<br />
[0044] 2010/11/01<br />
さよならの言葉は聞いたけど気持ち聞けてなかった彼方の電車<br />
<br />
<br />
[0043] 2010/10/31<br />
嫌いだと思ってしまうことでもう縄をまきつけられてる心<br />
<br />
<br />
[0042] 2010/10/30<br />
「歌のせい」涙の理由信じよう　世界はいつも嘘で満ちてる<br />
<br />
<br />
[0041] 2010/10/29<br />
眠たくてブラック飲んで足りなくて５杯目あたりでブラックアウト<br />
<br />]]>

</content>
</entry>

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<title>短歌 0036 - 0040</title>
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<modified>2010-10-31T03:31:07Z</modified>
<issued>2010-10-27T15:00:00Z</issued>
<id>tag:www.cnovels.com,2010://2.18583</id>
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<summary type="text/plain">三十一文字の作品集。</summary>
<author>
<name>千歳</name>
<url>http://www.ckotoba.com/</url>
<email>ckotoba@gmail.com</email>
</author>
<dc:subject>110_短歌</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.cnovels.com/">
<![CDATA[<br />
[0040] 2010/10/28<br />
どうしよう揺れる心を隠せずにいるよゆらゆらゆらゆらゆらり<br />
<br />
<br />
[0039] 2010/10/27<br />
もの思いふけるひまさえ与えずに過ぎ去った秋あいつみたい<br />
<br />
<br />
[0038] 2010/10/26<br />
そんなのが好きなんだって聞く君の視線秋風よりも涼しい<br />
<br />
<br />
[0037] 2010/10/24<br />
更新をそろそろしたい　ブログとか　記憶の中の君の笑顔を<br />
<br />
<br />
[0036] 2010/10/23<br />
追いかけてこないでいまは　きたらもうきっとあなたを好きでなくなる<br />
<br />]]>

</content>
</entry>

<entry>
<title>短歌 0031 - 0035</title>
<link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.cnovels.com/ks/tk0031.html" />
<modified>2010-10-24T13:29:17Z</modified>
<issued>2009-12-31T15:00:00Z</issued>
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<created>2009-12-31T15:00:00Z</created>
<summary type="text/plain">三十一文字の作品集。</summary>
<author>
<name>千歳</name>
<url>http://www.ckotoba.com/</url>
<email>ckotoba@gmail.com</email>
</author>
<dc:subject>110_短歌</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.cnovels.com/">
<![CDATA[<br />
[0035] 2010/01/01<br />
たくさんの出会いの中で　瞬間に　あなたを思い出すことがある<br />
<br />
<br />
[0034] 2009/07/05<br />
梅雨半ば　空見て七日前に着たシャツ広げたら謎の斑点<br />
<br />
<br />
[0033] 2009/02/26<br />
ごめんねと言ってた顔が頭から離れないんだ　どの笑顔より<br />
<br />
<br />
[0032] 2009/02/24<br />
わたくしが首相になれば日本の杉の木全部ぶった切ります<br />
<br />
<br />
[0031] 2009/02/14<br />
二月だが最高気温22度　花粉を浴びに出かけてみるか<br />
<br />]]>

</content>
</entry>

<entry>
<title>eve Love</title>
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<modified>2011-02-16T20:03:42Z</modified>
<issued>2009-12-24T01:35:37Z</issued>
<id>tag:www.cnovels.com,2009://2.18572</id>
<created>2009-12-24T01:35:37Z</created>
<summary type="text/plain"> 作詞：千歳 作曲：rikumamoru 眠れなくて音楽を聴いてた 懐かしいかおりがしてる 子供のころよくかいでたあのかおり 眠れない記憶 いまごろもう　きっと夢をみてるから わたしはひとり　すこし前のメールを眺めてる ねえ　あなたはどんなあしたをプレゼントしてくれるのかな はじめてのChristmasEve　 きれいなillumination　 なのにねえなんでわかってくれないの 空を見る　不思...</summary>
<author>
<name>千歳</name>
<url>http://www.ckotoba.com/</url>
<email>ckotoba@gmail.com</email>
</author>
<dc:subject>220_楽曲</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.cnovels.com/">
<![CDATA[<span style="font-family:'ＭＳ Ｐ明朝','平成明朝',serif;">
作詞：千歳<br>
作曲：rikumamoru<br>
<br>
<br>
眠れなくて音楽を聴いてた<br>
懐かしいかおりがしてる<br>
子供のころよくかいでたあのかおり<br>
眠れない記憶<br>
<br>
いまごろもう　きっと夢をみてるから<br>
わたしはひとり　すこし前のメールを眺めてる<br>
ねえ　あなたはどんなあしたをプレゼントしてくれるのかな<br>
<br>
はじめてのChristmasEve　<br>
きれいなillumination　<br>
なのにねえなんでわかってくれないの<br>
<br>
空を見る　不思議ね<br>
昨日のあの夜が　<br>
いまより孤独じゃなかったと感じてしまう<br>
飾られた街並みも　楽しげな音も<br>
まぼろしみたいにすり抜けていく<br>
<br>
だけどね　きづいたの　あなたはいつも　<br>
わがままなわたしに　こたえようとしてくれていた<br>
はじめてのChristmasEve　<br>
０時の鐘の音が　イブの終わりをつげる中で<br>
抱きしめてくれた<br>
<br>
空を見る　不思議ね<br>
さっきまでのイブが<br>
いまはかけがえのない夜に感じてしまう<br>
MerryChristmas　MerryChristmas　<br>
すこし長いキスに涙がこぼれ落ちたの<br>
よりそったふたりの　重なる吐く息は<br>
すこしだけ空に近づいて　消えていったの<br>
<br>
覚えてる　胸にはいまでも輝く<br>
あの空と　ふたりのChristmasEve<br>
すれちがいだらけのChristmasEve<br>
忘れないあの日のChristmasEve<br>
</span>
<br />
<br />
　<span class="font_red">&#32;&#62;&#62;&#32;</span> 【<a href="http://www.myspace.com/lyuko" target="_blank">楽曲 eve Love を MySpace で視聴</a>】<br />
　<span class="font_red">&#32;&#62;&#62;&#32;</span> 【<a href="http://www.cnovels.com/mu/evelove.mp3" target="_blank">楽曲 eve Love の mp3 をダウンロード</a>】（右クリックして、対象を保存してください）<br />
　<span class="font_red">&#32;&#62;&#62;&#32;</span> 【<a href="http://www.cnovels.com/rs/evelove.html">小説 eve Love</a>】<br />
<!--<mtimg src="/mu/evelove_01.jpg" thusrc="/mu/thu-evelove_01.jpg" />-->]]>

</content>
</entry>

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<title>eve Love 後編</title>
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<modified>2010-10-05T08:19:31Z</modified>
<issued>2009-12-23T08:16:39Z</issued>
<id>tag:www.c-loved.com,2009://7.18574</id>
<created>2009-12-23T08:16:39Z</created>
<summary type="text/plain">本ページは、特集用に作成したご案内ページです。 お手数ですが、以下リンクをクリックして本作にお進みください。 　&amp;#32;&amp;#62;&amp;#62;&amp;#32; 【eve Love 後編】に移動  ...</summary>
<author>
<name>千歳</name>
<url>http://www.ckotoba.com/</url>
<email>ckotoba@gmail.com</email>
</author>
<dc:subject>400_恋愛小説</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.c-loved.com/">
<![CDATA[本ページは、特集用に作成したご案内ページです。<br />
お手数ですが、以下リンクをクリックして本作にお進みください。<br />
<br />
<br />
　<span class="font_red">&#32;&#62;&#62;&#32;</span> 【<a href="http://www.cnovels.com/rs/evelove2.html">eve Love 後編</a>】に移動 <br />
]]>

</content>
</entry>

<entry>
<title>eve Love</title>
<link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.cnovels.com/rs/evelove.html" />
<modified>2011-02-16T19:57:07Z</modified>
<issued>2009-11-09T13:18:52Z</issued>
<id>tag:www.cnovels.com,2009://2.18570</id>
<created>2009-11-09T13:18:52Z</created>
<summary type="text/plain"> 「もうヤダ」 　いきなりすねちゃっててごめんね。 　でも理由をきいたら、わかってくれる女の子もいると思うんだ。 　きょうはクリスマスイブだった。予定をばっちりあけて、何日も前からヨシオくんとのスペシャルデートを楽しみにしてた、そんな特別な日。 　あ、ヨシオくんっていうのは、付き合って２ヶ月になる彼氏ね。 　けど、いま思えば最初からつまずいてた。 　まず、ヨシオくんからなかなかデートのお誘いがこな...</summary>
<author>
<name>千歳</name>
<url>http://www.ckotoba.com/</url>
<email>ckotoba@gmail.com</email>
</author>
<dc:subject>060_恋愛小説</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.cnovels.com/">
<![CDATA[<span style="font-family:'ＭＳ Ｐ明朝','平成明朝',serif;">
「もうヤダ」<br/>
<br/>
　いきなりすねちゃっててごめんね。<br/>
　でも理由をきいたら、わかってくれる女の子もいると思うんだ。<br/>
　きょうはクリスマスイブだった。予定をばっちりあけて、何日も前からヨシオくんとのスペシャルデートを楽しみにしてた、そんな特別な日。<br/>
　あ、ヨシオくんっていうのは、付き合って２ヶ月になる彼氏ね。<br/>
　けど、いま思えば最初からつまずいてた。<br/>
　まず、ヨシオくんからなかなかデートのお誘いがこなかったこと。<br/>
　はじめのうちは、明日はくるかな、明日はくるかなってずっと待ってたんだけど、ぜんぜんこなくて。それで心配になってきて、ついに遠まわしに電話できいてみることにした。<br/>
「ねぇねぇ、１週間後の予定とかどうするの？」<br/>
『１週間後って？』<br/>
「ほらぁ、デートコースとか、いろいろ考えなきゃいけないことあるでしょ？」<br/>
『デートコース？　ていうか１週間後ってオレたち会う約束なんて――』<br/>
「ちょっと待って」<br/>
　不穏な空気を感じて、それ以上彼が不用意な発言をする前にさえぎった。<br/>
「今、カレンダー的なものみれない？」<br/>
『ん？　みれるけど』<br/>
「じゃあ、みて。さて、１週間後は何日でしょうか？」<br/>
『ええと、来週のきょうはニジュウヨ……あ』<br/>
　にぶい彼氏も、さすがに気がついたらしい。<br/>
『……ク、クリスマスイブだろ？　もちろんいろいろ考えてるさ』<br/>
「ふーん」<br/>
　じゃあ、さっきの『あ』はなによ。<br/>
　と内心思ったけど、それは口にしないでおいた。<br/>
　イブの１週間前に、ケンカなんてしたくないもの。<br/>
「じゃあ楽しみにしてるから、ちゃんと誘ってね」<br/>
　ヨシオくん忙しいヒトだから、たまにはウッカリすることもあると思うの。<br/>
　でもだいじょうぶ。あのヒトは、最後にはちゃんと結果を出してくれるって信じてる！<br/>
　と、このときはまだ思ってたんだよね……。<br/>
<br/>
　というわけでクリスマスイブの３日前に、ヨシオくんからイブの夜あいてる？　ってメールがきて。<br/>
　当然あけてるに決まってるんだけど、ちょっともったいぶったやり取りしてから、最後に『あいてるよ★』ってメールを返した。<br/>
　待ち合わせ場所の指定がきたのはイブの前日だった。デートするとき、いつも待ち合わせに使っている駅前。<br/>
　何度かメールのやりとりをしていたら『おやすみ』って返ってきて、たしかにもういい時間だったから素直に「おやすみ」って返す。<br/>
　ベッドのそばの照明を暗くして、眠ろうとする。<br/>
　…………。<br/>
　……ダメ、眠れない！<br/>
　寝返りを何度かうって、あきらめたわたしはそばのリモコンをピッと押した。小さなスピーカーから、音楽がきこえはじめる。<br/>
　もう、ワクワクして眠れないよ。<br/>
　小さなころの遠足の前日みたい。<br/>
　ヨシオくんはもう寝ているはずだから、メールも送れないし。<br/>
　かわりに少し前のメールを何度も読み返してみる。ほっとため息。<br/>
　ねえ。<br/>
　あなたは、どんなあしたをプレゼントしてくれるのかな。<br/>
<br/>
　そしてついにイブの夜。<br/>
　よく使ってる駅なのに、この日はやっぱりいつもと違う感じがする。道ゆくヒトたちがみんなしあわせそうにみえるのは、わたし自身がウキウキしてるからなのかなぁ。<br/>
　わたしはいつもよりちょっとだけドレスアップして、滅多に選ばない真っ赤なコート着て、ヨシオくんが来るのを待っていた。<br/>
　けど……遅いなあ。<br/>
「ごめん、仕事が立て込んでてさー」<br/>
　ヨシオくんは、約束の１８：００に１０分遅れてやってきた。仕事が忙しかったんならしょうがないよね。<br/>
「いいよ。お仕事おつかれさま」<br/>
　にっこり笑ってから、ヨシオくんの腕に手を回す。<br/>
「おう、じゃあいこうぜ」<br/>
「どこつれてってくれるの？」<br/>
「フッ、きょうはオレにまかせろよ」<br/>
　えーなにこの思わせぶり＆頼もしいセリフ！<br/>
　すっかり期待に胸を膨らましてついていったわたしを迎えてくれたのは、ふだんよくデートに使ってるショッピングモールだった……。<br/>
「やっぱりここもクリスマス一色だなあ」<br/>
　とか言ってヨシオくんは素直に感嘆してる。
「…………」<br/>
　そりゃたしかにきょうのショッピングモールはクリスマスネオンがいっぱいできれいだよ？　でもね、わたしここ３日前に友達ときたばっかりなの！　だってクリスマスセールだったし。<br/>
「あのツリーなんてなかなかだよな」<br/>
　そのツリーももうみてるし。ていうか写真も撮ってブログにもアップしたのにみてないの？<br/>
「ほら、きょうはクリスマスセールやってるんだぜ。ちゃんとＷＥＢでチェックしておいたんだ」<br/>
　だからそのクリスマスセール目当てに３日前にきてるんだって！　ていうかここのサイトはチェックして、わたしのブログはチェックしてないわけ？<br/>
「あのねー！」<br/>
「え？」<br/>
　思わず大声張りあげそうになったのを、ヨシオくんはきょとんとした顔をしてくる。<br/>
　それをみて、ギリギリのところで思い直した。<br/>
　いけないいけない。せっかくのイブなのに、こんなことで暗い影とか落としたくないし。<br/>
　３日前にきてたことは、ヨシオくんには秘密にしておこうと決意する。<br/>
「ホント、安いよな。これなんて５割引だぜ」<br/>
「あ、うんそうだね。もう、なににしようか迷っちゃう」<br/>
　もう欲しいものは３日前に買ってしまってるんだけど、なにも買わなかったら買わなかったでヨシオくん落ち込みそうだし。<br/>
　というわけでわたしは、前回どうしようか悩んでやっぱりなんか違うと思ってやめたカーディガンを、けっきょく買っちゃうハメになったのでした……。<br/>
<br/>
　けどね、ここまではまだよかったの。<br/>
　ヨシオくんも、ショッピングモールで終わりってつもりはなかったみたいで、買い物がすんだら今度はイルミネーションスポットにいくことになった。<br/>
　ヨシオくんがいくと決めていたイルミネーションスポットはすごく有名で、わたしも一回いってみたいと思ってたところだったから大賛成したのね。<br/>
　で、駅に戻って電車に揺られて、目的の駅についたらそこはカップルでいっぱいだった。<br/>
「すげえな。みんな目的はおなじってことか」<br/>
「いまからこれだと、イルミネーションの場所すごいことになってそうだね」<br/>
　とか言いながらも歩きはじめる。そして予想通り、歩けば歩くほどカップルの数は増えていって、ついに前がつっかえはじめてゆっくりしか進めない状態に。<br/>
　そのうちに、きょうのためにと買った、履き慣れない、高いヒールのブーツが災いして、途中から足が痛くなってきてしまった。<br/>
「ねぇ、あとどれくらいかなあ」<br/>
「うーん、この調子だと、１５分は歩くかもな」<br/>
「えー」<br/>
　それはつらいかも……。<br/>
「……ねぇ、ちょっと足痛くなってきちゃった」<br/>
「なに、だいじょうぶか？」<br/>
　ヨシオくんは心配そうにきいてきてくれる。<br/>
　正直いってだいじょうぶじゃなかった。でも、彼がせっかく組んでくれたデートプランを、わたしからＮＧだすのってやっぱりちょっと気が引けちゃって。<br/>
　だから「う、う……ん」とかって言葉をにごしてたら、それで察してくれたのかな？　ヨシオくんが力強くうなずきながら言った。<br/>
「よし、えらいぞ。もうちょっとだからな。ガンバレ！」<br/>
　と言って手を握ってくれる。って、なにも察してないし！<br/>
　わたしが「うん」て言ったって誤解したんなら違うから！　「うん」じゃなくて「ううん」だから！<br/>
　ここはさすがに訂正しとこうと思ってたのに、ヨシオくんは「いやあ、イルミネーション楽しみだなあ。８時ちょうどにイベントとかあるらしいぜ」とか言っちゃって、超楽しみにしてるの。<br/>
　そのワクワクした顔みてたら、いくのやめたいとか言えなくなって、結局痛みをガマンしながらついてくことになっちゃった。<br/>
　で、さらに２０分歩いて、なんとか目的のイルミネーションスポットにたどり着いた。イベントにもギリギリ間に合ったみたい。<br/>
　イベントの中心部分はぎっしりヒトで埋まってたから、歩道からしか眺めることできなかったけど。でも、ここからでもばっちりみえるすっごく大きなツリーがあって、キラキラしててほんとにキレイだった！<br/>
　そして時間になるとどこからか鐘の音がして、それに合わせてイルミネーションの光が瞬きはじめて、さらにさっきまでついてなかったイルミネーションまで点灯してもう光の奔流って感じ。<br/>
　すっごくステキだったー！　ヨシオくんなんて感激して泣いちゃってたし。　<br/>
　でもこのあと、新たな悲劇が待っていた。<br/>
　イベントが終わって、いっせいにカップルたちの大移動がはじまったんだけど、歩道にいたものだから、わたしそれに巻き込まれちゃって。<br/>
「あ」<br/>
　ヒトの流れに逆らえなくて、ヨシオくんがどんどん離れていってしまう。<br/>
　ヨシオくんはイベントの余韻にひたりきっちゃって、そもそもわたしがどんどん離れていってるってことにさえ気づいてなかった。<br/>
「ヨシオくんー！」<br/>
　思い切って大声で呼ぶ。それでやっと、わたしが遠ざかってるって気づいてくれた。<br/>
　けど、ときすでに遅し、やっとヒトの流れから逃れたころには、完全にヨシオくんを見失ってしまっていた。<br/>
　しかも悲惨なことに、ヒトが多すぎるせいでケータイなかなかつながんなくて、再会できるまでに３０分くらいかかってしまった。<br/>
　カップルだらけの中、ひとりでいるのってとても孤独で、ヨシオくんを探しながら泣いちゃいそうになる。<br/>
　でもイブにこんな涙は流したくなくて、必死に涙をこらえる。<br/>
　そして。<br/>
「おーい」<br/>
　ヨシオくんがやっとわたしをみつけてくれて、かけよってきた。<br/>
「ヨシオくん！」<br/>
　ひどい目にあったはずなのに、再会できたのがその分とても嬉しくて、なんかさっきまでのマイナスな気分が一気に吹っ飛んでしまった。<br/>
　よかった再会できて！<br/>
「ごめん！」<br/>
　両手を合わせて謝るヨシオくんに、わたしはううんと首を振った。<br/>
「もういいよ。それよりおなかすいたからディナーいこ？」<br/>
「そうだな、なに食いたい？」<br/>
　えぇ、予約とかしてないの？　だいじょうぶかなあ。とか思いながらこたえた。<br/>
「んー、まかせちゃう」<br/>
<br/>
　結局ヨシオくんがつれてってくれたお店は席も空いてて、無事待たずに座ることができた。<br/>
「な、だいじょうぶだったろ？」<br/>
「まあ、ね」<br/>
「どうした、元気ないな？　足まだ痛い？」<br/>
「ううん、座ってたらへいき、だけど……あのね？」<br/>
「ん？」<br/>
　歩いてると足が痛くてたまんなかったし、あんまり歩かないでお店についたのも、すぐに座れたのも嬉しかったんだけど……。<br/>
　わたしは家族連れの多い店内を見回しながら、小声できいた。<br/>
「なんでファミレスなの？」<br/>
「え、おまえここの味好きだろ？　やっぱりこういう日は、好きなものを食べるのがいちばんだよな、うん」<br/>
　このヒト本気で言ってるんだろうかと、まじまじとヨシオくんの顔をのぞき込んだ。<br/>
「おい、そんなにみつめるなよ。照れるだろ」<br/>
「アハハ……」<br/>
　彼氏に愛想笑いしてしまった。<br/>
　このときにはわたし、完全に気づいてしまっていた。<br/>
　自分の彼氏が、超のつく天然キャラだってことに。<br/>
　付き合って２ヶ月。うすうすこのヒトが天然だって思ってはいたんだけど、まさかここまでだったとは。<br/>
　そんなこと考えてたら、ヨシオくんが急にソワソワしはじめた。<br/>
「あのさ……クリスマスプレゼント持ってきてるんだ」<br/>
「え、そうなの？」<br/>
　なんて驚いた声を出してみる。<br/>
　でもね、彼がプレゼント用意してくれてるって、実はきょう会ったときから気づいてたというか、バレバレだったんだ。<br/>
　だって、会ったときからヨシオくん、ピンクのリボンが結ばれた、すっごく大きな袋を持ってたんだもん。それって絶対プレゼントだよね。<br/>
「はい、プレゼント」<br/>
　て言って、その大きな袋を渡してくれる。<br/>
　ピンクのリボンは、最初はキレイに整っててかわいかったけど、イルミネーションのとき人混みにもまれたせいで、いまはボロボロだった。<br/>
「わぁ、ありがとう！　ね、あけていい？」<br/>
　真っ白な袋もちょっぴり破けてしまっていて、そこからピョンと茶色い毛が飛び出してたから、もう中身もだいたいわかってたんだけどね。<br/>
　わたしはクマのぬいぐるみが大好きで、前にそれを言ったことがあって。<br/>
　だからきっとそれを覚えててくれて、クマのぬいぐるみを買ってくれたんじゃないかな。<br/>
（ぬいぐるみかー）<br/>
　心の中でため息をつく。ううん、クマのぬいぐるみはうれしいの。とても。<br/>
　でもね、なんでクリスマスにぬいぐるみ？　とも思ってしまう。<br/>
　クリスマスにぬいぐるみって、わたし子供じゃないし。みたいな。<br/>
「あけてみなよ」<br/>
「わー、なにかな」<br/>
　プレゼントの存在に気づいてたことも、中身がなにかだいたいわかってしまってるのも、自分だけの秘密にしておこうと思った。<br/>
　だってヨシオくん、わたしが袋をあけようとしてるところを、すっごくワクワクした顔でみてるんだよ？　本当のことなんて言えない。<br/>
　しわくちゃになったリボンをほどくと、中から大きなぬいぐるみが出てきた。<br/>
「わぁ、クマさん……じゃない、ウマさんだぁ」<br/>
　クマのぬいぐるみが出てくると思って喜ぶ準備をしていたわたしの予想ははずれてた。<br/>
　なんで、なんでウマ？<br/>
「フフ」<br/>
　ヨシオくんは、予想外すぎてなかばパニック状態のわたしを、かなり喜んでるとでもカンチガイしたのか、してやったりみたいな笑みを浮かべている。<br/>
「おまえ好きだろ、ウマ」<br/>
「う、うん」<br/>
　ウマが好きだなんて言った覚えないし。前にぬいぐるみの話はしたけど、そのときはなんのぬいぐるみが好きってきかれて、たしかクマってこたえたはずだった。<br/>
　も、もしかして……あのとき、『クマ』を『ウマ』と、ききまちがえてた？<br/>
「ヨ、ヨシオくん」<br/>
「ん？」<br/>
　どうしていいかわからず、やっとのことで言った。<br/>
「あ、ありがとう」<br/>
「うん」<br/>
　ヨシオくんがこの日の最高の笑顔でうなずいた。<br/>
<br/>
　でも、こんな状態で楽しいトークを続けられるはずもなくて。<br/>
　いちおうこのあと、わたしからもプレゼントのマフラーを渡したの。ヨシオくんはすごく喜んでくれたんだけど、それからふたりの間の空気は、どんどんぎこちないものになっていった。<br/>
　わたしの笑顔が引きつってるって、ヨシオくんもさすがに気がついたみたい。<br/>
　それでもがんばっていろんな話をしてくれる気持ちは嬉しかったけど、もうわたしのテンションはすぐには回復不能なところまで落ちてしまっていた。<br/>
　でもきょうという日を、嫌な思い出にはしたくなかった。だって、わたしの人生ではじめての、彼氏と過ごすイブの夜だったから。<br/>
　なのに会話は空回りしたまま、どんどん時間が過ぎていく。<br/>
「あー、じゃあそろそろ出よっか」<br/>
「うん、そうだね……」<br/>
「駅まで送るよ」<br/>
　え、きょうはお泊まりするんじゃないの？<br/>
　と、それきいて思ったけど、なんかすぐにあきらめの気持ちがわいてきて、言わなかった。<br/>
　ヨシオくん、明日仕事なんだろうしね。<br/>
　店を出て、駅に到着して。<br/>
「じゃあね」<br/>
　改札の手前で、見送ってくれるヨシオくんに別れを告げる。<br/>
「おう、気をつけて」<br/>
「うん」<br/>
　改札を通り抜ける。うしろを振り返ったら、ヨシオくんが手を振ってくれた。<br/>
　それをみたら急に涙が出そうになって、あわてて背を向けて、ホームへの階段をかけあがってしまった。<br/>
　電車を待ちながら、白い息を吐く。それは重たくて長いため息になった。<br/>
　重たいためいきは、だけどすこしだけ空に近づいて消えていく。<br/>
　電車がやってきたので中に入った。<br/>
　しまるドア。変わりはじめる景色。わたしは実感した。<br/>
　ああ、終わったんだ。<br/>
　わたしのイブ――はじめての、彼氏とのステキなイブの夜。<br/>
<br/>
「ただいまー」<br/>
　ブーツを脱いで、足を引きずるようにして部屋の電気をつける。<br/>
　あたりまえだけど、ひとり暮らしの部屋には誰もいない。<br/>
　壁の時計は１１：４０だった。<br/>
　たしかイブって、日付がかわると終わるんだっけ。<br/>
　わたしのイブは先に終わっちゃったけどね。<br/>
「……足いたーい」<br/>
　エアコンつけて、コートを脱ぎながら文句を言ってみる。やっぱり誰もこたえてくれない。<br/>
「もうヤダ」<br/>
　ため込んでたものを吐きだすように言って、ベッドに倒れこんだ。<br/>
　で、それきりもう力尽きたみたいにぼーっとしてると、きょう一日のことがよみがえってくる。<br/>
　いつもの駅で待ち合わせて。<br/>
　３日前にいったばかりのショッピングモールにつれてかれて、そんなに欲しくなかったカーディガン買って。<br/>
　たくさん歩いて、痛む足のなかイルミネーション眺めて。イルミネーションに夢中になりすぎた彼氏とはぐれてしまって。<br/>
　そのあとファミレスにいって、なぜかウマのぬいぐるみを渡されて。<br/>
　お泊まりもしないまま駅の改札で彼氏と別れて、それでイブの夜はおしまい。<br/>
　ね、わたしがすねちゃうのも、無理ないと思わない？<br/>
　しかもさらによくないことに、別れるときにちょっと泣いてしまった。<br/>
「泣いちゃったの、みられたかな……」<br/>
　みられてたとしたら、どう思われただろう。めんどくさい女とか思われてたりしたらどうしよう。<br/>
　けど、ヨシオくんもヨシオくんだよ。<br/>
　もっと、楽しいイブにしてくれたらよかったのに。<br/>
　なぜかいつもクリスマスには彼がいなかったわたしにとって、彼氏と過ごすイブって憧れだった。そのせいもあって、ずっといろいろ想像してたの。<br/>
　たとえばキャンドルナイトイベントとかみて、そのあと超ステキな夜景がみえるレストランにいって、夜は高級ホテルで、部屋にはクリスマスツリーが飾り付けしてあって。<br/>
　朝起きたらツリーの下にサンタさんからのプレゼントが置いてあるの。<br/>
　プレゼントはかわいい指輪とかで、裏にはイブの日付と、ふたりの名前がほってあるんだよ。<br/>
　ため息をつく。<br/>
　わたしバカだ。<br/>
　こんなふうにいろいろ想像しすぎて、期待がどんどん膨らんで、結局現実とのギャップに失望してるんだもん。<br/>
　ホント、バカだね。<br/>
　――あれ？<br/>
　そんなことを考えはじめて思考がどんどんネガティブモードになっていってたとき、部屋のすみに追いやっていた置き電話がピカピカ光ってるって気づいたの。<br/>
　伝言が入ってるみたい。<br/>
　ふだんケータイしか使ってないから、部屋の電話機に着信があること自体めずらしい。たまーに、お母さんから電話がかかってくるくらい。<br/>
　伝言もだからお母さんからかなって思ったら急に声がききたくなって、再生ボタンを押した。<br/>
『１８：０１のメッセージです』<br/>
　無機質な女性の声でアナウンス。<br/>
　ちょうど駅で待ち合わせしてたころだ。１８：００に待ち合わせだったのに、ヨシオくん遅刻したんだよね。<br/>
『もしもし、オレ』<br/>
「えぇ、なんで？」<br/>
　声の正体はヨシオくんだった。驚いて、メッセージに向かって話しかけてしまう。<br/>
　けれど数時間前のヨシオくんに声が届くわけない。<br/>
『これをきいてるときは、たぶんデートから帰ったばかりのころだよな。イブの夜は楽しかった？　オレはいま緊張してるよ。実は、イブのデートってはじめてなんだ』<br/>
　え、ヨシオくんも……？<br/>
『ショッピングモールは楽しかった？　あそこじゃいつもおまえ値札にらんでたから、きょうのセールを知ったら絶対喜ぶと思ってさ。イルミネーションは？　イブのデートといえばイルミネーションだって先輩が言ってたから、ネットで人気スポット調べまくったんだぜ。あと、おまえの好きなウマのぬいぐるみは気に入ってもらえたかな。ウマって意外とおいてなくて、かわいいのみつけるの大変だったよ』<br/>
　ききながら、今頃になって気がついた。ヨシオくんだって、いっしょうけんめい今夜のことを考えてくれてたんだって。<br/>
　自分のことしか考えてなかったわたしと違って、彼はこんなわたしのことだけを、ずっと想ってくれていた。<br/>
『オレたちさ、付き合いはじめてまだ２ヶ月とちょっとしか経ってないだろ？　正直まだよくわかってないかもしれないんだ。おまえの好きなものとか』<br/>
　優しい声で、ヨシオくんは続ける。<br/>
『おまえはたぶん、買い物が好き。好きな色はピンクだな。夜景が好きだから、イルミネーションもきっと好き。ぬいぐるみはウマ。あと、あのファミレスの味がマイブーム――どう？　これぜんぶ当たってたら、今夜のデートは成功間違いなしだ』<br/>
　優しい声をききながら、気がついたらわたし泣いてしまっていた。<br/>
『たぶん照れちゃって面と向かっては言えないと思うから、ここで言っとくよ。きょうは一日ありがとうな。あと、いつもオレのそばにいてくれてありがとう。オレを好きでいてくれてありがとう。オレも好きだよ。だから、これからもよろしく』<br/>
「ヨシオくん――」<br/>
　それ以上は、声にならなかった。だから心の中で言ったの。<br/>
　わたしのほうこそありがとう。<br/>
　せっかくヨシオくんの気持ちがこもったイブだったのに、すねちゃってごめんね。<br/>
『そうそう、最後にもう一個、サプライズがあるんだぜ。まずウマをみてくれ』<br/>
　え、サプライズ？<br/>
　キョロキョロと部屋を見回す。あった。もらったばかりの白い袋は、申し訳ないことに部屋のすみっこに捨てられたみたいに転がっていた。<br/>
　あわてておウマさんのぬいぐるみを袋から取りだす。すこし前まで微妙な気持ちしか与えてくれなかったぬいぐるみが、いまはとても大事な宝物に思えた。<br/>
　わたしがぬいぐるみを手にしたのを見計らったように声は続いた。<br/>
『ぬいぐるみの背中に、チャックがあるのわかるか？』<br/>
　チャック？　――あった。<br/>
『そのチャックあけてみてくれ。本命のクリスマスプレゼントが入ってるからさ』<br/>
　チャックを引っぱって中に手を入れてみると、四角いアクセサリケースがみつかった。<br/>
　震える手でちっちゃなケースのフタを開く。中には、ピンクゴールドのリングがきらめいていた。<br/>
『気に入ってくれた？　留守電で長い時間ごめんな。じゃあそろそろ切るから。これからおまえに会うからさ――やべ、遅刻しちゃったよ。おまえ許してくれるかな』<br/>
　メッセージはこれでぜんぶだった。<br/>
　リングにみとれていたわたしは、ハッとしてケータイを探した。みつかったケータイのいちばん上の発信履歴をクリックする。<br/>
　コールが鳴りはじめた。<br/>
『もしもし』<br/>
　すぐにヨシオくんは出てくれた。<br/>
「ヨシオくん、プレゼントありがと――ごめんね、わたしきょういい子じゃなかったかも。ステキなイブありがとね。すっごく嬉しいよ。きょう、最高のイブだったから。指輪も大事にするね」<br/>
　ということを言ったつもりなんだけど、涙がどうしても止まらなくて泣きじゃくりながらだったから、ちゃんと伝わってない気がする。<br/>
『よかった』<br/>
　それでも、ヨシオくんは嬉しそうに言ってくれた。<br/>
『最後、別れ際に泣いてた気がしたから気になってたんだ。足痛かったんだろ？　ごめんな、オレ、まさか泣くほど足が痛いだなんて思ってなかったから』<br/>
「ううん、いいの。もう痛くないし」<br/>
　泣いてた理由は違うけど、そこはあえて指摘しないことにする。<br/>
『あ――いまちょっと窓の外みてみろよ』<br/>
「え、なに？」<br/>
　窓の外って、もしかして雪？　ホワイトクリスマス？<br/>
「ちょっとまって。いまみるから」<br/>
　すばやく涙を拭いて、鼻をかんでから、窓のカーテンをあけた。よくみえない。思い切って窓をあけて寒い中ベランダに出てみた。<br/>
　うーん、雪は降ってないよね？<br/>
「別になにも――」<br/>
　言いながら下をみて、ハッとした。<br/>
　ベランダのすぐ下にある公園でわたしをみあげているのが、トナカイの角を頭に生やしたヨシオくんだって気づいたから。<br/>
　すぐに部屋にかけもどって、サンダルで外に飛び出した。階段を降りて、手をふるヨシオくんのもとに走る。<br/>
「びっくりした？」<br/>
　ヨシオくんはいたずらっ子みたいな笑顔だった。<br/>
「もうちょっとして電話かかってこなかったら、オレから電話するとこだったよ」<br/>
　トナカイの角がついたカチューシャをヨシオくんから取りあげる。<br/>
　息を整えようとしながらきいた。<br/>
「なんで、トナカイ、なの？」<br/>
「え、だってクリスマスだから」<br/>
「だったら、サンタさんの帽子で、いいでしょ」<br/>
「あ、そうか。たしかに」<br/>
　ホントこのヒトって、どっかずれてる。そう思いながら、彼のそんなところを大好きになってる自分に気づいて驚いた。<br/>
　わたしって、ヨシオくんのこといままでちゃんとみてなかったんだなって思う。<br/>
　イブに彼氏とステキなデートするって勝手にワクワクして、けどただワクワクするだけで、デートプランとかぜんぶ相手にまかせきりで自分はなにもしない。<br/>
　こんなダメな彼女なのに、ヨシオくんは彼だけのやりかたで、わたしと最高のイブを過ごしてくれた。<br/>
　遠くから鐘の音がきこえてきた。<br/>
「なんだこの音――どっかで火事か？」<br/>
「ううん」<br/>
　わたしはヨシオくんに教えてあげた。<br/>
「０：００になったんだよ。むこうに教会があるから、たぶんそこ」<br/>
「あ、そうかぁ」<br/>
「ねぇ、寒くなってきちゃった。ウチの中入ろう？」<br/>
「そうだな――」<br/>
　続けてヨシオくんは、先に歩こうとしたわたしの名前を呼んだ。<br/>
「え、なに？」<br/>
「メリークリスマス」<br/>
　振り向いたわたしに、冷たくて、優しいキスをしてくれる。<br/>
　目を閉じる瞬間みえた星空が、とてもきれいだった。<br/>
　しらないうちにまた涙がこぼれてくる。<br/>
　顔を離したヨシオくんが、泣いているわたしに気づいて驚いた顔をする。<br/>
　ヨシオくんのなにか言おうとしたシタクチビルに、こんどはわたしからキスをした。<br/>
　ふたりが吐いた息が重なって、すこしだけ空に近づいて消えていく。<br/>
</span>
<br />
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<title>eve Love 前編</title>
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<summary type="text/plain">本ページは、特集用に作成したご案内ページです。 お手数ですが、以下リンクをクリックして本作にお進みください。 　&amp;#32;&amp;#62;&amp;#62;&amp;#32; 【eve Love 前編】に移動 ...</summary>
<author>
<name>千歳</name>
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<dc:subject>400_恋愛小説</dc:subject>
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<![CDATA[本ページは、特集用に作成したご案内ページです。<br />
お手数ですが、以下リンクをクリックして本作にお進みください。<br />
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　<span class="font_red">&#32;&#62;&#62;&#32;</span> 【<a href="http://www.cnovels.com/rs/evelove.html">eve Love 前編</a>】に移動 <br />]]>

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<title>意味深な歯医者さん</title>
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<issued>2009-11-01T16:23:09Z</issued>
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<summary type="text/plain"> 最近歯科に通い始めました。 突然右上の歯がうずき始め、頭も痛いし、夜勤とかに入ってても、おちおち仮眠も取れなくなってきた為です。 診察の結果、治療歴のある奥歯が炎症を起こし化膿していることが判明。本格的に治療を受けることになり今に至ります。 ところで１０年程前にも、別の歯が炎症を起こしたことがありました。その時には、当事お世話になった名古屋の歯医者さんに「神経腐ってますね」と、親にも言われたこと...</summary>
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<name>千歳</name>
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<dc:subject>800_歯医者編</dc:subject>
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最近歯科に通い始めました。<br/>
突然右上の歯がうずき始め、頭も痛いし、夜勤とかに入ってても、おちおち仮眠も取れなくなってきた為です。<br/>
診察の結果、治療歴のある奥歯が炎症を起こし化膿していることが判明。本格的に治療を受けることになり今に至ります。<br/>
<br/>
ところで１０年程前にも、別の歯が炎症を起こしたことがありました。その時には、当事お世話になった名古屋の歯医者さんに「神経腐ってますね」と、親にも言われたことないような暴言を吐かれたのですが、今回家の近所のこの歯医者さんは、治療しながらぼそりと「もう助からないかも知れないな……」という、なんか意味深な発言をしてきました。<br/>
歯のことだとは思いますが、一応「この歯は」とかつけて欲しいものです。<br/>
なんといってもあなたの治療を受けている男は、歯が痛くて弱っていて、しかも大きく開口させられ、歯医者さんと衛生士さん相手に抵抗も出来ないか弱い存在なのです。<br/>
何言われても「アー」としか返事ができないという屈辱。<br/>
そのような状況では、多少なりとも神経過敏にもなります。「助からない」とか、「神経腐ってる」とかいう過激な発言はなるべく控えて欲しいと思いました。<br/>
<br/>
ちなみに今日も行ってきたのですが、今回は「信じられない……」とつぶやかれました。つぶやくのは勝手ですが、何が信じられないかくらいの事は教えて欲しいものです。<br/>]]>

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<title>優しくきゅっと - noise Vol.05 - 09・10</title>
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<issued>2009-10-09T11:20:40Z</issued>
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<summary type="text/plain"> 　　　９ 「どうぞ」 　缶コーヒーを洋輔に渡した。 「サンキュー」 　受け取った洋輔は、器用に右手だけでフタを空ける。 「リリ、眠ってる？」 「ああ、ぐっすり寝てるよ。そのうちイビキかきだすんじゃないか？」 「よかったー」 （だからそばにいて。もう放さないで） 　リリがそう言って、ふたりは無事仲直りをした。 　そのあとリリには地獄が待っていた。 （じゃあそろそろ吐け） 　そうゆうと、それまでとて...</summary>
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<name>千歳</name>
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<dc:subject>050_noise (バンド系恋愛小説)</dc:subject>
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<![CDATA[<span style="font-family:'ＭＳ Ｐ明朝','平成明朝',serif;">
　　　９<br/>
<br/>
「どうぞ」<br/>
　缶コーヒーを洋輔に渡した。<br/>
「サンキュー」<br/>
　受け取った洋輔は、器用に右手だけでフタを空ける。<br/>
「リリ、眠ってる？」<br/>
「ああ、ぐっすり寝てるよ。そのうちイビキかきだすんじゃないか？」<br/>
「よかったー」<br/>
<br/>
（だからそばにいて。もう放さないで）<br/>
　リリがそう言って、ふたりは無事仲直りをした。<br/>
　そのあとリリには地獄が待っていた。<br/>
（じゃあそろそろ吐け）<br/>
　そうゆうと、それまでとても優しい顔をしていた洋輔は突然、リリがガタガタ震え出すほど鬼のような形相に早変わりしたのだ。<br/>
　リリを強引に立たせると、風呂場に連れて行く。そしてリリの口に右手の指を突っ込んで、無理矢理吐かせはじめた。<br/>
（なあ、俺が左手をケガして以来苦しんでるのは知ってるよな？　このうえ俺の右手にまでケガとかさせたり、おまえはしないだろ？）<br/>
　右手の指を口の中に突っ込まれた状態でそんなこと言われたら、抵抗なんてできるわけない。恐怖におびえながら、口を大きくあけ、嗚咽を繰り返す。<br/>
（よしよし、いい子だ。やればできるじゃねぇか）<br/>
　いちど指を抜く。ゲホゲホと咳き込むリリ。<br/>
（ほら）<br/>
　洋輔は２リットルのペットボトルをリリに渡す。<br/>
（ありがと）<br/>
　素直に両手で受け取って、コクコクと飲みはじめるリリ。吐いたばっかりで水分がほしかったのかな。あっという間に５分の１くらい飲んでしまった。<br/>
　ペットボトルから口を離したリリを見て、洋輔は言った。<br/>
（なにやめてんだ？　全部飲めよ）<br/>
（え、こんなに飲めな――）<br/>
（おまえ酒を６缶飲んだんだろ？　だったらそれくらい飲めるよな？）<br/>
（は、はい）<br/>
　観念して、水を再び飲みだす。<br/>
（その調子だ。全部飲んだらもういっかい吐こうな）<br/>
　おびえるリリは逆らえず、とにかく水を全部飲んでしまった。そしてまた指を突っ込まれ、さっき飲んだばかりの水を吐かされる。<br/>
（いいか、こんど薬の大量服用なんてしてみろ。首輪つけて街中引きずり回してやるからな）<br/>
　返事もできず、嗚咽を続けながら、リリは泣いていた。<br/>
　で、ようやくその地獄のような時間が終わると、リリはベッドに寝かしつけられた。眠るまでの間も、洋輔はひたすら薬の大量服用について延々と説教し続けた。恐怖におびえていたけど、それでもリリは洋輔の左手をにぎって放さない。そして洋輔の説教を子守歌にリリは眠ったのだった。<br/>
<br/>
「たぶんこの調子じゃ、ずっとあんまり寝れてなかったんだろうね」<br/>
「そうだな」<br/>
　返事をした洋輔の声は、さっきまでの鬼モードとは打って変わって、とても穏やかだった。<br/>
「今日飲んだ薬も全部精神安定剤だったしな。眠剤は、もらった分はもう全部飲んだって言ってた」<br/>
「……ねぇ、きいていい？」<br/>
「なんだ？」<br/>
　いつになく静かな洋輔の声に後押しされて、思い切ってきいてみることにした。<br/>
「いま、左手のケガってどんな感じなの？」<br/>
「……相変わらず役立たずさ。握力が戻りゃしねぇ。が、ようやく普段の生活には問題ないくらいにはなってきた」<br/>
「そう、なんだ」<br/>
　じゃあ、まだやっぱりドラムを叩けるような状態じゃないんだ。<br/>
「リハビリとかしてるの？」<br/>
「してる。医者からは、ケガ自体は完治してるから、とにかく普段から使うようにって言われてるよ」<br/>
「じゃあ……じゃあいつかまた叩けるようになる？」<br/>
　洋輔は、すぐには答えてくれなかった。コーヒーを飲んで、勝手にタバコに火をつける。ベッドの奥の開いた窓に向かって、フウって煙を吹きつけた。<br/>
　網戸の奥から、まぁるい月がのぞいていた。<br/>
「……もう、ドラムはやめたよ」<br/>
「あ――」<br/>
　ずうずうしくいろいろきいたアタシも、さすがにそれ以上はきけなかった。<br/>
　なによりドラムが大好きだった洋輔がそんな決断を下したことの重さを考えると、なにも言えなくなってしまった。<br/>
「全部なくしちまった。ドラムも、仲間も」<br/>
「まだリリがいるじゃん」<br/>
「こいつもなにを考えているんだか。いまごろハルトと付き合ってるんだとばかり思ってたんだがな」<br/>
「付き合ってないみたい。オキがゆうには、ハルトくんはとにかく慎重で、リリを傷つけたくないって思ってて、だからなかなか告白できないんだって」<br/>
「なんだそりゃ？　ただ臆病なだけなんじゃないのか？」<br/>
　アタシが感じてたことを、洋輔はズバリと指摘した。リリがぐっすり眠っているのを確認して、さらに追求する。<br/>
「……ねえ、ハルトくんがリリを好きだって、洋輔は知ってたの？」<br/>
「ああ、知ってたよ。ずっと前から」<br/>
「ずっと前って？」<br/>
「リリを、ハルトに紹介されたときからな。ああ、こいつリリが好きなんだなって、すぐにピンときた」<br/>
「ええ、じゃあハルトくんの気持ちを知ってて付き合いだしたの！？」<br/>
「ああ。勝手に俺にくっついてきたんだよ。――けっきょく、ハルトじゃ物足りなかったんだろう」<br/>
「ものたりないって、ヒドイ言いかたー」<br/>
「しょうがねぇだろ、言葉を飾ってもさ。それが真実だ」<br/>
　コーヒーを飲み干す。そしてタバコを吹かす。洋輔のタバコの吸いかたは嫌いじゃなかった。<br/>
「今回もそうだ。あいつはリリを自分の女にする勇気もないまま、結果的にリリを追いつめた。あいつの優しさはな、こういう女にとっては毒なんだよ。こういうひとりじゃなにも決められない、誰かを必要とするタイプの女は、男が守ってやらねぇとダメになるんだ。なにが『傷つけたくない』だ。傷つきたくない、の間違いじゃないのか。あいつはリリがこんなになるまでなにもせずに、結果ただ追いつめただけじゃねぇか」<br/>
　あまりにもヒドイその言いかたに耳をふさぎたくなったけど、洋輔のゆう通りなのかもしれないと思ってただ黙り込む。<br/>
（わたし、ユウくんが好きだよ）<br/>
　さっきリリは、アタシをハルトくんと間違えてそう言ってた。<br/>
（覚えてる？　あなたとはじめて行った海は冬だからとても冷たくて――けれどわたしは子供みたくはしゃいでたね）<br/>
（そんなわたしの手を、転ばないようにって、ずっとにぎってくれていた）<br/>
（手、あったかかった）<br/>
（そのとき思ったの。あなたはわたしのことをずっと見ていてくれる。なにがあってもそばにいてくれるヒトだって、そんな気がしたの――ホントだよ？）<br/>
　あの言葉に、ハルトくんへの深い愛情を感じた。リリは、ハルトくんをずっと待ってたんだ。ハルトくんが好きだって言ってくれるのを。洋輔への気持ちに捕らわれてがんじがらめになっていく自分を、強引にでもいいからさらっていってくれるのを。<br/>
「まったく、歌にする暇があったら、さっさと奪ってみろってんだ」<br/>
　固いコーヒーの缶を、右手でぐしゃりとにぎり潰す。<br/>
　あの歌のことを言ってるんだって、すぐにわかった。<br/>
「洋輔知ってたの？　あの歌が……」<br/>
「そりゃわかるさ」<br/>
　――冷たい手。ハルトくんの歌。<br/>
　洋輔は、目を半分閉じて、鼻歌を歌うように、かすかな声で歌う。<br/>
<br/>
『Happy daily like a dream<br/>
　There's just "two" of the world』<br/>
<br/>
　かすれた声で歌いながら、右手の指でリズムをとっている。<br/>
<br/>
『さよならは　言わないけれど　きっと永遠に交わらないね<br/>
　諦められないけど　キミが幸せなら――』<br/>
<br/>
　歌うのをやめて洋輔は鼻で笑った。<br/>
「なにが、『キミが幸せならそれでいいんだ』だ。ただの言い訳だろ？　自分の惚れた女なら、人にまかせるなっての」<br/>
　ムっとして言い返す。<br/>
「それはアンタの価値観でしょ？　アンタは奪う愛、ハルトくんは見守る愛。愛の形が違うだけじゃん。あとさぁ」<br/>
　さっきの洋輔の発言が、なんかリリを奪われてもいいんだってきこえて、きかずにはいられなかった。<br/>
「ねぇ、これからホントにリリとやり直すつもりなの？」<br/>
「――ああ、こいつは、俺がいないとダメみたいだからな」<br/>
「洋輔自身はどうなの？　リリを好きなの？」<br/>
「どうだろうな」<br/>
「はぐらかさないで。洋輔の答えによっては、アヤ、ハルトくんの味方するからね！」<br/>
「……あいつが、本気でリリを奪いにくるんだったら、そのときは相手してやるさ」<br/>
　そう言った洋輔の表情からなにか読み取れないかと思って凝視したけど、なに考えているのかわからなくて、あきらめてため息をつく。<br/>
「リリ、最近ハルトくんとよく会ってるって言ってたよ？　ちゃんとハルトくんに言えるかなぁ」<br/>
「それはこいつがケリつける話だ。俺の知ったこっちゃねぇ――が、まあ、俺にやり直そうと言われたことにでもさせるか」<br/>
「そんなウソつかせてどうするの？」<br/>
「そしたらハルトの恨みが俺にくるだろ？　こいつはただひとつの逃げ場を、ギリギリなくさないですむかもしれない」<br/>
「――あんたって、冷たいのか優しいのか、いい加減なのかズボラなのかよくわかんないね」<br/>
「おい、それ最後のほうひとつも褒めてないぞ」<br/>
「だってほめる気ないもん」<br/>
　リリが寝返りをうった。そのスキに、洋輔はにぎられていた左手を離した。<br/>
　自分のその手を、洋輔はじっと眺めている。さっきまでリリが離さなかった左手は傷あとだらけで、とても痛々しい。<br/>
　洋輔の運命を変えたケガ。いつも憎らしそうに見るその左手を、この日の洋輔は、不思議ととても穏やかなまなざしで見てたっけ。<br/>
「――なあ、暗くしてもらっていいか？」<br/>
　寝ているリリが起きないように、だよね？　部屋の明かりを消す。<br/>
　台所の電気が間接照明みたいになって、柔らかい光で部屋を照らす。あと月の光が。<br/>
　タバコの火を消して、洋輔は窓の外を見た。<br/>
「今夜は満月だったか。満月の夜はなにかが起きるっていうが、本当かもな」<br/>
「なにその発言。似合わなさすぎ」<br/>
　とか言いながら、電気を消したついでに持ってきたビールを渡す。<br/>
「うるせぇよ――知ってるか？　こいつには、月の光がとてもよく似合うんだ」<br/>
　リリの頭をそっとなでる。<br/>
「おやすみ、リリ」<br/>
　そのまま朝まで、洋輔は飽きもせず、ずっとリリの寝顔を見ていたみたい。<br/>
　アタシは寝ちゃったけどね。<br/>
<br/>
　　　１０<br/>
<br/>
　それから、しばらくリリは悩んでたようだった。<br/>
　１０日後くらいに報告がきた。思い切ってハルトくんと会って、さよならを言ったって。<br/>
　電話をかけてきたのはハルトくんと別れたすぐあとで、ハルトくんをたくさん傷つけたって泣いてたっけ。<br/>
　告白されそうな気がしたって言ってた。<br/>
（だからね、わたし慌てて洋輔くんの話をしたの。――ねぇ、もしもあのとき、わたしが遮らなかったら、ユウくんは告白してくれてたのかな？）<br/>
（え、うーん）<br/>
（告白されてたら、わたしってどうしてたんだろう――）<br/>
（ちょっとちょっと！　ヒトのこと言えないけど、それフラフラしすぎ）<br/>
　アタシってば、思わず似合わないお説教したんだっけ。<br/>
（そりゃあさぁ。もしかしたら、そのときハルトくんはリリに告白しようとしてたのかもしれないよ？　でも、あんたは遮ったんでしょ？　だったら、洋輔を選んだってことなんだから、もうそれでいいじゃん）<br/>
（うん……そうだね。そうだよね）<br/>
　それからは、リリはどんどん元気を取り戻してまた以前みたいに――てわけにはやっぱりいかなかったみたい。洋輔にフラれる前と比べて、リリはやっぱりどこか寂しげで、そのせいかどうかはわかんないけど前より少し大人っぽくなった。<br/>
<br/>
　アタシはアタシで、あのあとすぐにシンくん呼び出して、で、彼氏ができたって報告したの。<br/>
（アヤのこと、すごく愛してくれてるの。だからアヤにとっても、いちばん大事なヒトなんだ）<br/>
　って言ったら、シンくんったらすごく寂しそうな顔しちゃってさぁ。それにすごくキュンときて、衝動的に言っちゃった。<br/>
（だからシン君は、アヤの２番目に大事なヒトだよ。ね、これでおんなじでしょ？）<br/>
　で、キスしちゃった……。<br/>
　失敗したかなぁと思ったけど、もう時すでに遅しで、あたしのフタマタ生活がスタートして。<br/>
　その彼氏とはすぐに別れて、慌ててすぐにまた新しく彼氏作って。そうやって、シンくんとの微妙な関係はしばらく維持されてた。<br/>
　でも、それも最近やめたんだ。<br/>
　シンくんが、以前よりも向き合ってくれるようになったのを感じたから。アタシも、もうすこし向き合ってみようかなって。<br/>
<br/>
　noiseもライブをこまめにやって、応援してくれるヒトも増えてきて。ハルトくんもだんだん元気になってきてるみたいで、少しずつ、少しずついろんなことが前に動きはじめた頃だった。<br/>
　すっかり寒くなった１２月。クリスマスネオンが街を彩る中、カフェでシンくんとパフェを食べていた。<br/>
　そしたらシンくんがゆうの。<br/>
「なんかさ。リクが、田舎に帰るって言い出したんだよね」<br/>
　リクっていうのは、noiseのドラムをヘルプで叩いてくれているヒトね。掛け持ちでいくつかのバンドを手伝ってるみたいなんだけど、noise以外のバンドはそんなに活動的じゃないみたいで、けっこうnoiseにスケジュールあわせてくれて助かってるんだって。<br/>
「へぇ」<br/>
　アタシは大して興味も持てないまま、気のない返事をした。<br/>
「もうすぐ年末だもんね。じゃあ戻ってくるのは年明け？」<br/>
「もう戻らないってさ」<br/>
「そうなんだ、じゃあしばらく４人で練習できないね……て、えぇ！？」<br/>
「なんかさ、お父さんが農作業中にケガしちゃったとかでさ。寂しがってるみたい」<br/>
「リクくんって頼りになるもんね。帰ってきてほしいってお父さんの気持ちわかるかも……で、でもじゃあnoiseはどうすんのよ！？」<br/>
「うん。いままでリクを専属みたいにしてたからさぁ。だれか新しいドラマーを探さなきゃなんだけど……ひとり候補がいてさぁ」<br/>
「なんだー。じゃあよかったじゃない。さすがnoiseくらいになると、いっしょにドラム叩きたいって言ってくれるヒト、すぐ見つかるんだね」<br/>
　すっかり安心して、またパフェを食べようとしたら、シンくんが相変わらずウーンって唸ってて。<br/>
「それがさぁ。なんか彼が、ヘルプじゃなくて、正式なメンバーとして加入したいって言ってきてるんだよね」<br/>
　えぇ！？　アタシはまたしても驚きの声をあげた。<br/>
「正式なメンバーって、でもnoiseは……」<br/>
　もともとnoiseは、洋輔のケガが治ったらまたいっしょにバンドやれるようにって思いで作ったバンドのはずだった。<br/>
　だから、正式なメンバーとしてドラマーを迎え入れるはずがない。ただ……。<br/>
「ほら、最近リリの件があったろ？　オキにさ、この前相談されたんだよね。たとえばいずれ洋輔がnoiseに入るとして、ハルトと洋輔と、なんのわだかまりも持たずにバンドを続けていけるだろうかって」<br/>
「う、うーん」<br/>
　それは確かに。<br/>
「ぼく的にはさ、この際新しいドラマー入れちゃえばいいって思うんだけど」<br/>
　洋輔とそんなに親しいわけではないシンは、しれっとそんなことを言ってくる。<br/>
「だってさ、オキのいうとおり、ハルトとそんなわだかまりがあったりしたらバンド活動に支障出るの避けられないし、だいいち洋輔ってまだドラム叩ける状態じゃないんだろ？　ぼくたちは、全メンバーが揃うまでいつまで待たなきゃいけないんだって話だよ」<br/>
「それはそうだけど」<br/>
「オキもハルトも甘すぎるんだよ」<br/>
　だんだん興奮してきたシンは、グーにした手をテーブルに叩きつけそうな勢いだった。<br/>
「勝手に事故ってケガしてグレて、一方的にバンド解散してリリもフってあとは知らん顔しててさ。で、ハルトが時間かけてやっと恋を実らせようとしてたら『やっぱり返して』みたいな感じでまた奪っていったんだろ？　そんな自分勝手なヤツの席なんて、これ以上あけとく必要ないってッ」<br/>
「ああもう、言いたいことはわかったからツバちらさないでー！」<br/>
「ごめんごめん、けど！」<br/>
　ドン。シンくんは控えめにテーブルにこぶしを叩きつけて宣言した。<br/>
「ぼくはイヤだね！　そんなヤツとなんか、ぜったいバンド組んでやるもんか」<br/>
　迫力とかまるでなかったけど、平和主義者のシンくんが本気で怒っているのを見るのはこれがはじめてだった。<br/>
　アタシはパフェを食べながら思う。<br/>
　このパフェみたいには、やっぱりモノゴト甘くはないんだなって。<br/>
<br/>
　そういえばあの日――シンくんとはじめて会った日に、シンくんと、オキとハルトくんにnoise結成を知らされる中で、こんな質問したんだった。<br/>
（ねぇ、なんでバンド名をnoiseにしたの？）<br/>
　そしたらハルトくんが教えてくれた。<br/>
（うーん、このまえ音を編集しててさ、これノイズだらけで使えないって思ったときに感じたんだ。これって生きることに似てるなって）<br/>
　ハルトくんはこう続けた。<br/>
　悩んで、苦しんで、生きてると雑音だらけだ。いろいろめんどくさいけど、たまに嫌になったりもするけど、それでも僕らは生きていかなきゃならない。<br/>
　だったら――どうせ雑音にまみれて生きていかなきゃならないんならさ、少しでもその雑音を楽しめたらって。それがきっかけなんだよ。<br/>
<br/>
　『生きてると雑音だらけだ』って言ったときにハルトくんが一瞬見せた苦しそうな顔を、アタシはたまぁに思い出す。<br/>
　けっきょくみんなおんなじなんだなって思う。<br/>
　ハルトくんもシンくんもオキも、洋輔もリリも、もちろんアタシも。<br/>
　みんないろいろあって、いつもそれなりに悩みを抱えてて。<br/>
　ハルトくんの言葉を借りれば、雑音だらけの人生を歩いてるんだ。<br/>
「どうしたの？」<br/>
　急に黙り込んだアタシを、シンくんが心配してくれる。<br/>
「ううん、なんでもないよ。はい、アーン」<br/>
　そう言いながらパフェをスプーンですくって、シンくんに食べさせてあげた。<br/>
　甘いものが大好きなシンくんは、さっきまでの怒りはすっかり忘れたみたいな嬉しそうな顔してパフェを頬張る。<br/>
　子供みたいなシンくんの表情を眺めながら、一瞬雑音の中にピュアな音を見つけだせた気がして、とても幸せな気分になった。<br/>
</span>
<br />
　　優しくきゅっと - noise Vol.05 - 終<br />
<br />
　<span class="font_red">&#32;&#62;&#62;&#32;</span> 【<a href="http://www.cnovels.com/shortstory/noise05-04.html">noise Vol.05 - 07・08</a>】 に戻る<br />
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<title>優しくきゅっと - noise Vol.05 - 07・08</title>
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<modified>2010-05-01T03:35:28Z</modified>
<issued>2009-10-08T10:48:48Z</issued>
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<summary type="text/plain"> 　　　７ 「もう、なんでよ！」 　電車を降りた直後、声に出して文句を言った。 　なんでこんな日に限ってお店超忙しくて、しかもシフトに穴があいたりするんだろう。 　何度も見た腕時計の針をまた確認する。深夜１１時ちょうど。 　リリといったん別れてから、もう４時間が経ってしまっていた。 　アタシがバイトしている居酒屋は、基本いつも忙しい。 　安いし、どのメニューもけっこう美味しいしね。あと、なんでか店...</summary>
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<name>千歳</name>
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<dc:subject>050_noise (バンド系恋愛小説)</dc:subject>
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<![CDATA[<span style="font-family:'ＭＳ Ｐ明朝','平成明朝',serif;">
　　　７<br/>
<br/>
「もう、なんでよ！」<br/>
　電車を降りた直後、声に出して文句を言った。<br/>
　なんでこんな日に限ってお店超忙しくて、しかもシフトに穴があいたりするんだろう。<br/>
　何度も見た腕時計の針をまた確認する。深夜１１時ちょうど。<br/>
　リリといったん別れてから、もう４時間が経ってしまっていた。<br/>
　アタシがバイトしている居酒屋は、基本いつも忙しい。<br/>
　安いし、どのメニューもけっこう美味しいしね。あと、なんでか店員の女の子がみんなかわいいの。もちろんアタシも含めて。<br/>
　あの店長、面接ぜったい顔で選んでる。<br/>
　ただ、いつも忙しいお店だということを抜きにしても、今夜の忙しさは異常だった。<br/>
　あーあ。ため息をつく。<br/>
　ひさしぶりにリリがウチに泊まりにきてるっていうのに。<br/>
　アタシはいろいろあったきょう一日の出来事を、急いで帰りながら振り返った。<br/>
<br/>
　午前中はリリといっしょに授業を受けた。授業の内容は予想通り退屈で、でもそれなりにがんばって勉強して、やっと終わってからふたりで食堂に行った。<br/>
　今日はなんとなくコリアンな気分だったからビビンバセットにした。リリはおそばを頼んだんだけど、ぜんぜん食べなくて。<br/>
　ほとんど食べないままリリがおはしを置いたので、さすがに心配になってきいたの。<br/>
「リリ、ぜんぜん食べてないじゃん。どうしたの、具合悪いの？」<br/>
「ううん、大丈夫」<br/>
　元気のない声が返ってくる。<br/>
「ダメだよ食べないと。最近すごく痩せてきてるし。カラダ壊しちゃうよ」<br/>
「うん……ねえアヤ。このあと時間とれないかな？」<br/>
「え、どうしたの？」<br/>
「あのね、ちょっと相談したいことがあるの」<br/>
「そうなんだ――アタシに相談なんて最近めずらしいじゃん、もしかして恋愛系？」<br/>
「……うん、そんなようなもんかな」<br/>
　リリがうつむき加減に笑いながらゆうのを見てピンと来た。<br/>
　たぶんハルトくんのことだ！<br/>
　３ヶ月と少し前――６月にnoiseの初ライブがにあって。<br/>
　リリはハルトくんに招待されて観に行ってた。オキ情報によるとそれ以来、ふたりはしょっちゅう会っているらしいのだ。<br/>
　時々バンドの練習にまで顔出すようになったんだって！　それってすごいじゃん。もう付き合ってるんじゃないの？　って思ったけど、それはまだビミョーなところらしい。<br/>
　オキの見解としては、ハルトはとにかく慎重で、リリを傷つけたくなくて、それで告白に踏み切れてないんだって。<br/>
　慎重って、それって臆病なだけなんじゃ？　と思わないでもないけど、そう考えるハルトくんの気持ちもわからないでもなかった。<br/>
　リリはたぶんいまだに洋輔を忘れられてないもの。だってリリ、やっぱりいまだにどこか元気がない。きょうだっておそば半分も食べてないし。<br/>
　それじゃもしかして、慎重だったハルトくんがついについに告白したとか！？　胸が高鳴る。洋輔と別れて以来、ぜんぜん恋バナとかしてこなかったリリがいきなり恋愛相談だなんて、それくらいの大事件が発生したに違いないよ！<br/>
「じ、じゃあリリ。きょうはウチに泊まりにきたら？」<br/>
　だって、それはじっくり話をきかせてもらわなければ。<br/>
　最初からそれもいいかなと思ってたみたい。急な提案をすんなりオッケーしてくれる。<br/>
　そのあと真面目に午後の授業に出て、夕方になってふたりで新宿に買い物にでかけて、じゃあそろそろウチに行こっかってなったときだった。突然オキから電話がかかってきたの。<br/>
「やばいアヤ！　きょう店異常に忙しくて、しかも斉藤のヤツが休みやがってまわらねぇ！　悪いが１時間でいいから手伝いにきてくれないか！？」<br/>
「えぇー！」<br/>
　オキとアタシは同じ居酒屋でバイトしてる。<br/>
　でもこんな電話っていままでかかってきたことなくて、それだけ忙しいんだろうなって思った。<br/>
　助けてあげたいけど……いくらなんでもタイミング悪いよ！<br/>
　これからリリの恋愛トークきくんだから。<br/>
　というわけで断ろうとしたときにリリがゆうの。<br/>
「わたしはだいじょうぶだから行ってきたら？　オキくん助けてあげなよ」<br/>
「ええ、だってこれから」<br/>
「わたしアヤんちでお酒でも飲みながら待ってるからさ。それに、このまえオキくんに相談に乗ってもらったんでしょ？」<br/>
「う、それはそうだけど」<br/>
　このまえっていうのは、アタシがシンくんにフラれた夜のことね。なんだかんだでもう２ヶ月以上も前の出来事になる。<br/>
　アタシとリリって恋愛観が違いすぎて――アタシがぶっちゃけトークしたらリリってドン引きしそうだし――だから男関係の話はこっちからはほとんどしないんだけど、シンくんのことは話したの。<br/>
　とてもつらかったから。男の子に他に好きなヒトがいるって言われて、こんなに苦しい気持ちになったのははじめてだった。<br/>
　もしかしたらリリならわかってくれるかもしれない。それで思い切って相談したら、やっぱりリリはわかってくれて。その日はウチで、いっしょに泣きながらお酒飲んで過ごした。<br/>
　そのときにいっしょに話したんだった。フラれた日にオキんちに押しかけて、いろいろ迷惑かけちゃったって。<br/>
　あの日オキは、アタシが泣き止むまでずっとかまってくれた。<br/>
　で、大泣きしたらある程度すっきりして、お風呂入りたくなったからお風呂借りて、ベッドも占領しちゃって、あの夜はかなり迷惑かけたと思う。<br/>
　確かに借りを返すならいまだよね。少し考えて決めた。<br/>
「じゃあ、ちょっと行ってくる。なるべく早く帰ってくるからゆっくりしててね」<br/>
「うん、わかった」<br/>
「鍵は、いつものところに隠してあるから」<br/>
「うん」<br/>
　リリはにっこり笑ってひらひらと手をふった。<br/>
「じゃあ、いってらっしゃい。がんばってね」<br/>
<br/>
　それで急いで働きに行ったらマジ忙しくて。<br/>
　ひさしぶりに、働いてて泣きそうになった。<br/>
「オキ！」<br/>
　立て続けにジョッキにビールを注いでるオキに声をかける。<br/>
「なんだ！」<br/>
「超忙しい！」<br/>
「知ってる！　ほらこれＢ卓持ってって！」<br/>
「もうやだぁ」<br/>
「おい、泣いてもいいがビールこぼすなよ」<br/>
「オニ！」<br/>
　そんな感じであっという間に３時間経って。<br/>
　やっとお客さん片付いてきたので、もう帰ることにした。<br/>
「じゃあ、アヤこれで帰るから」<br/>
「おう、ありがとな！　マジ感謝してっから」<br/>
「うん、でも」<br/>
　ビシッとオキを指さす。<br/>
「これでこのまえの借りは返したからね？」<br/>
　それをきいてオキがきょとんとした顔をする。<br/>
「……このまえって、なんのことだ？」<br/>
「わかんなかったらいい」<br/>
　なんだ、やっぱり気にしてなかったんじゃん。<br/>
　ちょっと拍子抜けだったけど、オキのそんなところ、やっぱり嫌いじゃないな。<br/>
<br/>
　電車に乗って、ウチの最寄り駅についた頃には１１時――で、いまに至るってわけ。<br/>
　いっぱい待たせちゃったなー。<br/>
　仕事が終わってすぐリリのケータイに電話したんだけど、出てくれなくて、ちょっと不安になる。<br/>
　もいちどかけようかって悩んで、でも待ってるうちに寝ちゃってるのなら起こすの悪いし、とにかく急いで帰らなきゃって思ってそれ以来連絡してない。<br/>
　寝てるんだったらまだいいんだけど。もしかして怒って帰っちゃってるんだったらどうしよう。<br/>
　不安に感じながらも、アタシはワクワクが抑えきれなかった。<br/>
「ハルトくん、ついに告白……したんだよね？」<br/>
　相談内容を勝手に想像しながらひとり呟く。<br/>
　オキ情報によると、ハルトくんとリリは、６月のnoise初ライブから急接近したらしい。<br/>
　もう９月だから、３ヶ月が経っている。<br/>
　洋輔にリリがふられたのは３月だったから、しらないうちに半年も経ってしまっていた。<br/>
　リリ、洋輔なんてもう忘れちゃいなよ。<br/>
　だってアタシたちいま２１歳なんだよ？　女子大生で、キャンパスライフは毎日忙しくて。<br/>
　楽しいことも、嬉しいこともたくさんあるはずなのに。この半年間、リリずっと元気ないじゃん。<br/>
　ふられた相手を――自分を好きじゃないヒトを想い続けても意味なんてない。ただつらいだけだよ。<br/>
　それよりも、自分を見てくれてるヒトのところにいっちゃったほうが楽だし、ぜったい幸せになれるって。<br/>
<br/>
（好きだよ。けど――たぶん愛せない）<br/>
<br/>
　ふいにシンくんの言葉を思い出す。ズキリ。瞬間胸に痛みを感じて、手で押さえた。<br/>
　他にいちばん好きな人がいるってシンくんに言われてから、もう２ヶ月以上経っていた。<br/>
　リリ、アタシは待たなかったよ。<br/>
　もう他に好きなヒトを見つけて、彼女にしてもらったよ。<br/>
「リリ、アタシ幸せだよ」<br/>
　ホントに？　じゃあこの胸は、なんで痛いの？<br/>
　自分自身のとても素朴な質問に、ただ首をふる。これでいいんだもん。<br/>
　アタシをいちばんにしてくれないヒトなんか、待ったりしないんだから。<br/>
<br/>
　１０分くらい歩くとウチが見えてきた。<br/>
　築２０年くらいの２階建てのアパートは、ちょっとボロっちいけどその分安くて、ひとり暮らし用なのにけっこう部屋が広い。<br/>
　借りてる部屋は２階の角部屋で、しかも１階の住民は留守が多い。だから音とかもそこまで気にしなくてよくて、アタシはけっこうこの部屋が気に入ってた。<br/>
　アパートにやっと到着して、２階に上がって部屋の前までいくと、台所の窓から明かりが漏れていてほっとした。<br/>
　明かりがついてるなら、たぶんリリはいてくれてる。<br/>
　鍵を開けて、部屋に入る。やっぱりリリの靴があった。よかったー。<br/>
「ただいまー」<br/>
　返事はない。やっぱり寝てるのかな？<br/>
「リリ？」<br/>
　キッチンを横切って、メインの部屋に続く扉を開けた。<br/>
　いた。リリはカーペットの上で横になっていた。アタシんちに来たときにはいつも着る、ウチに置いてある青いトレーナーを着て、酔いつぶれたみたいに力なく横たわっている。<br/>
　テーブルにはリリがコンビニで買ってきたらしきお菓子とかが広がっている。テーブルの横に、酎ハイやカクテル系のお酒の空き缶が入った袋があった。袋はけっこうふくれてて、ひとりでこんなに飲んだのって思ってびっくりした。<br/>
　横たわっているリリは少し青ざめているように見える。酔っぱらって寝ちゃったんだね。<br/>
　急に、アタシの中のもうひとりのアタシが悲鳴をあげた。<br/>
　アタシはその悲鳴の意味になかなか気づけなかった。ネガティブなアタシ――ダークアヤは、半狂乱で悲鳴をあげ続けている。<br/>
　アタシはダークアヤにすっかり置いてゆかれて、心をなくしたみたいにぼうぜんとリリを眺めることしかできなかった。<br/>
　目を閉じて、眠っているいるようにしか見えないリリ。飲みすぎたせいで気持ちが悪いのか、眉間にしわが寄っているのがわかる。<br/>
　テーブルにはお菓子と、あと風邪でもひいたのかな、病院でもらうようなお薬の袋が置かれてあった。<br/>
　お薬の袋を手に取ってみる。青空メンタルクリニックと印刷されてる。中は空っぽだった。<br/>
　視線をカーペットに落とす。錠剤の包装――プチプチ取り出すシートみたいなやつ――が２枚落ちていたから拾った。１枚で１０錠が入るタイプのプチプチに、薬は１錠も残っていなかった。<br/>
「リリ――？」<br/>
　このときになってはじめてアタシは、ダークアヤが悲鳴をあげ続けている理由を理解した。<br/>
「リリ！？」<br/>
　慌ててリリの様子を確かめようとして、テーブルのカドに肘がぶつかる。反動でテーブルに立っていた酎ハイが倒れ、中身がこぼれた。<br/>
「リリ！」<br/>
　激痛を無視して、リリを思いっきり揺さぶる。<br/>
「リリ！　しっかりして！　目を覚まして！」<br/>
「……うん」<br/>
　リリがうめき声をあげる。反応があったことにほっとして、次にどうしたらいいんだろうと必死で考える。けれどパニック状態の頭はうまく回ってくれない。どうしよう、どうしよう。しらないうちに、同じ言葉をひたすら繰り返してた。<br/>
「ようすけ……くん」<br/>
　まだ目を覚まさないリリが、元カレの名前を呼んだ。<br/>
　その瞬間、アタシは携帯電話を手にとって電話してた。<br/>
『……もしもし』<br/>
　懐かしい声が電話の向こう側で聞こえる。<br/>
「洋輔、どうしよう、リリが、リリが死んじゃう！」<br/>
　助けを求めて、アタシは叫んだ。<br/>
<br/>
　　　８<br/>
<br/>
　電話に出てくれた洋輔に必死で説明しようとした。でもすっかりパニック状態のアタシはぜんぜんちゃんと喋れない。悲鳴まじりの説明を、洋輔はガマン強くきいてくれてる。<br/>
　と思っていたら、急に厳しい声でゆうの。<br/>
『もういい。いっかい黙れ』<br/>
「どうして！？　だってリリが……！」<br/>
『いいから黙れ！』<br/>
　さっきより強い口調で命令されて、反射的に従ってしまう。<br/>
　アタシが黙り込んだのを確かめたあと、洋輔は次の指示を出してきた。<br/>
『……よし、じゃあ深呼吸しろ』<br/>
　言われるがまま深呼吸を繰り返す。１回、２回、３回。<br/>
『少しは落ち着いたか？』<br/>
「う、うん」<br/>
『ならこれから俺の質問だけに答えろ。いいな？』<br/>
「わかった！　あのね、リリがウチで倒れてて、洋輔を呼んでて……！」<br/>
『だから喋るなって』<br/>
　舌打ちしながら洋輔が厳しい声でゆう。<br/>
「あ、ごめん」<br/>
「とにかく質問するから答えろ。いまの話をまとめると、おまえとリリは、アヤ――おまえのウチにいるな』<br/>
「うん」<br/>
『おまえはバイトしてて帰りが遅くなった。で、帰ってみると、先に来ていたリリが倒れていた』<br/>
「うん」<br/>
『リリは、酒と、薬を大量に飲んでいる可能性が高い』<br/>
「うん、そう」<br/>
『酒は、どれだけ飲んでる？』<br/>
　お酒の数を数えた。３５０ｍｌの空き缶５本と、それと飲みかけで倒れてしまい、カーペットに大きなシミを作っている缶が１本。<br/>
「３５０ミリが６本」<br/>
『よし、薬は？　何錠だ？』<br/>
「ええと、１０錠入りが２枚あるから、最高で２０錠」<br/>
『他になんかやばいもんはないか？　ガスが出っぱなしとか、手首切ってるとか』<br/>
　とんでもないことを言われて、ゾッとしながら確かめた。<br/>
　ガスの匂いはしない。リリも――よかった、どこもケガしてない。<br/>
「大丈夫、どこもケガしてないし、ガス漏れとかもないよ」<br/>
『そうか。じゃあ、これから俺のいうことをよくきいて、俺がそっちにつくまで、そのとおりにするんだ。いいな？』<br/>
「洋輔、来てくれるの？」<br/>
　よかった。それがわかっただけでとても安心して、泣きそうになる。でもいま泣いちゃダメだと思ってガマンした。<br/>
『まず、リリの目を覚まさせろ。ひっぱたいてでも起こせ』<br/>
「うん」<br/>
　ためらわず、言われたとおりリリをひっぱたく。<br/>
　リリがうめき声をあげる。<br/>
「リリ、起きて！」<br/>
　繰り返し頬を叩く。<br/>
「う……ん」<br/>
「リリ！」<br/>
「だれ……？」<br/>
「アタシだよ、アヤだよ！」<br/>
「アヤ？　やめて、痛いよ」<br/>
　その声が洋輔にも聞こえていたみたいで、携帯電話をまた手に取ると洋輔が言った。<br/>
『そのまま寝かすなよ。また叩いてもいいから、起こしておくんだ』<br/>
「う、うん」<br/>
『あと、水をいっぱい飲ませろ。で、吐くようなら吐かせろ』<br/>
「うん――ねえ、リリ死なない？」<br/>
『死ぬわけねえだろ。それくらいの酒の量じゃ急性アルコール中毒にはなりようがねぇよ』<br/>
「じゃあ薬は？　２０錠くらい飲んでるよ？」<br/>
『医者が通院患者に処方するような薬、何錠飲んでも死なねぇよ。気になるといったら、吐いたもんで窒息することくらいだ。それもちゃんと起こして吐かせれば心配ない』<br/>
　そうなんだ。よかったー！<br/>
　ほっとしてその場にへたり込む。<br/>
『ちゃんと起こしとけよ。なにかあったらまた電話しろ。いまから行くから』<br/>
　そう言って、電話が切れる。<br/>
「ほら、リリ起きて」<br/>
　アタシはリリの上半身を一生懸命起きあがらせた。ベッドを背もたれがわりにして座らせる。<br/>
　リリは、眠いとか、洋輔くんは？　とか、ききとれないような声で呟いている。<br/>
「いい、寝ちゃダメだからね？」<br/>
　そう命令してから台所に移動する。<br/>
　２リットルのミネラルウォーターとグラスを持って部屋に戻る。水をグラスに注いで、ブツブツつぶやいているリリに持たせようとした。<br/>
「ほら、水飲んで」<br/>
　のどが渇いてたのか、最初のうちリリはおとなしく水を飲んでくれてたけど、３杯目くらいから嫌がるようになった。<br/>
「もういらない。おなかいっぱいだよー」<br/>
「ダメだよ飲んで」<br/>
「……気持ち悪い」<br/>
「え、吐きそう？」<br/>
「ううん、大丈夫」<br/>
「そう……ねえ、なんでひとりでこんなにお酒飲んじゃったの？」<br/>
「……よく覚えてない」<br/>
「覚えてないって……」<br/>
「ええとね」<br/>
　話しているうちにだんだん意識がはっきりしてきたみたい。リリはさっきよりはしっかりした声で話してくれるようになった。<br/>
「今日ね、わたしアヤに相談したいことがあるって言ってたでしょ」<br/>
　すっかり忘れてた。アタシはうなずいた。<br/>
「ずっと悩んでて、誰かに相談したくて。だけど、ユウくんには相談できなかった」<br/>
「ユウ……ハルトくんとは最近けっこういっしょにいたんだよね？」<br/>
　ユウくんという呼びかたはリリだけがしているハルトくんの呼びかたで、アタシも呼ぼうとしたんだけどうまく言えなくてハルトくんと言い直した。<br/>
「うん。ユウくんは、ずっとわたしを慰めてくれてた。洋輔くんとお別れしちゃって、寂しくてどうにかなりそうだったわたしのそばに、いてくれた」<br/>
「そうなの。よかったね、ハルトくんがいてくれて」<br/>
「わたし、ユウくんが好きだよ」<br/>
　リリは告白した。<br/>
「高校３年生のときに予備校で出会ってから、少しずつ、ゆっくりと、ユウくんはわたしにとって大切な存在になっていってくれた」<br/>
　ねえ、ユウくん。リリがそう話しかけてくる。リリはいつの間にか、アタシをハルトくんと間違えてるみたいだった。<br/>
「覚えてる？　あなたとはじめて行った海は冬だからとても冷たくて――けれどわたしは子供みたくはしゃいでたね」<br/>
　懐かしそうに目を細めて、そしてアタシの手をきゅっとにぎる。<br/>
「そんなわたしの手を、転ばないようにって、ずっとにぎってくれていた」<br/>
「リリ――」<br/>
「手、あったかかった」<br/>
　そう言って大切そうに、にぎった手を頬に寄せた。<br/>
　どうしよう。リリのこんな告白、アタシがきいてていいのかな。<br/>
「そのとき思ったの。あなたはわたしのことをずっと見ていてくれる。なにがあってもそばにいてくれるヒトだって、そんな気がしたの」<br/>
　ニッコリと微笑む。<br/>
「――ホントだよ？」<br/>
「リリ――あのねアタシはハルトくんじゃなくて」<br/>
「でも、洋輔くんがもっと好き」<br/>
　リリが、アタシの言いかけたのを無視して言った。<br/>
「いままでユウくんがそばにいてくれて、すごく嬉しかったよ。あの日海で感じたみたいに、やっぱりユウくんはわたしをずっと見ていてくれる人だって思った。けどね、やっぱり忘れられなかったの」<br/>
　リリの頬を涙が伝う。<br/>
「ごめんねユウくん。わたしやっぱり洋輔くんが好き。洋輔くんがわたしのこと、もう嫌いになってるとしても」<br/>
　インターフォンが鳴った。<br/>
　リリの手をそっとほどいて、玄関のドアを開けに行く。洋輔が立っていた。<br/>
「リリの様子は」<br/>
　ここまで走ってきたんだと思う。息を切らせながらきいてくる。<br/>
　久しぶりに会った洋輔は無精ヒゲがけっこう生えてて、なんか以前とは違ったトガった感じがした。<br/>
「入って」<br/>
　久しぶりに会った洋輔になんて答えたらいいかわからず、それだけ言って洋輔を迎え入れる。<br/>
「洋輔くん」<br/>
　リリが洋輔の名前を呼ぶ。けれど、それは洋輔を見つけたからじゃなかった。<br/>
　相変わらず、リリの目はなにも見てない。目の前の洋輔でさえ目に入ってなくて、涙に濡れた瞳は、ただ幻の洋輔くんを追っているようだった。<br/>
「どうして行っちゃったの？　なんで振り向いてくれないの？」<br/>
　悲しみにゆがんだ顔で、リリが訴える。<br/>
「リリ」<br/>
　洋輔が、リリと同じくらいつらそうな顔で、以前の恋人の名前を呼んだ。<br/>
　でもその声は聞こえなかったみたいで。やっぱりリリはなにもない空を見て、洋輔に話しかける。<br/>
「もうわたしを嫌いになったの？　イヤだ。離れていかないで！」<br/>
　声はだんだん大きくなっていく。普段のリリからは想像ができないヒステリックなその声を、洋輔は立ちすくんだまま聞いていた。<br/>
「だったらもう殺して！　イヤ！」<br/>
　リリは悲鳴をあげた。<br/>
「もうイヤ！　イヤ！　殺して！　もうイヤだ！　もう、もう――」<br/>
　洋輔がリリに駆け寄って、ギュッと抱きしめた。<br/>
「殺してよ！　やだ、やめてよー！」<br/>
　暴れるリリの手が、洋輔の顔を激しく打った。洋輔はそれでもリリを抱きしめ続けた。強く、だけどとても優しく。<br/>
「やめて、放して！　放して！　はなして！」<br/>
　リリのツメが、洋輔の首筋を引っ掻いた。シャツのボタンを引きちぎって、胸に爪をたてる。<br/>
「リリ」<br/>
「殺して！」<br/>
「――リリ」<br/>
　洋輔は、暴れるリリをただ抱きしめて繰り返し名前を呼ぶ。その声に、とても深い愛情のようなものを感じてドキリとした。<br/>
　急にリリが黙り込んだ。目が見開かれてた。<br/>
　リリの口元には、洋輔の首筋があった。そのあたりの空気を、リリがすっと吸い込んだのがわかった。<br/>
「洋輔……くん？」<br/>
　リリのその感覚わかるって思った。好きなヒトの匂いは、嗅いだらすぐにわかるもの。<br/>
「ああ、俺はここにいる」<br/>
「戻ってきてくれたの？」<br/>
　リリが、あどけない顔と声できいた。<br/>
　洋輔はためらうみたいに目を閉じる。<br/>
　そしてまた開いたときの目は、びっくりするくらい優しかったの。<br/>
　あの洋輔が、こんなまなざしをするなんて、知らなかった。<br/>
　すこしカラダを離して、リリの顔が見えるようにする。優しい声で言った。<br/>
「そうだよ」<br/>
「……ホントに？」<br/>
「ああ」<br/>
「もうどこにもいかない？」<br/>
　大きな傷跡の残る左手をあげる。少し震えている手を、そっとリリの頬にあてた。<br/>
「おまえは俺がいないとダメなんだ。そうだろ？」<br/>
「うん、そう」<br/>
　リリが笑う。花のように。<br/>
「だからそばにいて。もう放さないで」<br/>
</span>
<br />
<br />
　<span class="font_red">&#32;&#62;&#62;&#32;</span> 【<a href="http://www.cnovels.com/shortstory/noise05-05.html">noise Vol.05 - 09・10</a>】 に続く<br />
　<span class="font_red">&#32;&#62;&#62;&#32;</span> 【<a href="http://www.cnovels.com/shortstory/noise05-03.html">noise Vol.05 - 05・06</a>】 に戻る<br />]]>

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<title>優しくきゅっと - noise Vol.05 - 05・06</title>
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<modified>2010-05-01T03:34:30Z</modified>
<issued>2009-10-06T13:52:22Z</issued>
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<created>2009-10-06T13:52:22Z</created>
<summary type="text/plain"> 　　　５ 　シンくんとはじめてエッチするようになってからずっと、アタシはシンくんに夢中だった。 　あ、正確にはあの日、noiseの初ライブで彼の歌を聴いてからなのかなぁ。 　シンくんの歌声は予想してたよりずっと素敵で魅力的だった。 　オキとハルトくんとシンくんにnoiseの結成を宣言されてから２ヶ月が経っていた。新曲も２曲あったけど、後は全部BREATHの楽曲だった。 　そう――同じ曲のはずなの...</summary>
<author>
<name>千歳</name>
<url>http://www.ckotoba.com/</url>
<email>ckotoba@gmail.com</email>
</author>
<dc:subject>050_noise (バンド系恋愛小説)</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.cnovels.com/">
<![CDATA[<span style="font-family:'ＭＳ Ｐ明朝','平成明朝',serif;">
　　　５<br/>
<br/>
　シンくんとはじめてエッチするようになってからずっと、アタシはシンくんに夢中だった。<br/>
　あ、正確にはあの日、noiseの初ライブで彼の歌を聴いてからなのかなぁ。<br/>
　シンくんの歌声は予想してたよりずっと素敵で魅力的だった。<br/>
<br/>
　オキとハルトくんとシンくんにnoiseの結成を宣言されてから２ヶ月が経っていた。新曲も２曲あったけど、後は全部BREATHの楽曲だった。<br/>
　そう――同じ曲のはずなのに、シンくんが歌うとまるっきり違った曲に聞こえた。<br/>
　ハルトくんが歌ってた頃も素敵だったけど、シンくんが歌うと、カラダの中に直接響いてくるような感じがしたの。<br/>
　みんな同じように感じてないんだったらアタシだけがそうだったのかなぁ。いまはもう慣れたけど、はじめてシンくんの歌を聴いたあの夜、立ってられなくて、ほとんど気を失ってるみたいだった。<br/>
　ライブが終わって１０人くらいで打ちあげしてる間もずっとフワフワしてて、心とカラダが離れたみたいになってた。説得した甲斐あってライブに来てくれたリリが、心配そうに話しかけてきてたけど、それもほとんど耳に入らなくて、ただシンくんの声がずっとアタシをかき回していた。<br/>
　そんな感じでずうっとボウっとしてたから、さすがにみんなが本気で心配しだして、このままだとよくないと思ったから先に帰ることにした。そのとき、隣に座ってたシンくんに「ね、そこまで送って」ってお願いしちゃったんだ。<br/>
　シンくんはお酒をあまり飲まないヒトで、慣れないライブですごく疲れてたみたいだったから、帰るいい口実になるって思ったんだろうな。すんなりＯＫしてくれて、いっしょにお店を出てくれた。アタシって本当に具合悪く見えてたみたいで、シンくんは歩きながらずっと心配してくれてた。それでますますキュンとしたアタシは、シンくんに抱きついちゃった。<br/>
「え、アヤちゃん？」<br/>
　シンくんが慌てた感じできいてくる。<br/>
「気持ち悪い……」<br/>
「ええ、吐きそうとか？」<br/>
「ううん……少し休めばだいじょうぶ」<br/>
「そうかぁ、このへんでどっか座れるとこあったかなぁ」<br/>
　シンくんから少しカラダを離して、うるんだ目でシンくんをじっと見つめて言った。<br/>
「アヤ、どこかゆっくりお休みできるトコいきたいなぁ」<br/>
「そうなの？」<br/>
　シンくんがなにかに気づいたみたいに、アタシの腰に手をまわしてくる。<br/>
「じゃあ、ホテル行こうか」<br/>
「うん、けどなにもしないでね？」<br/>
「もちろん」<br/>
　シンくんはそう言ってニッコリ笑った。<br/>
<br/>
　でも、実際にはなにもしないなんてあるわけなくて。<br/>
　ホテルに入ってすぐ、アタシたちはキスをした。頭のてっぺんからつま先まで痺れていくような、柔らかくて甘くて少しだけ痛いキス。<br/>
　そのままベッドに押し倒されて、カラダを密着させたら彼も熱くなってるってすぐにわかった。<br/>
　その次からのことは頭が痺れすぎたせいでほとんど覚えていない。<br/>
　彼が１回イクまでの間に、何回イッちゃったんだろう。気がついたら、甘い痺れに満たされた頭を、シンくんが優しくなでてくれていた。<br/>
「気持ちよかった？」<br/>
　アタシは答えなかった。だってよく覚えてなかったから。<br/>
「ね、うでまくらして」<br/>
　答える代わりにおねだりして、腕まくらしてもらう。<br/>
　少しずつ意識がはっきりしてくる。シンくんをじっと見た。困ったように話しかけてきたり、頭をなでてくれるシンくんが急に愛おしくなって、彼の肩を甘く噛んだ。かすかに漏れるシンくんの声がまた頭を痺れさせる。そのまま肩を何度も優しく噛んで、首筋を噛んで、身を起こしてシンくんにまたがって、鎖骨を噛んで乳首をそっと噛んだ。<br/>
　そのたびに声を漏らすシンくんに言う。<br/>
「アヤ、さっきしたエッチのこと、覚えてない」<br/>
「ええ！？」<br/>
　それがよっぽどショックだったらしくて、シンくんはさっきまでの甘い口調ではない普通の声できいてきた。<br/>
「な、なんで！？」<br/>
　気持ちよすぎてだと思うけど、よくわかんなかったから「わかんない」って答えたら、シンくんはさらにショックを受けてるみたいな顔になった。ちょっと罪悪感を覚えて言った。<br/>
「次はちゃんと覚えておくようにするね」<br/>
　そしてシンくんの乳首に何度もキスをして、また優しく噛んだ。そのままいろんなところにキスしたり噛んだりしながら、下にさがっていく。<br/>
　噛み癖が気になったのか、シンくんが不安そうにカラダをこわばらせたのが少しだけおかしかったけど、笑うのはガマンした。<br/>
　そして数分もしたら、アタシはまた真っ白な世界に連れて行かれてた。<br/>
<br/>
　その夜以来、アタシの頭の中はシンくんでいっぱいになった。<br/>
　オキがたまに指摘してくる通り、アタシはちょっと惚れっぽいところがあって、リリにもよく心配されたりする。でもね、同時に複数のヒトを好きになったりはしないんだよ。<br/>
　誰かを本当に好きになったら、もうその人しか見えない。他の人が入りこむ余地なんてこれっぽっちもなくなる。だからいま、アタシの頭の中はシンくんでいっぱいだった。<br/>
　メールは毎日送ったし、電話もたまにかけた。本当はもっとたくさんメールしたり電話したりしたかったけど、あんまり送りすぎて気持ち悪がられて嫌われたりとかするのヤだったからガマンした。<br/>
　シンくんはそんなアタシをちゃんと相手してくれて、メールも結構返してくれたし、電話もすぐに出てくれなかったりしても、あとでちゃんとかけ直してくれた。<br/>
　デートに誘ったらいつもオッケーしてくれるし、お泊まりも何度かした。アタシたちってすごくカラダの相性いいみたいで、するたびに気持ちよくなってゆく気がする。そして、シンくんを好きな気持ちも、どんどん強くなっていくの。<br/>
「好き、好き！」<br/>
　ある日、シンくんとつながってるときに夢中でそう言ってしまった。何度も何度も好きって繰り返したの。<br/>
　これまでシンくんに好きって言ったことは一度もなくて、これがはじめての告白だった。<br/>
　シンくんはそれにはなにも言わずに、ただキスで返してくれる。口をふさがれたら息をするのが苦しくなる。酸素が足りなくなって、ますますなにも考えられなくなっていく。そしてそのまま意識をほとんどなくしたみたいになる。<br/>
　つながったまま、この日も何度もイかされた。<br/>
　ずっとガマンしてくれてたシンくんもついに終わって、優しくキスしてくれたあと、慎重に離れた。少しして喋れるようになったら、アタシはシンくんをじっと見つめた。<br/>
「どうしたの？」<br/>
　穏やかな声で、シンくんは聞いてきてくれる。<br/>
「好きなの」<br/>
　正直に打ち明けた。<br/>
「アヤね、シンくんを好きみたい。すごく、すごーく好きみたいだよ」<br/>
「ありがとう」<br/>
　シンくんはとても嬉しそうな顔をして言ってくれた。でもそのあとすぐに困った顔をして目をそらす。その瞬間に後悔した。なんでこんなこと言っちゃったんだろう。<br/>
「ぼくも好きだよ」<br/>
　また目を合わせてそう言ってくれたシンくんの、けれど好きの言葉の意味はアタシとは違くて。<br/>
　こんな悲しい『好き』ははじめてだと思いながら、すがるようにきいた。<br/>
「ほんとうに？」<br/>
「うん、けれどいちばん、じゃないんだ。アヤのことは好きだけど、いちばん好きな人がほかにいるんだ」<br/>
　いまフラれてるんだと思った。打ち明けてくれてるシンくんはとても真剣で、それが余計にアタシの心を傷つけてゆく。<br/>
「なにそれ」<br/>
　カラダが冷えていくのを感じて、自分自身を抱きしめる。<br/>
「意味わかんない。好きだけどってなに？　好きじゃないなら、ちゃんとゆってよ」<br/>
「違うよ。好きだよ。けど――たぶん愛せない」<br/>
　こんな感じで、アタシはさっきまでお互いをあんなに求め合っていた相手にフラれてしまった。<br/>
　泣きだしたアタシを、シンくんがためらいがちに抱きしめようとしてくれる。<br/>
「放して」<br/>
　はじめてシンくんを拒否した。<br/>
　素直に手を放したシンくんが、壊れるくらい抱きしめてくれたらいいのにと思いながら泣いた。<br/>
<br/>
　少しして、ほとんど無言のままお互い服を着て、ホテルを出る。<br/>
　スタスタ歩くアタシを、シンくんは追いかけてきてはくれなかった。<br/>
　追いかけてくれたらよかったのに。<br/>
　そして、いまからでもギュってしてほしかった。<br/>
　それくらいずるいことができるヒトだったら、シンくんを嫌いになれたかもしれないのに。<br/>
「ウソみたい」<br/>
　そっとつぶやいてみる。いまこんなことを考えてるなんて。<br/>
　少し前まで、今日はなんて素敵な一日なんだろうって思ってたのに。<br/>
　ウソみたい。ウソみたい。さっきまで天国にいたのに。<br/>
<br/>
　　　６<br/>
<br/>
　そのまま、泣きながらタクシーに乗り込んだ。戸惑う運転手さんに行き先を教えながら、器用に泣きじゃくり続ける。<br/>
　１０分くらい移動して、目的地に着くとお金を払って外に出た。<br/>
　ちっちゃなアパートの１０３号室のイヤホンを押す。反応なし。むかついて連打する。<br/>
「んだよ、うるせーな！」<br/>
　そう言ってドアを開けたのはオキだった。<br/>
「――フン、おまえだろうと思った」<br/>
「なんでアヤってわかったの？」<br/>
「消去法だ、しょうきょほう」<br/>
　オキはダルそうに頭をゴシゴシかいた。<br/>
「こんな非常識な時間に連絡もせずにいきなり来るやつっていったらさ、泣いてるおまえだって決まってんだよ」<br/>
「だってだって」<br/>
　乱暴な言葉が、そのときはとても優しくきこえて、おさまりかけてた涙がまたぼろぼろとこぼれ落ちてくる。<br/>
「だって、誰かに会いたかったの。会って慰めてほしかったの。アヤね、とーってもかわいそうなんだよ？」<br/>
　はいはい。オキがテキトーに言いながら部屋に入れてくれた。<br/>
　オキの部屋は相変わらずいろんなものがたくさんありすぎてウザかった。音楽関係のよくわかんないキカイとか本とか、ＣＤとかそこらじゅうに散らかっている。<br/>
　台所の洗濯カゴには洗濯物がこれでもかって積みあげられてて汚い。どうしてこんなになるまでほっとくんだろう。もっとこまめに洗濯すればいいのに。これじゃカビ生えちゃうよ。<br/>
　このまま洗濯開始しちゃおうかと本気で悩みかけてて、思い直す。そうだ、アタシいま失恋したてのかわいそうな女の子だったんだ。というわけで失恋したての女の子らしく、オキが出してくれたおっきなクッションに座って大人しく座っておくことにした。<br/>
　ぼうっとしてると、オキが麦茶を出してくれる。<br/>
「ビールがいい」<br/>
　おねだりしてみる。<br/>
「おまえふざけんなよ」<br/>
　そう言いながらも、缶ビールをプシュってあけて渡してくれた。<br/>
「ありがと」<br/>
　もらったビールを一気に半分くらい飲んで、長く息を吐く。<br/>
　オキはそれを無視して、テーブルに参考書みたいなの広げてなんかチェックしていた。勉強中みたい。<br/>
　勉強の邪魔した罪悪感をちょっぴり感じながらもずうずうしくきいてみる。<br/>
「なにがあったかきいてくれないの？」<br/>
「話したらきいてやるよ」<br/>
　そう言いながらも、参考書から目を離さない。<br/>
「今日ね、シンくんにフラれちゃったの」<br/>
「ええ？」<br/>
　思い切って打ち明けたら、オキは驚いて声をあげた。<br/>
「シンに？　なに、そもそもおまえ、シンが好きだったのか？」<br/>
「そんなに意外？」<br/>
「ぜんぜん。――いや、おまえがシンを気に入ってるのは知ってたけどさ。おまえ惚れっぽいから誰かを好きになるなって日常茶飯事だし、本気じゃないだろって思ってた。ていうかおまえから告白したの？」<br/>
「もう、おまえおまえってうるさい！」<br/>
　ああ、悪い。シンはめんどくさそうに謝ると身を乗り出してきた。<br/>
「とにかく詳しく話せよ」<br/>
　今夜のオキは、会ってからずっとよそよそしかったので、こうやってアタシを見てくれてるとなんかすごく嬉しく感じる。アタシはちょっとだけ満足してシンくんとのことを話した。<br/>
　初対面のときに感じたことや、初ライブで立ってられなくなったこと。帰りにホテルに行っちゃったこと。それからはずっとシンくんに夢中で、メールや電話をいっぱいしたこと。<br/>
　今日もエッチしてたこと。エッチしながら好きって言っちゃったこと。そのあとに、ほかに好きなヒトがいるから愛せないって言われてフラれちゃったこと。<br/>
　話す順序とかぐちゃぐちゃで、オキがちゃんと理解してくれたのかわかんなかったけど、オキはじっときいてくれていた。<br/>
　喋っているうちにあのときの気持ちがよみがえってきて、止まっていた涙がまたこぼれだす。アタシの涙タンクは意外と大容量だった。<br/>
「ね、音楽つけていい？」<br/>
「お、おう」<br/>
　なんかドギマギしてるオキがうなずく。<br/>
　ちょっとぶっちゃけすぎちゃったかな。エッチしながら告白したことまで話さなくてもよかったかも。<br/>
　コンポのスイッチを入れると、BREATHの曲が流れてきた。『冷たい手』って曲。<br/>
「あ、悪い」<br/>
　慌ててオキがリモコンを奪おうとする。たぶんこのままきいてたら、シンくんが歌ってる曲が流れるんだってピンときた。<br/>
　でもいま流れている曲のバージョンならシンくんが歌ってるんじゃない。ハルトくんが歌ってるはずだった。<br/>
　洋輔がドラムで、オキがベースで、ハルトくんがギターと歌を歌っていた、あの頃の『冷たい手』。<br/>
「ね、この歌リピートにしてていい？」<br/>
「ああ、好きにしな」<br/>
　リモコンを奪うのをやめて、オキが床に寝転んだ。<br/>
　イントロが終わって、歌が始まる。<br/>
<br/>
『Happy daily like a dream<br/>
　There's just "two" of the world<br/>
　なんとなく　いつか叶うんじゃないかって思っていた夢を<br/>
　キミは他の誰かと　知らないうちに見ていたんだね』<br/>
<br/>
　なんでいままで気がつかなかったんだろう。<br/>
　ハルトくんの歌声をききながら、そのことに気がついた。<br/>
<br/>
『冷たくて持てない<br/>
　わがままをいうこの子のために<br/>
　ボクは缶コーヒーを両手であたためてあげた<br/>
　キミは少しだけぬるくなったコーヒーを手に持って　ニッコリと微笑む<br/>
　そしてふたり並んで歩くんだ<br/>
　ボクの冷たい心が　手から伝わらないように<br/>
　缶コーヒーで冷えた両手を　ポケットであたためながら』<br/>
<br/>
「ねえ」<br/>
　ハルトくんの歌声はとても優しい。歌を聞き逃さないようにしながら、オキにそっと問いかける。<br/>
「――ん？」<br/>
「この歌って、ハルトくんが作ったんだよね？」<br/>
「ああ、そうだよ。去年の６月くらいかな。ハルトが作って持ってきたんだ」<br/>
　――去年の６月。洋輔とリリが付き合いはじめたのは、確かおととしの１２月くらいだったかな。<br/>
「もしかしてこれって、リリのこと歌ってるのかな？」<br/>
「……さあな。知らねえよ」<br/>
　でも、そうなんだ。<br/>
　この歌が教えてくれているもの。<br/>
<br/>
『Happy daily like a dream<br/>
　There's just "two" of the world<br/>
　いまはもう　手には入れられないんだってわかっている夢を<br/>
　諦められないなら　キミの幸せを壊すしかない』<br/>
<br/>
　ハルトくんはずっとリリを好きだったんだ。<br/>
　たぶん、リリが洋輔と付き合うようになるずっと前から。<br/>
<br/>
『熱すぎて持てない<br/>
　わがままをいうこの子のために<br/>
　ボクは缶コーヒーが冷めるまで持っててあげた<br/>
　キミは少しだけぬるくなったコーヒーを手に持って　ニッコリと微笑む<br/>
　そしてふたり並んで歩くんだ<br/>
　ボクの冷たい心が　手から伝わらないように<br/>
　缶コーヒーを持ってたほうで　キミの手をにぎりながら』<br/>
<br/>
　歌は、夏を経て、冬になる。<br/>
　季節がめぐる間も、ひとりの女の子を想い続けている歌。<br/>
　でも女の子は、他のヒトを好きになっちゃったんだ。<br/>
「……誰かを好きになるって、むずかしいね」<br/>
　オキは答えてくれない。代わりに冷蔵庫からビールを取り出して飲みだした。半分目を閉じるようにして、アタシのことそっちのけで曲をきいている。<br/>
　そういえば、オキが誰かを好きになったって話、きいたことない。<br/>
　ちょっと無茶な質問をしちゃったのかも。<br/>
　それとも、オキはオキで秘密にしている恋があったりするのかな。無言で音を拾うベーシストに、この曲はどんなにきこえてるんだろう。<br/>
<br/>
『Happy daily like a dream<br/>
　There's just "two" of the world<br/>
　さよならは　言わないけれど　きっと永遠に交わらないね<br/>
　諦められないけど　キミが幸せならそれでいいんだ』<br/>
<br/>
　抱え込んだ膝に顔をうずめて小さくため息をつく。これから、どんな顔してシンくんに会えばいいんだろう。<br/>
　アタシをいちばんに愛してくれてないシンくんに次会ったとき、アタシはどんな顔して、なにを話すんだろう。<br/>
　シャワーも浴びずにホテルから出てきたカラダ中から、シンくんの匂いがする。<br/>
　他に愛してるヒトがいるくせに。<br/>
「……そんな深刻になるなよ」<br/>
　ぽつりとオキが言った。<br/>
「どうせおまえのことだ。１週間も泣けばシンなんてどうでもよくなるって」<br/>
　そのデリカシーのない発言に、本気でムカついた。<br/>
　でも、心のどこかに、そうなのかなって思う自分もいて、言い返せなかった。<br/>
　アタシには、この歌を作ったハルトくんの気持ちを１００％は理解できないもの。自分以外のヒトを好きになった女の子を、それでも想い続けるなんて、そんなことがどうしてできるんだろう。<br/>
　そんな恋したことない。<br/>
　リリもそう。あの子みたいに、フラれた男のことをいつまでも引きずったりするような気持ちも、アタシは知らなかった。<br/>
「すぐに忘れるさ。そしてまた、別のヤツを好きになればいい」<br/>
　見透かしたようにオキは言ってお酒を飲む。<br/>
<br/>
『Happy daily like a dream<br/>
　There's just "two" of the world<br/>
　そしてふたり並んで歩くんだ<br/>
　ボクの冷たい心が　手から伝わらないように』<br/>
<br/>
　そうなのかな。シンくんを好きな気持ちは、少しすればなくなるのかな。<br/>
（アヤ）<br/>
　シンくんがアタシを呼ぶ声を思い出してみる。<br/>
　笑顔で呼んで、少し目を細める。頭をなでてくれる。手をにぎってくれる。<br/>
　アヤ。アタシの名前をとても優しくゆってくれる。<br/>
　アタシはそのたびにキュンとして、胸が締めつけられて、ついついシンくんから目をそらしてしまったりしていた。<br/>
　頭をなでてくれると気持ちがポカポカした。<br/>
　にぎってくれる手があったかくて、ずっと放さないでいてほしかった。<br/>
（アヤ）<br/>
　ずっとそばにいてくれたらいいのにって、気がついたら夢に見るようになっていた。<br/>
<br/>
『Happy daily like a dream<br/>
　There's just "two" of the world<br/>
　そしてふたり並んで歩くんだ<br/>
　キミの手のあたたかさに　少しだけ救われながら』<br/>
<br/>
　ガマンできなくなって、アタシはまた泣いた。大きな声で。<br/>
「悪い、言いすぎた」<br/>
　慌ててオキが謝ってくる。それでも、涙は止まろうとしない。<br/>
　オキはタオルを持ってきてくれたり、ティッシュをそばに置いてくれたりしたあと、最終的にどうしたらいいかわかんないという感じで近くに座って頭をなでてくれた。<br/>
「ごめんな。よしよし、シンのやつひどいよな。まあ大丈夫だって。おまえ結構かわいいからまたすぐいい男見つかるって。俺はカンベンだけどな」<br/>
　ひとこと多いオキの慰めかたは、まるで子供をあやすみたいで。でもそれがいまはヤじゃなかった。<br/>
　だからアタシも安心して、子供みたいに泣いたんだ。<br/>
<br/>
　ハルトくんの歌声を遠くにききながら。<br/>
<br/>
『Happy daily like a dream<br/>
　There's just "two" of the world<br/>
　でもそれでも　ボクはこの気持ちを<br/>
　なくすことができない　どうしてもなくせないんだ』<br/>
</span>
<br />
<br />
　<span class="font_red">&#32;&#62;&#62;&#32;</span> 【<a href="http://www.cnovels.com/shortstory/noise05-04.html">noise Vol.05 - 07・08</a>】 に続く<br />
　<span class="font_red">&#32;&#62;&#62;&#32;</span> 【<a href="http://www.cnovels.com/shortstory/noise05-02.html">noise Vol.05 - 03・04</a>】 に戻る<br />]]>

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<title>優しくきゅっと - noise Vol.05 - 03・04</title>
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<modified>2010-05-01T03:34:52Z</modified>
<issued>2009-10-04T02:11:16Z</issued>
<id>tag:www.cnovels.com,2009://2.18564</id>
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<summary type="text/plain"> 　　　３ 　シンくんとはじめて会ったのは、４月――雨の降る日の夜だった。 　アタシにとって大事な出来事がある日は、なぜかよく雨が降る。この日も雨で、いま思えばオキに飲みに誘われたときからなにかの予感を感じてた気がする。 　下北沢の、安いので有名な居酒屋に入ると、すぐにアタシを見つけたオキが手を振ってくれた。 　オキは、いまはもうないBREATHのベースだったヤツで、同い年でアタシのバイト仲間でも...</summary>
<author>
<name>千歳</name>
<url>http://www.ckotoba.com/</url>
<email>ckotoba@gmail.com</email>
</author>
<dc:subject>050_noise (バンド系恋愛小説)</dc:subject>
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<![CDATA[<span style="font-family:'ＭＳ Ｐ明朝','平成明朝',serif;">
　　　３<br/>
<br/>
　シンくんとはじめて会ったのは、４月――雨の降る日の夜だった。<br/>
　アタシにとって大事な出来事がある日は、なぜかよく雨が降る。この日も雨で、いま思えばオキに飲みに誘われたときからなにかの予感を感じてた気がする。<br/>
　下北沢の、安いので有名な居酒屋に入ると、すぐにアタシを見つけたオキが手を振ってくれた。<br/>
　オキは、いまはもうないBREATHのベースだったヤツで、同い年でアタシのバイト仲間でもある。<br/>
　男としては全然興味ないけど、結構アタシと気があって、おまけに面倒見がいいから結構頼りにしてるんだ。<br/>
「こいつ真太郎っていうんだ。俺の幼なじみ。――シン、この子がアヤだよ。俺のバイト仲間でBREATHのライブにもよくききに来てくれてたんだ」<br/>
　オキはそうやってシンくんを紹介してくれた。<br/>
　やばい。このヒト超好みのタイプ！　優しそうな下がり気味の目はすっごいまつげが長くて、見てるだけでとろけそうになるの。<br/>
　ちょっと笑顔が頼りなさそうだったけどね。<br/>
「えへへ、よろしくね」<br/>
　シンくんがそう言ったのをきいて、みるみるうちに自分の顔が真っ赤になってゆくのを感じた。<br/>
　なんて声なの！？　甘くて、少しかすれてて、なのにとても透き通ってて。こんな声でアタシだけにささやかれたら、もう立ってられない！<br/>
　キュンキュンしっぱなしのアタシは、それでもなんとかできるだけかわいく自己紹介しようとがんばった。<br/>
「アヤです。はじめまして♪」<br/>
　語尾をあげるようにアイサツするアタシを、オキが気持ち悪そうに見てるけど相手にしない。<br/>
　今日はガーリーにキメててよかったとか考えながら、ちゃっかりシンくんの隣に座って、やってきた店員さんに反射的に中ジョッキを注文する。しまった、もっとカワイイ飲みもの頼んだほうがよかったかな？<br/>
「ねえねえ、シンくんはなに飲んでるの？」<br/>
「んー、カシスオレンジだよ。あんまりお酒強くなくて――あ、電話だ。ちょっと待ってね」<br/>
「あ、うん」<br/>
「もしもしー。やだなぁ、わかるに決まってんじゃん。こないだは楽しかったねー♪」<br/>
「ちょっとオキ」<br/>
　シンくんが電話に熱中してる間に、アタシはテーブル挟んで目の前にいるオキに対して身を乗り出した。ひそひそ声できく。<br/>
「ねえねえ、このヒトがどうかしたの？　もしかしておまえら付き合っちゃえよ的な？　やだー！　だって会ったばかりだし、アタシそんなに軽くないし！　……でも、でもでもどうしてもってゆうなら考えなくもないかなー」<br/>
「シンとハルトと俺の３人で、バンド結成するんだ」<br/>
　アタシの盛り上がってゆく気持ちを完全に無視してオキが言った。なによ、ちょっとは付き合ってくれてもいいじゃない！　……え？<br/>
「バンドー！？」<br/>
「そう」<br/>
　アタシの驚きは「待ってました」な反応だったらしく、オキはすっかりごきげんな感じでうなずいた。<br/>
「新しいバンドさ。BREATHがあんな終わりかたして、俺たちをいちばん応援してくれてたおまえには、前からすげえすまないと思ってたんだ。だから、新しいバンドの結成が決まって、おまえには最初に知らせようってハルトと話し合ってさ。あと、シンを紹介しようって」<br/>
「そう、だったんだ……」<br/>
　アタシは、ショージキとても複雑な気分になってしまった。<br/>
　オキとハルトくんが新しいバンドをはじめてくれるのはうれしいけど。うれしいんだけどッ。<br/>
　じゃあアタシの大好きだったBREATHは、やっぱりもう二度と復活しないんだ。<br/>
　それって、とても悲しいことで、でもまたオキのベースやハルトくんのギターや素敵な歌声がきけると思うととてもうれしくて、なんかアタシの心の中はぐちゃぐちゃになっちゃって、気がついたら涙がこぼれ落ちてた。<br/>
「そうか、泣いて喜んでくれるか。イテッ」<br/>
　うんうんと満足そうにうなずくオキのオトメ心のわからなさにムカついて、テーブルの下で足を蹴飛ばす。<br/>
「バカ！」<br/>
「えー、なんでそんなに怒ってんの？」<br/>
「まあまあふたりともケンカしないで。仲良くしようよ、ね？」<br/>
　いつの間にか電話が終わっていたシンくんが、落ち着いたトーンの声で、険悪になりかけてたアタシとオキの間を取り持ってくれる。<br/>
　そうそう、こんなシンくんの態度が、この日のアタシにとってはとても大人で落ち着いてるように見えたんだっけ。<br/>
　いま思えば、このときシンくんはオキとアタシを心配してくれてたわけではなかったんだよね。ただこのヒトは、争いごとを目の前で見るのがヤなだけだったんだ。<br/>
　徹底的な平和主義者の彼が怒るのを、アタシはこの日からいままでの間で、まだたったの一度しか見たことがない。<br/>
　とにかく、そのときのシンくんの優しい言葉に感動したアタシは、シンくんが渡してくれたおしぼりで慎重に涙を拭いて、あと控えめに鼻をかみながら感謝の言葉を伝えたのだった。<br/>
「ありがどう、シンぐん」<br/>
　ちょうど頼んでたビールが運ばれてきたので、とりあえず乾杯。高まった感情に後押しされたアタシが一息でジョッキの半分をあけるのを、シンくんがおもしろそうに見ていた。<br/>
　シンくんはお酒がほとんど飲めないらしく、カシスオレンジをちびちびと飲んでいる。お酒が好きだったほうがよかったな。<br/>
　と、ここでまたシンくんの携帯電話が鳴った。<br/>
「もしもしー。あ、ホントに電話くれたんだ、うれしいなー♪　えー、もちろんだよ――」<br/>
「ちょっとオキ」<br/>
　シンくんがまたしても電話に熱中してる間に、アタシはオキに訴えた。<br/>
「このヒトって――シンくんってマジでアタシのタイプなんだけど？　タイプすぎるんですけど。おまけに優しいんですけど！」<br/>
「おちつけ」<br/>
　すっかりシンくんに食いついてしまっているアタシに、オキが冷静なアドバイスをしてくる。<br/>
「さっきも言ったように、残念だが今日は合コンじゃないんだ」<br/>
「あ、そうだった。新しいバンドを結成したんだよね。それはもちろんうれしいよ。でもさ！」<br/>
　アタシの複雑な気持ちを伝えるのにためらいを感じて、どうしていいかわからずアタシはオキをじいっと見た。<br/>
　視線に気づいてそわそわするオキに、少し満足する。<br/>
　アタシがこうやってじっと見つめると、オキはいつも落ち着かなくなる。<br/>
　別にオキがアタシを好きってわけじゃなくて。<br/>
　オキが昔飼ってたイヌに、アタシの目がそっくりなんだって。「ハナコもそんな目をして俺を見てたなあ」って、ききようによってはとても失礼なセリフをオキがぼそりと言ったことがある。<br/>
　そのとき超ムカついたので、以来アタシは嫌がらせみたいに、チャンスがあればこうやってオキをじっと見つめるようにしてるのだ。<br/>
「――そうだよな。おまえはBREATHをよく応援してくれてたもんな」<br/>
　え？　やだオキ泣いてる？<br/>
　お酒のせいもあったのかもしれないけど、オキが若干涙ぐんでてドキッとした。<br/>
　オキ、アタシの気持ちをわかってくれたのね……！　アタシはうろたえながらも強がって言った。<br/>
「ま、まあ、わかってくれたらいいよッ」<br/>
「うう、ハナコ……」<br/>
　パシーン！　オキの頭をはたく。<br/>
「あんたまたアタシ見てイヌを思い出してたでしょ！」<br/>
「な、なんだよ、おまえがそうやって俺をじっと見るからだろうが！　そういうの自業自得っていうの！」<br/>
「まあまあ、二人とも落ち着いて。ケンカはやめようよー」<br/>
「あ、ごめんねシンくん」<br/>
　しまった。またシンくんの前でケンカしてしまった。後悔していると、またシンくんの携帯電話が鳴った。<br/>
「シズカちゃん？　うん、大丈夫だよ。マジでー！？」<br/>
「ちょっとオキ」<br/>
　またまた電話に熱中してきたシンくんを横目に、オキを呼ぶ。<br/>
「もうシンくんの前でアタシにケンカ売らないで――ていうか、さっきからの電話、みんな女の子からじゃない！？」<br/>
「やっと、気づいたか」<br/>
　おしぼりで涙を拭きながらオキは続ける。<br/>
「実はあいつは、女が大好きなんだ」<br/>
「みたいだね」<br/>
「あと、俺はおまえにケンカ売ってるわけじゃねぇ。ただ、おまえを見てて愛犬ハナコを懐かしく思い出してしまっただけだ」<br/>
「それがケンカ売ってるってゆーの！」<br/>
　シンくんにケンカしてると気づかれないように、ニコニコ笑いながら小声で訴えた。<br/>
　無理矢理あげた口角がピクピクする。そうか、こうゆうのを、笑顔が引きつるってゆうんだね！<br/>
「ふたりともごめんねー。今日はやけに電話かかってくるなぁ」<br/>
　さすがにマズイと思ったのか、シンくんが弁解しながら携帯電話の電源を切った。<br/>
　アタシはため息をつく。<br/>
　なんだかすごくガックリきそうになったけど、今日のアタシはこれくらいじゃへこたれない。<br/>
　それくらい、新しいバンド結成の話は、アタシにとって大事件だったの。<br/>
「とにかくバンド結成おめでとう。もう活動してるの？　曲は新しいのを作るの？　ライブはいつ？　ねえ、バンドの名前はどうするの！？」<br/>
「まあちょっとまて」<br/>
　質問してるうちに興奮してきたアタシをなだめてくるオキに、ブンブンと首をふる。<br/>
「だってだって！」<br/>
「もうすぐハルトのヤツがくるはずだからさ。詳しくはそれからだ」<br/>
「あ、ハルトくんもくるんだ。じゃあ待ってる♪」<br/>
　ハルトくんが来るまでの間に、アタシは２回ビールのおかわりをした。<br/>
「やだ、アヤ酔っちゃったかもー」<br/>
　とか言いながら、さりげなくシンくんの肩に頭をもたせかけてみる。<br/>
　ビールを２杯飲んだくらいじゃ、ホントはあんまり酔ったりしないんだけどねー。<br/>
　そんなことしてたら、ハルトくんがやってきた。<br/>
「ごめん遅くなって」<br/>
　ハルトくんと会うのはアタシは２ヶ月ぶりくらいで、たったそれだけなのになぜかハルトくんは、とても懐かしそうにアタシを見た。<br/>
　いまだったらわかる、ハルトくんはアタシを見て、リリを思い出したんだ。あの頃、アタシとリリはいつもいっしょだったから。<br/>
　でもこのときは、ハルトくんがリリを好きだなんて知らなかったから、その懐かしそうなまなざしに、ただにっこり笑ってこたえたのだった。<br/>
「ハルトくん久しぶりだね。ねえねえ、さっきオキからきいたんだよ。バンド結成おめでとう」<br/>
「ありがとうアヤちゃん。オキと話し合ってさ。バンド結成の報告をいちばん最初にするのはアヤちゃんにしようって決めたんだ。アヤちゃんがいちばん、僕らを応援してくれてたから」<br/>
「ハルトくん……」<br/>
　ハルトくんがたまにこんなことをゆうと、とてもキュンとする。普段ハルトくんはあんまり喋るほうじゃないし、なにを考えてるのか見えにくいところがあったから。<br/>
　でも、たまに話す彼の言葉はいつもとても素敵で、アタシは彼の話す言葉が大好きだった。<br/>
　あと、ハルトくんはBREATHのギター＆ヴォーカルだったから。ライブのときの彼は普段の彼からは想像できないくらい激しくて、かっこよくて、アタシにとってハルトくんはカリスマ的存在だった。<br/>
　アタシはiPodにもBREATHの曲を入れていて、どこに行ってもずっときいちゃうくらいBREATHの大ファンだったから、つまりはハルトくんの声をずっと聞いていたわけで、だからハルトくんの声をたまに聞くだけで「もう大好き！」ってなってしまう。<br/>
　オキに言わせるとアタシは超惚れっぽいんだそうで、多少身に覚えもあったから、ハルトくんをホントに好きになっちゃわないように気をつけなきゃって思ってた。<br/>
　そんなだったから、もしもハルトくんがアプローチしてきたりしたら、どこまでもついてっちゃったかもしれない。幸い（？）ハルトくんは、アタシに女の子としての興味は持たなかったみたいで、恋がはじまることはなく、アタシはBREATHの誰に対しても恋愛感情なんて持たずに、最後まで純粋なファンとして応援できたのだった。<br/>
　そんなハルトくんに優しい言葉をかけられて、アタシの胸は高鳴る。<br/>
　今日はなんて素敵な夜なんだろう！<br/>
　さっきまで酔ったフリしてシンくんの肩に頭をもたせかけてたことなんてすっかり忘れて、アタシはハルトくんの優しい言葉に聞き入った。<br/>
「オキからはどこまで聞いた？　――うん、僕ら３人で、新しいバンドをやるんだ。BREATHはあんな形で解散になってしまったけれど、この３人でやり直そうと思ってる。オキがベースで、僕がリードギター。シンがサイドギター兼ヴォーカルだよ。バンド名は――」<br/>
「ちょっと待って」<br/>
　ハルトくんの言葉に耳を疑った。<br/>
「ハルトくんが歌うんじゃないの？」<br/>
　ハルトくんは静かにうなずいた。オキとシンくんは、なにも喋らず、アタシたちのやりとりをじっときいている。<br/>
「僕はサイドヴォーカルで、シン――彼が、新しいバンドのメインヴォーカルだ」<br/>
　なんとなく、そんな気はしていた。シンくんの声を聞いたとき、アタシも感じたもの。この人の声すごいって。この人が歌ったら、どんな歌声になるんだろうって。<br/>
　でも――洋輔がいなくなって、ヴォーカルがハルトくんでさえなくなってしまったら、そのバンドはもうあまりにもBREATHとは違いすぎる。<br/>
　アタシは改めて感じずにはいられなかった。やっぱり、アタシの大好きだったBREATHは、もう二度と会えないんだ。<br/>
「ねえ、ドラムはどうするの？」<br/>
　アタシは思い切ってきいた。いまのメンバーではドラムを叩くヒトがいない。洋輔の代わりがいない。その人に失礼だけど、新しいバンドにまだそんなに思い入れが生まれていないアタシには、どうしてもBREATHを軸にしか考えられなかった。<br/>
「ドラムパートは、毎回誰かに頼んでヘルプで叩いてもらう」<br/>
　ハルトくんが、少し困った顔をして、けれどとてもきっぱりとそう言った。<br/>
「え、じゃあメンバーとしては入れないの？　どうして？」<br/>
　ってききながらも、なんとなく理由はわかっていた。<br/>
「いつか、洋輔が自分のもといた場所に戻りたいって思うかもしれない」<br/>
　ハルトくんの返事はやっぱり予想通りで、アタシはカラダ中に鳥肌が立つのを感じた。感動して、泣きそうになりながら、それでもブンブンと首を振った。だって、だって！<br/>
「そんなの、だって……洋輔くんは、もうドラム叩けないカラダになっちゃったんだよ？」<br/>
「わかってるよ。最後に会ったとき、洋輔の左手の握力はほとんど戻ってなかった。あの調子じゃ、いまもスティックを持てるかどうかさえあやしい。なによりあいつ自身がもう諦めてる。ドラムはやめたって言葉も、僕とオキは、直接あいつの口から聞いたんだ」<br/>
「だったらもう――」<br/>
「だけどッ」<br/>
　アタシが言いかけるのを、ハルトくんが遮る。こんなに感情を表に出したハルトくんをライブ以外で見たのってはじめてで、アタシは怖くて一瞬目を閉じた。<br/>
「――ごめん。僕は、僕らは思えないんだ。どうしても。あいつが」<br/>
　ハルトくんの顔が苦しそうにゆがむ。<br/>
「洋輔が、あの洋輔がドラムをやめるわけがない。絶対に、あいつはいつかまたドラムを再開する――そして努力してきっとまた叩けるようになる。最初は叩けなくても、それでもいつか必ず元のように叩けるようになる。必ず。必ず！　だったら僕たちのできることはひとつだけだ。だからオキと話し合って決めた」<br/>
「そうなんだよ」<br/>
　オキが、ハルトくんが言い終わったタイミングで言葉を続ける。<br/>
「ハルトと俺で決めたんだ。ドラムメンバーは正式には入れないようにしようって。だけどいまの俺たちが洋輔抜きで再開しても、ただパワーダウンするだけだ。そんなバンドじゃ洋輔は振り向いてくれないんじゃないかってさ。やるなら、洋輔にこのバンドでドラム叩きてぇって思わせるようなバンドにしないとダメだろ。で、どうしようかって悩んでたとき、シンに目をつけたんだ」<br/>
　オキが自慢げにシンくんの名前を呼ぶ。シンくんがふたりにそんなに期待されてるんだと知って、アタシははじめて見る気持ちでシンくんを見た。このヒト、そんなにスゴいんだ……！<br/>
「もともとこいつ、前からバンドやりたいって言ってたから、たまにギター教えたりしてたんだよ。俺もハルトほどじゃないにしろ少しは弾けるからさ。で、そんな中でこの前合コン……じゃない飲み会があったんだ。その２次会でカラオケ行って、シンが歌う番になって」<br/>
　……いま、合コンって言わなかった？<br/>
「シンのやつ１次会ですでにモテモテ……っていうか人気者でさあ。なんだよみんなこんな優男タイプがいいのかよって眺めてたんだが、カラオケでシンが歌うのをきいて傍観者意識なんて吹っ飛んだよ。こいつの歌は、なんか違うんだ。こう魂をふるわせるっていうか、届くんだよ。ここにさ」<br/>
　オキが、そう言って自分自身の胸をドンと叩く。<br/>
　ていうかやっぱり合コンだよね？　モテモテとか言ってるし！<br/>
「すごかったぞ。女の子たちみんな泣いてんの。それからはもう女子とシンを奪い合ってさ。あれも歌ってくれ、これも歌ってくれってリクエストしまくって、最終的に合コンなんてどうでもよくなって俺らでシンをくどいたんだ」<br/>
　最終的に、アタシに合コンだったことを隠すのもめんどくさくなったらしい。普通にぶっちゃけだしたオキとは逆に、アタシのテンションは下がりきってた。<br/>
　合コンってアタシ初耳なんだけど。オキはもっと硬派な男の子なんだって思ってたのにショック。しかもシンくんも行ってたんだぁ。しかも女の子にとってもモテてたんだ……じゃあ、もしかしてさっきの電話とかみんなそのときの女の子から？　別にいいんだけどッ。アタシも合コンくらい行くし別にいいんだけどッ。<br/>
「ちょっとオキ大げさだって！　ハルト、なんとか言ってやってよ」<br/>
「いや、シンの歌はすごいよ。僕もあのとき、新しいバンドにはシンが必要だって確信した。カラオケであれほど感動できるなんて驚いたよ」<br/>
「ええー！」<br/>
　アタシは驚きの声をあげた。じゃあハルトくんもその合コンに参加しての？　超ショック！　男って。男ってッ！<br/>
　超ドン引きなアタシをほったらかしにして、３人はそのまま新しいバンドについて盛り上がりだした。<br/>
<br/>
　ちなみに合コンについては、あとで３人は人数あわせのために仕方なしに参加したんだってきかされた。でも、本当かなぁってアタシはいまだにうたがってる。ハルトくんはホントに人数あわせなんだって信じられるけど、オキはちょっとあやしいし、シンくんは下手したら幹事だったんじゃないかって思うくらい。<br/>
　ただね、いまではアタシ、このときの合コンにとても感謝してるの。あの合コンがなかったら、いまのバンドはなかったのかもしれない。シンくんとも出会えていなかったのかもしれないって思うと、素直によかったって気持ちになる。ホントなんだからね！<br/>
　最初は感動する話ばかりきかされて、新しいバンドを、音をきく前からとても好きになって、最後は合コンの話をきかされて３人をちょっとだけ嫌いになったという、とてもおかしな夜だったけど、とにかくこの夜がアタシと新しいバンド『noise』との出会いだったんだ。<br/>
<br/>
　　　４<br/>
<br/>
　noise結成の話を聞いてから１ヶ月後の５月。３限目の授業が終わって、リリといっしょに学食に行って味噌煮込みうどん食べてたら、テーブルに置いてたケータイがひかりだした。<br/>
　オキからのメールだった。初ライブのお知らせで、読んだ瞬間アタシは「やったぁ！」って叫んでた。<br/>
「アヤ、どうしたの？」<br/>
　ハッ。いきなりテンションの上がったアタシを、リリが怪訝そうに見ている。<br/>
「な、なんでもないなんでもない」<br/>
　ブンブン首振りながら、失敗したって思った。<br/>
　noiseが結成されたことを、実はアタシはまだリリには話してなかった。<br/>
　だってBREATHのメンバーだったオキとハルトくんが、洋輔抜きで新しくはじめたバンドなんて、リリにはとても言えないでしょ？<br/>
　ていうか洋輔がらみの話は、リリには基本ＮＧだから。<br/>
　リリは洋輔と別れてから、ずっと元気がない。<br/>
　たぶんハルトくんやオキとも、あの日以来会ってないし。<br/>
　洋輔との別れからもう２ヶ月も経つのに。リリはまだ、ショックからぜんぜん立ち直れてなかった。<br/>
　アタシがもし男にフラれようものなら、きっと怒りくるってワンワン泣いて、やけ酒して１週間もしたらたぶん次の恋に走ってる。<br/>
　リリみたいにひとりの男にずっとこだわって、フラれても忘れられないで想い続けるって気持ちが、実はアタシにはさっぱり理解できなかった。<br/>
　そんなアタシの気持ちに気づいてるのかはわかんなかったけど、なんとここでリリは、時々見せるカンの鋭さを発揮してきたのだった。<br/>
「もしかして、オキくんから？」<br/>
「ええ、なんでわかったの！？」<br/>
　あまりのリリのエスパーぶりに、アタシはそう口走ってしまった。<br/>
「やっぱり。――きのう、ユウくんからメール来たの。６月５日にライブするから、よかったら来てって」<br/>
　ユウくんっていうのはハルトくんのことね。ハルトくんは、フルネームを結城晴人（ゆうきはると）っていって、リリだけはどんな流れか知んないけどハルトくんを「ユウくん」って呼んでる。<br/>
　自分だけの呼びかたって特別な感じしない？　だからリリがユウくんって呼んでるのを聞いたときは、もしかしてリリはハルトくんを好きなのかなって思ってた。でもしばらくしてリリは洋輔とつきあいだしたから、アタシのカンチガイだったと納得してたんだけど。<br/>
「ハルトくんから。ふーん、そうなんだ」<br/>
　アタシはわかった気がした。リリがハルトくんを好きだってゆうのは、やっぱりアタシのカンチガイで。<br/>
　ハルトくんが、リリを好きなんだ。<br/>
　ナイス、ハルトくん！　アタシはここぞとばかりにテンションをまた高めて言った。<br/>
「ねッ、楽しみじゃない？　アヤ、ワクワクしすぎて前の日は寝られないかも」<br/>
　リリはきっと悩んでる。行こうかどうかって。<br/>
　アタシは、リリはライブには行ったほうがいいって思う。<br/>
　ハルトくんがリリを好きなんだったらなおさらよ。もう、洋輔なんて忘れちゃえばいいんだ。<br/>
「……わたしね、やっぱり行くのやめとこうかなって」<br/>
「ダメだよ！　せっかくハルトくん誘ってくれたんだし行こうよ。アヤも行くし。ね、リリ！」<br/>
「う……ん」<br/>
「それに初ライブって１回しかないんだよ？　行かなかったらもったいないって」<br/>
　うーん、説得するにしても、もっとうまく言えたらいいのに……。<br/>
　あーあ、アタシの言葉って重みないな。<br/>
　同じようにリリも感じたみたいで、けれどそれがかえってよかったのかも。「アヤがそこまでいうなら」って、リリは行くって言ってくれたの。<br/>
　よかったー！<br/>
　ハルトくん、これは貸しだからね。ちゃんと借りは返してね。<br/>
　合コンに行ってたのも、リリには秘密にしておいてあげる。<br/>
　だからお願い。リリを元気にしてあげて！<br/>
<br/>
　――あとになって、思い知らされた。<br/>
　このときのアタシは、まるでわかってなかったんだね。<br/>
　ごめんね。<br/>
　あんたがそんなに追いつめられていたなんて、あの日まで、アタシぜんぜん気付いてあげられなかった。<br/>
</span>
<br />
<br />
　<span class="font_red">&#32;&#62;&#62;&#32;</span> 【<a href="http://www.cnovels.com/shortstory/noise05-03.html">noise Vol.05 - 05・06</a>】 に続く<br />
　<span class="font_red">&#32;&#62;&#62;&#32;</span> 【<a href="http://www.cnovels.com/shortstory/noise05-01.html">noise Vol.05 - 01・02</a>】 に戻る<br />
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<title>優しくきゅっと - noise Vol.05 - 01・02</title>
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<modified>2010-05-01T03:36:01Z</modified>
<issued>2009-10-03T07:50:13Z</issued>
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<summary type="text/plain"> 　　　１ 　白く息苦しい廊下を延々と歩き回ってやっと見つけた３０２号室。 　部屋に入ると、そこには包帯だらけの洋輔がいた。 　それを見て爆笑してしまう。 「なに笑ってんだてめぇ」 　洋輔がドスをきかせた声で言ってくる。 　だけどその声はさすがに弱々しくて、きいてたらさらにおかしくなって、ちょっと息をするのが苦しいくらいになって思わず「もうやめて」と言ってしまった。 「アヤ」 　名前を呼ばれて顔を...</summary>
<author>
<name>千歳</name>
<url>http://www.ckotoba.com/</url>
<email>ckotoba@gmail.com</email>
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<dc:subject>050_noise (バンド系恋愛小説)</dc:subject>
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<![CDATA[<span style="font-family:'ＭＳ Ｐ明朝','平成明朝',serif;">
　　　１<br/>
<br/>
　白く息苦しい廊下を延々と歩き回ってやっと見つけた３０２号室。<br/>
　部屋に入ると、そこには包帯だらけの洋輔がいた。<br/>
　それを見て爆笑してしまう。<br/>
「なに笑ってんだてめぇ」<br/>
　洋輔がドスをきかせた声で言ってくる。<br/>
　だけどその声はさすがに弱々しくて、きいてたらさらにおかしくなって、ちょっと息をするのが苦しいくらいになって思わず「もうやめて」と言ってしまった。<br/>
「アヤ」<br/>
　名前を呼ばれて顔をあげると、ニットのカーディガンを着た女の子がいた。リリだ。茶色いニットの下から花柄のワンピースがちょこっとのぞいててカワイイ。<br/>
　リリはアタシの親友で、洋輔のカノジョだ。<br/>
　ずっと前に来てたんだと思う。洋輔の寝ているベッドの隣で、パイプ椅子に座ってリンゴを剥いていた。<br/>
　けど、いまはその手を止めて、アタシのことをカワイイ目でじっと睨みつけている。<br/>
「いいかげんに笑うのやめてくれないと怒るから」<br/>
　リリの声はいつもと同じですごく優しかったけど、なんとなく迫力があって、アタシはしゅんとした。<br/>
　でもよかった、これ以上息できなかったらアタシ死んでたかもしれない。とか思いながら素直に謝る。<br/>
「……ごめんなさい」<br/>
「よし」<br/>
　よかった。リリからすんなり許してもらえたのでほっとする。<br/>
　だけど少しでも機嫌をとっておこうと、とびきりの笑顔を顔に貼りつけながら包帯だらけの洋輔に駆け寄った。　<br/>
「で、大丈夫なの、洋輔？　バイクで事故ったってきいたけど」<br/>
「おまえは人を心配するとき、いつも満面の笑みなのか？」<br/>
「あ、間違えた、ごめんね。いまから心配してる顔するから待ってて」<br/>
「もういいよ」<br/>
　と、ふてくされた顔をする洋輔。<br/>
　あら？　あらら？　なんか今日の洋輔、かわゆいんだけど！？<br/>
　洋輔から健康を取りあげたら、かわゆくなるのかしら？<br/>
　そんなことを考えながら、改めて洋輔のことを眺めてみる。<br/>
　洋輔はカラダ中が包帯だらけで、ミイラみたいだった。頭も胸も足もグルグル巻き。<br/>
　特に徹底的に包帯を巻かれてるのが左腕の肘から先で、それに気づいたとき、やっとここに駆け込んでくる直前までの気持ちを取り戻した。<br/>
「ねえ洋輔、あんた、大丈夫なの？　そんな……」<br/>
　そんなカラダで、ドラム叩けるの？<br/>
　そう言おうとして、苦しくなって言えなかった。<br/>
　洋輔は、アタシの大好きなバンド『BREATH』のドラマーだった。<br/>
　洋輔とオキとハルトくんのスリーピースバンドは完璧で、だから誰かひとりでも欠けているBREATHなんてアタシには考えられない。<br/>
「まあ、見てのとおりさ」<br/>
　洋輔は自分のカラダを一瞥した。<br/>
「俺は不死身だ」<br/>
「かわいそう……包帯だらけのカラダでそんなことゆうなんて、頭打っておかしくなっちゃったんだね」<br/>
「おまえ殺すぞ」<br/>
　俺は不死身だ、と同じイントネーションで言った洋輔は、舌打ちして続ける。<br/>
「医者が仰々しく巻いてるだけだよ。こんなもんでも患者に巻きつけとかねえと、治療した気になんねぇんだろヤツらは」<br/>
「洋輔くん……ダメだよそんなこと言っちゃ」<br/>
「そうよ。だいたいあんたなに考えてんのよ！」<br/>
　こみあげてきた怒りを、口の減らない洋輔に遠慮なくぶつけることにした。<br/>
「リリは繊細なんだからね！　心配しすぎて死んじゃったらどうすんの！」<br/>
「バイクでコケたくらいで心配しすぎなんだよ。見ての通り俺は健康そのもの……ッ！」<br/>
　元気なことを証明しようとするように左腕を動かそうとして顔をしかめる。<br/>
「洋輔くんダメだよ！　安静にしてなさいって、先生に言われてるでしょ？」<br/>
　やっぱり痛いんだ……洋輔の顔が苦痛にゆがむのを見て、心の中に絶望が流れ込んでくる。<br/>
　あ、ダメだ。<br/>
　直感する。<br/>
　アタシの大好きなバンド、きっとなくなっちゃう。<br/>
　洋輔と、オキとハルトくんのバンド。大好きな、完璧なスリーピースバンド。<br/>
　もう、３人の演奏は、きっときけないんだ。<br/>
　――なんでこのとき、そんなこと思っちゃったんだろう。<br/>
　アタシの中にはとてもネガティブな自分がいて、アタシはその子のことを『ダークアヤ』って呼んでるんだけど、ダークアヤはいまみたいにたまに顔を出したかと思うと、とても不吉な予言をしてゆく。<br/>
　そしてその嫌な予言は、絶対っていっていいほど当たっちゃうのだ。<br/>
　ダークアヤはどんどん嫌な予言を頭の中に流しこんできて、そのひとつひとつがものすごく絶望的なことに思えたアタシは、泣いてしまった。リリと洋輔をたくさん困らせたけど、なんで泣いたのかはふたりには話せなかった。<br/>
<br/>
　数日後、洋輔が退院した。<br/>
　洋輔はすぐにバンドに復帰したがったらしいけど、左腕のケガはやっぱりかなり深刻みたい。<br/>
　元のように動かせるようになるにはたくさんの時間とリハビリが必要になる。お医者さんからそう言われたと、リリが教えてくれた。<br/>
　だから、退院したら復帰するつもりだったライブを、洋輔はステージの外から眺めることになった。<br/>
　ドラムは、別のヒトがヘルプで叩いた。<br/>
　自分のいないBREATHのステージを、洋輔はどんな気持ちで見てたんだろう。<br/>
　アタシは、知らないヒトがBREATHのドラムを叩いていることに拒否反応が出て、気持ち悪くなって途中で帰ってきてしまった。<br/>
　けど、洋輔はずっと見てたらしい。<br/>
　そして、たぶんあのライブの日からだと思う。洋輔が変わったのは。<br/>
　以前の洋輔は太陽のようだった。みんなを引力で引っ張って照らし続ける、空のてっぺんに輝く王様。あの頃の洋輔はそんなだった。<br/>
　ドラムを失った洋輔は、以前の洋輔を太陽だとすると――そう、夜の新月みたいだった。鋭くて冷たくて危険。相手なんてお構いなしに、近づくヒトのことはみんな傷つけた。<br/>
　アタシは傷つきたくないから洋輔から距離をおくようにしたけど、バンドのメンバーのオキやハルトは、お互いをとても深く傷つけあって。<br/>
　そしてダークアヤの予言どおりに、バンドは解散してしまった。<br/>
<br/>
　　　２<br/>
<br/>
　バンドが解散してしばらく経ったある雨の日、アタシは買い物目的で渋谷に来ていた。<br/>
　公園通りに新しくできたお店で春物の服を選んでいると、リリから電話がかかってきた。<br/>
　休日、リリは渋谷とか下北沢にいることが多い。洋輔の家が下北沢にあるから、藤沢に住んでるリリは週末になると洋輔に会うためにこっちへやってくるのだ。<br/>
　あと、たまにウチに泊まりに来たりね。<br/>
　リリとアタシは同じ大学に通っていて、１年生のとき、最初の授業で隣同士になってからの付き合いだ。<br/>
　アタシたちは性格も、普段着てる服も、好きになる男のタイプも全然違うし、共通の趣味も音楽くらいしかないのに不思議ととても気が合う。知り合ってまだ２年だけど、まるで幼稚園の頃から知ってたみたいに信頼しあってるんだ。<br/>
　だから、休みの日とかにこうやって前ぶれなしにリリから電話があったりするのは結構よくあることだったので、いつもしてるみたいに、服を選びながらほとんど反射的に電話を取っていた。<br/>
「もしもしー？」<br/>
　いつもならすぐにリリの声がきこえてくるタイミングで、返事がない。<br/>
「……リリ、泣いてるの？」<br/>
「ごめんね、わたし――」<br/>
　そこまでききとれたけど、後はなに言ってるのか全然わかんない。<br/>
　けど、電話の奥からかすかに雨の音がしているから、外にいるのは間違いなさそうだった。<br/>
「ねえ、いまどこにいるの？」<br/>
　リリは下北沢にいた。じゃあやっぱり洋輔と会ってたんだってピンときて、そこからさらに暗い予感を感じてしまう。<br/>
　とにかく行かなきゃ！　アタシは、お会計寸前までいってた服をあきらめて駅に急いだ。<br/>
<br/>
「リリ！」<br/>
　下北沢で電車を降りて、リリからきいていた場所に向かうと、路地の隅で、雨の中傘も差さずにうずくまっている女の子がいた。<br/>
　顔は見えなかったけど、その子がリリだってことはすぐわかった。３月の冷たい雨に打たれるままのコートが、リリのお気に入りの春色のコートだったし、濡れてほっぺたに張り付いてる髪の間から見える耳の形もリリと同じだったから。いっしょに買ったおそろいのピアスをしていたから。<br/>
「リリ、どうしたの、傘くらい差しなよ！？」<br/>
　開かれたまま、雨からなんにも守らずに転がっている傘は男物だった。もしかして洋輔の？<br/>
　急いで自分の傘でリリを守りながら、そばに同じようにうずくまる。<br/>
　冷たくなった両手は神様にお祈りしてるみたいに口元の前でにぎられていて、ブルブルと震えてた。アタシはその手をにぎり締めた。そしてもう片方の手でリリを抱きしめる。持っていた傘は、洋輔の傘と同じように転がった。<br/>
「……どうして？」<br/>
　どうしてこうなるんだろう。<br/>
　去年の１１月。３０２号室。<br/>
　洋輔のお見舞いにいった日に、とてもネガティブなアタシが予言したこと。<br/>
　バンドの解散。<br/>
　洋輔とリリの別れ。<br/>
　どうして黒いアタシは、こんなことまでしっかり予言してしまうんだろう。<br/>
「洋輔くんに、フラれちゃった」<br/>
　震えた声で、リリが報告した。<br/>
「うん」<br/>
　リリを抱きしめていた手を、小さな頭に添え直す。<br/>
「あのね、すごく悲しいこと言われたの」<br/>
「うん」<br/>
「なんでだろ？　好きなのに――わたし」<br/>
「ごめんね、リリ」<br/>
　リリが怪訝そうな顔をする。<br/>
「なんでアヤが謝るの？」<br/>
「アタシね、なんとなくこうなるんじゃないかって気がしてたの。だって洋輔は――」<br/>
　アタシはあのとき病室で思っていたことを正直に話した。<br/>
　だって洋輔は、あんなにBREATHのことが大好きで、なによりもドラムのことを愛していたから。<br/>
　ドラムを失ってしまった洋輔は、他のすべてのことを、ヒトを、拒否する気がしていた。<br/>
「なんだ、そんなこと」<br/>
　リリは泣き笑いみたいな顔で言った。<br/>
「だったらわたしも同じようなこと考えてたよ。洋輔くん、そんなヒトだもん、ね」<br/>
「……そうなの？」<br/>
「うん。――あのね、アヤの言うとおりだよ。左腕、ひどいケガなの。あんな大きなケガしてて、すぐにまたドラム叩けるようになるわけないもん。お医者さんも、真面目にリハビリしても１年後にお茶碗が持てるようになるかどうかって言ってたし」<br/>
　１年後にお茶碗って……想像していた以上のひどいケガに、アタシは震えた。<br/>
「そう、だったんだ」<br/>
「大好きなドラムを叩けなくなった洋輔くんのこと、あのときのわたしには想像なんてできなかった」<br/>
　けどいまは違う。ドラムを叩けなくなった洋輔を、リリはいつもいちばん近くで見ていたはずだった。<br/>
「なにがあっても、洋輔くんの支えになろうって決めてた」<br/>
　苦しそうに息を吐く。<br/>
「けど、ダメだった」<br/>
　雨に濡れたリリは、それでも泣いてるんだとわかるような大粒の涙を目から零れさせた。<br/>
「いっしょうけんめいそばにいようとしたけど、ダメだったんだ」<br/>
　それ以上なにも言えず、リリは声を殺して泣き続ける。<br/>
　額をくっつけるようにして、アタシも少しだけ泣いた。<br/>
　ちょっとデリカシーがないけど気のいいやつだった洋輔は変わってしまい、大好きなバンドはなくなってしまった。<br/>
　リリは大好きな人とお別れして、こんなにも傷ついている。<br/>
　こんなときにアタシの頭の中を、もうなくなってしまったバンドのあの曲が流れる。<br/>
<br/>
『Happy daily like a dream』<br/>
<br/>
　子守歌のように、その歌を歌ってみた。<br/>
<br/>
『There's just "two" of the world<br/>
　なんとなく　いつか叶うんじゃないかって思っていた夢を<br/>
　キミは他の誰かと　知らないうちに見ていたんだね』<br/>
<br/>
　洋輔のシンバルの音が、とても優しく頭に鳴り響く。<br/>
　続きは歌わない。この歌はアタシたちの大好きな歌だったから。<br/>
　続きはきっと、ふたりの頭の中で勝手に流れるの。<br/>
<br/>
『冷たくて持てない<br/>
　わがままをいうこの子のために<br/>
　ボクは缶コーヒーを両手で暖めてあげた<br/>
　キミは少しだけぬるくなったコーヒーを手に持って　ニッコリと微笑む<br/>
<br/>
　そしてふたり並んで歩くんだ<br/>
　ボクの冷たい心が　手から伝わらないように<br/>
　缶コーヒーで冷えた両手を　ポケットで暖めながら』<br/>
<br/>
「アヤの手、あったかいね」<br/>
　リリがアタシの左手をキュッてしてきた。にぎり返す。<br/>
　雨は相変わらず冷たいけれど、少し優しくなって霧のように私たちに降り注いでいる。<br/>
　もうあんな男のことなんて忘れちゃえばいいんだ。<br/>
　他の男なんて、探せばきっとすぐに見つかる。リリくらいかわいければ、ぜったい大丈夫だから。<br/>
　だからそんなに泣かないで、リリ。<br/>
「リリ、もう帰ろう？　アタシんちおいでよ。カラダあっためないと風邪ひいちゃうよ。ね、いっしょにお風呂はいろう」<br/>
「……うん。けど、今日は彼氏来てないの？」<br/>
「実は先週別れちゃったんだ」<br/>
「……そうなんだ。すごいタイミング」<br/>
「うん。だから似たものどうし、今日はうちで語ろうよ」<br/>
　ホントは、これから新しい彼氏と会う約束があったんだけどね。<br/>
　彼氏には悪いけど、そっちはキャンセルしようっと。<br/>
　うずくまっていたリリになんとか立ってもらい、アタシの傘にふたりで入って歩き出す。<br/>
　歌は、頭の中でずっと続いている。<br/>
　アタシたちが大好きだったバンドの、いまはもう演奏されない優しい歌。<br/>
<br/>
『そしてふたり並んで歩くんだ<br/>
　ボクの冷たい心が　手から伝わらないように<br/>
　缶コーヒーを持ってたほうで　キミの手をにぎりながら』<br/>
<br/>
　――けっきょくリリは、この日を境にあまり笑わない女の子になってしまった。<br/>
　甘えん坊で、寂しがりやで、いつも笑っていたリリ。<br/>
　いま思えば、洋輔がドラムを失って人が変わってしまったみたいに、リリもこのことをきっかけにして、どこか変わってしまったのかもしれなかった。<br/>
</span>
<br />
<br />
　<span class="font_red">&#32;&#62;&#62;&#32;</span> 【<a href="http://www.cnovels.com/shortstory/noise05-02.html">noise Vol.05 - 03・04</a>】 に続く<br />
　<span class="font_red">&#32;&#62;&#62;&#32;</span> 【<a href="http://www.cnovels.com/shortstory/lovesong2.html">noise Vol.04 - 後編</a>】 に戻る<br />]]>

</content>
</entry>

<entry>
<title>短歌 ドラクエ９短歌</title>
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<modified>2010-10-24T17:53:01Z</modified>
<issued>2009-07-20T15:00:00Z</issued>
<id>tag:www.cnovels.com,2009://2.18560</id>
<created>2009-07-20T15:00:00Z</created>
<summary type="text/plain"> 楽しみに待っていたのにまた延期　誰か私にベホマをかけて 今度こそ延期はないと信じつつＤＳ買ったぜ勇者になるぜ 透明で浮遊中でも大抵のことはできるが壺が割れない 違和感を持たないはずがない　だって光り輝くうまのふんだよ？ 割ることができないでいた壺を割る　その代償に翼をなくした パーティーは一人男子で他はみな女子で組むのが旅の醍醐味 ショートよりやはりロングか　なら色は？　悩み続けるルイーダの酒場...</summary>
<author>
<name>千歳</name>
<url>http://www.ckotoba.com/</url>
<email>ckotoba@gmail.com</email>
</author>
<dc:subject>110_短歌</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.cnovels.com/">
<![CDATA[<span style="font-family:'ＭＳ Ｐ明朝','平成明朝',serif;">
<br />
楽しみに待っていたのにまた延期　誰か私にベホマをかけて<br />
<br />
<br />
今度こそ延期はないと信じつつＤＳ買ったぜ勇者になるぜ<br />
<br />
<br />
透明で浮遊中でも大抵のことはできるが壺が割れない<br />
<br />
<br />
違和感を持たないはずがない　だって光り輝くうまのふんだよ？<br />
<br />
<br />
割ることができないでいた壺を割る　その代償に翼をなくした<br />
<br />
<br />
パーティーは一人男子で他はみな女子で組むのが旅の醍醐味<br />
<br />
<br />
ショートよりやはりロングか　なら色は？　悩み続けるルイーダの酒場<br />
<br />
<br />
出入りが自由な乙女の沐浴場　男にしててとても良かった<br />
<br />
<br />
いいなそれ錬金したの？　すれ違い通信で会う夏の装い<br />
<br />
<br />
サンディがバタバタさせる両腕が高速すぎて目で追えません<br />
</span>]]>

</content>
</entry>

<entry>
<title>短歌 0026 - 0030</title>
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<issued>2009-02-11T15:00:00Z</issued>
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<created>2009-02-11T15:00:00Z</created>
<summary type="text/plain">三十一文字の作品集。</summary>
<author>
<name>千歳</name>
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<email>ckotoba@gmail.com</email>
</author>
<dc:subject>110_短歌</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.cnovels.com/">
<![CDATA[<br />
[0030] 2009/02/12<br />
お隣の子犬の声が聞こえると思っていたがどうやら違う<br />
<br />
<br />
[0029] 2009/02/11<br />
仕事終えスーパを出た道の先　東京タワーがきれいだった<br />
<br />
<br />
[0028] 2009/02/10<br />
僕の背に翼はないがそれでいい　あればあったでたぶん邪魔だし<br />
<br />
<br />
[0027] 2009/02/09<br />
息をして食べて寝るだけでは少し足りない生きる理由も価値も<br />
<br />
<br />
[0026] 2009/02/07<br />
淋しさを隠し笑顔でいたことに気付かないふりして手を振った<br />
<br />
]]>

</content>
</entry>

<entry>
<title>短歌 0021 - 0025</title>
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<modified>2010-10-24T13:25:03Z</modified>
<issued>2009-02-03T15:00:00Z</issued>
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<summary type="text/plain">三十一文字の作品集。</summary>
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<name>千歳</name>
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<dc:subject>110_短歌</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.cnovels.com/">
<![CDATA[<br />
[0025] 2009/02/04<br />
変わりない日常だった　あの風の強さに怯え立ち尽くすまで<br />
<br />
<br />
[0024] 2009/02/02<br />
憎しみを込めて自分の影を踏む　痛みも意味も何もないけど<br />
<br />
<br />
[0023] 2009/01/31<br />
手が冷えるけど手袋は使わない　だってあいつにメール送るし<br />
<br />
<br />
[0022] 2009/01/30<br />
誰なのかわかんないけど消しちゃだめ　思い出さなきゃまずい気がする<br />
<br />
<br />
[0021] 2009/01/29<br />
この人もこいつも誰かわからない　登録をした記憶さえない<br />
<br />]]>

</content>
</entry>

<entry>
<title>短歌 0016 - 0020</title>
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<modified>2010-10-24T13:22:05Z</modified>
<issued>2009-01-27T15:00:00Z</issued>
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<summary type="text/plain">三十一文字の作品集。</summary>
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<name>千歳</name>
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<dc:subject>110_短歌</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.cnovels.com/">
<![CDATA[<br />
[0020] 2009/01/28<br />
ＳとＭどっちと聞かれＳと言う　だけどどっちもあるかもしれない<br />
<br />
<br />
[0019] 2009/01/27<br />
あなたのね　声聞いてたらあの頃に戻りたくなる　だから切らせて<br />
<br />
<br />
[0018] 2009/01/26<br />
息できず助けてくれた父に問う　海の中って息できないの？<br />
<br />
<br />
[0017] 2009/01/24<br />
ずっと前忘れた君の感触を思い出せたら　たぶん淋しい<br />
<br />
<br />
[0016] 2009/01/20<br />
友達がなぜか彼女を教えない　別にいいけどわけを教えろ<br />
<br />
]]>

</content>
</entry>

<entry>
<title>短歌 0011 - 0015</title>
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<modified>2010-10-24T13:18:17Z</modified>
<issued>2009-01-16T15:00:00Z</issued>
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<created>2009-01-16T15:00:00Z</created>
<summary type="text/plain">三十一文字の作品集。</summary>
<author>
<name>千歳</name>
<url>http://www.ckotoba.com/</url>
<email>ckotoba@gmail.com</email>
</author>
<dc:subject>110_短歌</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.cnovels.com/">
<![CDATA[<br />
[0015] 2009/01/19<br />
あの人の一面だけを掘り下げて作った像に価値はなかった<br />
<br />
<br />
[0014] 2009/01/18<br />
二日酔い　または寝過ぎか風邪なのか　どれもありえる頭が痛い<br />
<br />
<br />
[0013] 2009/01/17<br />
料理とかめんどくさいし　寒いのは辛いしいいや起きるのやめた<br />
<br />
<br />
[0012] 2008/01/28<br />
今あいつどうしてるかな　暖かい部屋で誰かと笑ってるかな<br />
<br />
<br />
[0011] 2008/01/01<br />
もうずっと会えてないけど今年とか会えそうな気が少ししている<br />
<br />]]>

</content>
</entry>

<entry>
<title>短歌 0006 - 0010</title>
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<modified>2010-10-24T13:15:09Z</modified>
<issued>2007-12-21T15:00:00Z</issued>
<id>tag:www.cnovels.com,2007://2.18577</id>
<created>2007-12-21T15:00:00Z</created>
<summary type="text/plain">三十一文字の作品集。</summary>
<author>
<name>千歳</name>
<url>http://www.ckotoba.com/</url>
<email>ckotoba@gmail.com</email>
</author>
<dc:subject>110_短歌</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.cnovels.com/">
<![CDATA[<br />
[0010] 2007/12/22<br />
イチョウ落ち　敷き詰められて日を浴びて輝く　そうだ　お金が欲しい<br />
<br />
<br />
[0009] 2007/12/21<br />
酒飲んだ帰りゲロ見て自己暗示　あれはもんじゃで食べるとうまい<br />
<br />
<br />
[0008] 2007/12/19<br />
来る年を迎えるための出費とか　迎えた後のメタボなどとか<br />
<br />
<br />
[0007] 2007/12/15<br />
寒いのは苦手だけれど待っている　あいつの好きな雪が降るのを<br />
<br />
<br />
[0006] 2007/12/07<br />
スーツ着る暮らしの中で　気がつけば手の届かない空見上げてる <br />
<br />]]>

</content>
</entry>

<entry>
<title>グルオフ第08回 焼肉くにもとで忘年会開催のお知らせ</title>
<link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.cdailylife.com/gourmet/2007-12-21.html" />
<modified>2008-01-14T14:47:24Z</modified>
<issued>2007-12-21T07:08:06Z</issued>
<id>tag:www.cdailylife.com,2007://9.18556</id>
<created>2007-12-21T07:08:06Z</created>
<summary type="text/plain"> 　寒い寒い(*_*)　寒い中【 焼肉くにもと 】で忘年会を開催します(^O^) 　忘年会か新年会を開催しよう。 　けど場所はどこにしよう(・ω・) 　とずっと悩んでいたのですが、尚さんの日記でくにもとに行きたいという声があがっていたので、思い切ってお深いにはちょっぴり敷居の高いくにもとで開催することにしました！ 　さて、くにもとは人気店のため、大人数で開催することが難しいという弱点があります。 ...</summary>
<author>
<name>千歳</name>
<url>http://www.ckotoba.com/</url>
<email>ckotoba@gmail.com</email>
</author>
<dc:subject>200_グルメ</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.cdailylife.com/">
<![CDATA[<!-- autolink content -->
　寒い寒い(*_*)　寒い中【 焼肉くにもと 】で忘年会を開催します(^O^)<br />
<br />
　忘年会か新年会を開催しよう。<br />
　けど場所はどこにしよう(・ω・)<br />
　とずっと悩んでいたのですが、尚さんの日記でくにもとに行きたいという声があがっていたので、思い切ってお深いにはちょっぴり敷居の高いくにもとで開催することにしました！<br />
<br />
　さて、くにもとは人気店のため、大人数で開催することが難しいという弱点があります。<br />
　というわけで、今回の忘年会の定員は、私を含めて6名と限らせていただきますので何卒ご容赦くださいm(__)m<br />
<br />
　以下、詳細です。<br />
<br />
<br />
■集合時間：19:15<br />
■集合場所：浜松町駅 南口出口付近<br />
■入店時間：19:30<br />
<br />
■店名：焼肉くにもと本店<br />
■住所：〒105-0013　東京都港区浜松町2-12-2<br />
■電話：03-3578-1129<br />
■公式サイト：<a href="http://www.8929kunimoto.com/">http://www.8929kunimoto.com/</a><br />
<br />
<br />
　以上です。<br />
<br />
<br />
　予約は19:30にしたのですが、ここは時間に遅れて入店することに非常に厳しいので、浜松町駅での集合は少し早めに19:15にします。<br />
　早めにくにもとについたら、早めに入れてもらえないか交渉しましょう(^^)<br>
　なお、くにもとは予約や集まりのルールがとてもしっかりとしているお店です。<br />
　たとえば一人だけ遅れてきたとしても、その人は入店ができません。<br />
　外で待っていたり、あきらめて帰ったりした人たちに対して、そうでないと申し訳が立たないというのがその主な理由のようです。<br />
<br />
　なので、集合時間はくれぐれも厳守でお願いします。当日どうしてもこれない場合などは、早めに連絡ください。<br />
<br />
<br />
　<span class="font_red">&#32;&#62;&#62;&#32;</span>【 <a href="http://www.8929kunimoto.com/gaidobook.htm" target="_blank">予約の際のルール詳細</a> 】<br />
<br />
<br />
◆参加方法について<br />
　参加希望者は、以下のいずれかで参加を表明してください。<br />
<br />
1.　この記事に、参加希望のコメントを入れる。 <br />
2.　<a href="http://www.ckotoba.com/contact/contact.html" target="_blank">http://www.ckotoba.com/contact/contact.html</a><br />
　　を使って、私まで直接メールを送る。<br />
3.　【 B級グルメSNS 】に登録されている方は、<br />
　　【 がっつり同盟 】内のイベント【 焼肉くにもとで忘年会開催！ 2007.12 】<br />
　　でイベントに参加する。<br />
<br />
　以上です。<br />
　参加受付の締め切りは 12/26 24：00 とさせていただきます。<br />
　尚、12/20 現在、参加者は私、尚（Ｎ＠Ｏ）之さん 、よしはるさん 、卓さん の、総勢 4 名となっております。<br />
<br />
<br />
それでは忘年会へのご参加をお待ちしております(^^)<br />]]>

</content>
</entry>

<entry>
<title>歌集 きよしとよしこの夜</title>
<link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.cnovels.com/ks/ky.html" />
<modified>2010-10-24T17:48:39Z</modified>
<issued>2007-12-17T12:06:52Z</issued>
<id>tag:www.cnovels.com,2007://2.18551</id>
<created>2007-12-17T12:06:52Z</created>
<summary type="text/plain">12月。女の子に一目ぼれした男の子が、クリスマスにかこつけてなんとか女の子のハートを射止めようと奮闘する様子を詠んだ連作短歌。</summary>
<author>
<name>千歳</name>
<url>http://www.ckotoba.com/</url>
<email>ckotoba@gmail.com</email>
</author>
<dc:subject>110_短歌</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.cnovels.com/">
<![CDATA[<span style="font-family:'ＭＳ Ｐ明朝','平成明朝',serif;">
<br />
突然の出会いに電気突き抜けた　誘ってみよう12月だし<br />
<br />
<br />
徹夜して考えた言葉君に言う　「僕と今度のクリチュマ・・・」噛んだ<br />
<br />
<br />
クリスマス　興味はないと断られ　僕のツリーは電気のムダか<br />
<br />
<br />
そんなにもジングルベルが嫌いなら　それじゃあええと初日の出とか<br />
<br />
<br />
嬉し泣き　イヴに二人で会えるから　初めて君の笑顔見たから<br />
<br />
<br />
街に咲くネオンはきれい　けど華は君だけでいい　会えて思った<br />
<br />
<br />
君の手を握ろうとして失敗し　携帯握りサンタ写メった<br />
<br />
<br />
十二時の鐘の音の中抱きしめた　聞こえる？　僕の胸の早鐘<br />
<br />
<br />
その笑顔　愛かそれともこの顔にくっきりついた手形を見てか<br />
<br />
<br />
聖なる日　生まれた気持ちまっすぐに伝えた君の返事はイエス<br />
</span>]]>

</content>
</entry>

<entry>
<title>短歌始めました</title>
<link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.cdailylife.com/life/2007-12-12.html" />
<modified>2008-02-14T05:35:10Z</modified>
<issued>2007-12-12T05:56:42Z</issued>
<id>tag:www.cdailylife.com,2007://9.18550</id>
<created>2007-12-12T05:56:42Z</created>
<summary type="text/plain">　最近なぜか短歌に凝ってます。 　五七五七七　で読むあれですね。 　短歌の知識はまるでないので、短歌として成立しているかどうかさえいまいち自信がないのですが、まあ新しい表現の形ということで、見守ってくださればと思います。 　そんなわけで、早速初の連作短歌を公開しましたのでよかったらご覧ください。 　知り合いのうちの犬をヒントに、歌にしました。 　5分もかからずお読みいただけると思うので、ぜひぜひ。...</summary>
<author>
<name>千歳</name>
<url>http://www.ckotoba.com/</url>
<email>ckotoba@gmail.com</email>
</author>
<dc:subject>100_日常</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.cdailylife.com/">
<![CDATA[　最近なぜか短歌に凝ってます。<br />
　五七五七七　で読むあれですね。<br />
　短歌の知識はまるでないので、短歌として成立しているかどうかさえいまいち自信がないのですが、まあ新しい表現の形ということで、見守ってくださればと思います。<br />
<br />
　そんなわけで、早速初の連作短歌を公開しましたのでよかったらご覧ください。<br />
　知り合いのうちの犬をヒントに、歌にしました。<br />
　5分もかからずお読みいただけると思うので、ぜひぜひ。<br />
<br />
　<span class="font_red">&#32;&#62;&#62;&#32;</span>【 <a href="http://www.cnovels.com/ks/hanatyan.html">ハナちゃん</a> 】<br />]]>

</content>
</entry>

<entry>
<title>歌集 ハナちゃん</title>
<link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.cnovels.com/ks/hanatyan.html" />
<modified>2010-10-24T17:48:15Z</modified>
<issued>2007-12-12T05:47:26Z</issued>
<id>tag:www.cnovels.com,2007://2.18549</id>
<created>2007-12-12T05:47:26Z</created>
<summary type="text/plain">真っ白でフワフワな犬、ハナちゃんを詠んだ連作短歌。</summary>
<author>
<name>千歳</name>
<url>http://www.ckotoba.com/</url>
<email>ckotoba@gmail.com</email>
</author>
<dc:subject>110_短歌</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.cnovels.com/">
<![CDATA[<span style="font-family:'ＭＳ Ｐ明朝','平成明朝',serif;">
<br />
飼い犬がどっかの野良に犯されて　５匹の子犬が生まれました<br />
<br />
<br />
「父親はどこの野良だ」と怒り込めながら子犬を優しく抱いた<br />
<br />
<br />
町中が大浸水の片すみで　溺れた犬の鳴き声さがす<br />
<br />
<br />
洪水で一匹だけが生き残り　白い子犬にハナと名付けた<br />
<br />
<br />
子犬連れ　今日も野原でボール投げ　三時間後に嫁が怒った<br />
<br />
<br />
「できちゃった」突然なにを言い出すの　戸惑いながら子犬と遊ぶ<br />
<br />
<br />
パパとしてあるべき姿勢模索中　立った息子に涙流した<br />
<br />
<br />
あれこいつこんな色した犬だっけ　そうだしばらく洗ってないや<br />
<br />
<br />
「パパ」「ママ」と　言葉覚えたわが息子　飼い犬ハナを指差し「クサイ」<br />
<br />
<br />
尻尾振り　去る俺見つめ「次はいつ来てくれるの」とワオンと鳴いた<br />
<br />
<br />
悪いとは思うけど今忙しい　春にはきっと野原に行こう<br />
<br />
<br />
お日様と草の匂いのする野原　あの人がいた夢を見ていた<br />
<br />
<br />
もう少し前にしてたらよかったと動かぬ体ただ抱きしめた<br />
</span>
]]>

</content>
</entry>

<entry>
<title>短歌 0001 - 0005</title>
<link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.cnovels.com/ks/tk0001.html" />
<modified>2010-10-24T13:11:39Z</modified>
<issued>2007-12-05T15:00:00Z</issued>
<id>tag:www.cnovels.com,2007://2.18557</id>
<created>2007-12-05T15:00:00Z</created>
<summary type="text/plain">三十一文字の作品集。</summary>
<author>
<name>千歳</name>
<url>http://www.ckotoba.com/</url>
<email>ckotoba@gmail.com</email>
</author>
<dc:subject>110_短歌</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.cnovels.com/">
<![CDATA[<br />
[0005] 2007/12/06<br />
ふかふかの彼女がくれたマフラーは　優しく絞める毛糸の首輪<br />
<br />
<br />
[0004] 2007/12/05<br />
過去の傷　心に痛み残すより　優しい気持ち残していたい<br />
<br />
<br />
[0003] 2007/12/02<br />
行き過ぎて慌てて降りた次の駅　見知らぬ場所はやけに静かで<br />
<br />
<br />
[0002] 2007/11/21<br />
ふるさとの朝の光がまぶしくて　目を細めたらあの日に還る<br />
<br />
<br />
[0001] 2007/11/20<br />
かえりたい故郷ではない　失ってばかりいたからあのころぼくは<br />]]>

</content>
</entry>

<entry>
<title>長男が誕生。そのとき両親は？</title>
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<modified>2007-11-26T16:08:00Z</modified>
<issued>2007-11-26T14:40:23Z</issued>
<id>tag:www.netaripo.com,2007://4.18547</id>
<created>2007-11-26T14:40:23Z</created>
<summary type="text/plain">私がこの世に生を受けたとき、父が考えた私の名前。</summary>
<author>
<name>千歳</name>
<url>http://www.ckotoba.com/</url>
<email>ckotoba@gmail.com</email>
</author>
<dc:subject>100_日常編</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.netaripo.com/">
<![CDATA[　どうも、千歳です。<br />
　早速ですが<a href="http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/106032" target="_blank">辻ちゃんが女児を出産</a>されたそうですね。<br />
　名前は「希空（のあ）」ちゃんとのこと。どうやってこれを「のあ」と読むのか不思議ですが、それはそれ、まあめでたいことです。<br />
<br />
<!--転載-->
<div class="tensai01_01"><div class="tensai01_02">
<strong>辻ちゃん女児出産　名前は「希空（のあ）」ちゃん</strong><br>
<p>　元モーニング娘。の辻希美（２０）が２６日、夫の俳優、杉浦太陽（２６）との第一子を出産したことがわかった。<br />
　所属事務所が杉浦・辻連名のコメントとともにマスコミ各社にファクスで報告。所属事務所によると、辻は２６日の午前０時４５分に女の子を出産、母子ともに健康で産後の経過も良好という。<br />
　また、杉浦は女児の名前を「希空（のあ）」と命名したことも明らかにした。<br />
</p>
<div class="tensai01_03"><a href="http://www.iza.ne.jp/" target="_blank">イザ！</a> より転載</div>
</div></div>
<!--転載-->
<br />
　ところでそのニュースで思い出したのですが、私がこの世に生を受けたときも、両親が私になんて名前をつけようかと結構悩んだそうです。<br />
　といっても、うちの父はのほほんとしているので、主には母が悩んでいたようですが。<br />
<br />
　母が悩みぬいている中、あまりにも父がのほほんとしているので、ムッとした母が父に<strong>「あなたもなにか考えてよ！」</strong>と、強く要求したとのこと。<br />
<br />
<strong>「…………」</strong><br />
<br />
　基本無口な父は、言われるがまま、無言で精一杯、<strong>長男</strong>の名前を考え始めたそうな。<br />
　しばらく時間が経って、父はおもむろに口を開きました。<br />
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<div align="center"><span class="font_200"><strong>「……三吉（さんきち）」</strong></span></div>
<br />
<br />
<br />
<span class="font_160">　……お父さん？</span><br />
]]>

</content>
</entry>

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<title>ラブソング - noise Vol.04 - 後編</title>
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<modified>2010-05-01T03:37:10Z</modified>
<issued>2007-07-15T17:00:04Z</issued>
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<created>2007-07-15T17:00:04Z</created>
<summary type="text/plain"> 　　　４ 　下北沢のライブから２週間が経った。 　今日は貸しスタジオで練習する日だった。次のライブも４日後に控えているし、みな追い込みの気分で、それなりに一生懸命練習している。 　２時間くらいぶっ通しで練習して、少し休憩をとることにした。 「オキ、今日練習終わったら飲みに行かない？」 　タバコを吸っていると、シンがそう提案してきて驚いた。 「珍しいな。おまえが飲みに誘ってくるなんて。酒苦手じゃな...</summary>
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<name>千歳</name>
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<email>ckotoba@gmail.com</email>
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<dc:subject>050_noise (バンド系恋愛小説)</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.cnovels.com/">
<![CDATA[<span style="font-family:'ＭＳ Ｐ明朝','平成明朝',serif;">
　　　４<br/>
<br/>
　下北沢のライブから２週間が経った。<br/>
　今日は貸しスタジオで練習する日だった。次のライブも４日後に控えているし、みな追い込みの気分で、それなりに一生懸命練習している。<br/>
　２時間くらいぶっ通しで練習して、少し休憩をとることにした。<br/>
「オキ、今日練習終わったら飲みに行かない？」<br/>
　タバコを吸っていると、シンがそう提案してきて驚いた。<br/>
「珍しいな。おまえが飲みに誘ってくるなんて。酒苦手じゃなかったっけ？」<br/>
「最近よく飲むんだ。ちょっとは強くなってきたよ」<br/>
　まじまじと俺はシンを見る。<br/>
「なんかあったのか？」<br/>
「うーん、まあ、ちょっとね」<br/>
　思っていることをいつもためらわず言うシンにしては、それは珍しいくらい歯切れの悪い答えだった。<br/>
<br/>
　練習の後、貸しスタジオの近所にある居酒屋に、シンとふたりで入った。<br/>
「おつかれ乾杯！」<br/>
　シンがそう言い、俺たちは音を立てて乾杯した。<br/>
　シンはしばらくバンドの話とか最近ちょっかいを出している女の話とかを大して身の入らない様子でずっと喋っていたが、レモンサワーを２杯も飲んだところで、これ以上酔うとまともに話が出来なくなるとでも思ったんだろう。ようやく本題に入ってきた。<br/>
「最近、アヤと連絡が取れないんだ」<br/>
「そうなのか？」<br/>
「うん。メールしても返事返ってこないし、電話しても出てくれない。ほら、下北沢のライブの後からだよ。僕、なんかアヤを怒らせることしちゃったのかなあ。――オキ、アヤからなんか聞いてない？」<br/>
「……なんで俺に聞くんだ？」<br/>
「オキとアヤ、結構仲いいじゃん。知ってるよ僕は。アヤはなんでもオキに相談するんだ」<br/>
「悪いな、俺のほうにも特に連絡は来てないよ」<br/>
「そうかあ」<br/>
　シンは仕方なさそうに笑った。<br/>
　アヤからなにも連絡が来てないのは本当だった。だけど、俺はアヤがシンからのメールや電話を無視する理由をたぶん知っていた。<br/>
　どう考えてもあの下北沢での打ち上げの時、シンが優里さんを見た、あの熱すぎる視線が原因だろう。<br/>
　アヤは知ってしまったんだ。シンが本当は、誰のことを好きなのかということを。<br/>
「やっぱり、アヤに振られちゃったのかなぁ」<br/>
　ため息をつきながらそう言うシンに俺はわざと明るい声で言った。<br/>
「別に女はアヤだけじゃないだろ？　特におまえの場合はさ。さっきも別の女の話を楽しそうにしてたじゃんか」<br/>
「そうだけど……けどどうしたのかな。どうもダメみたいなんだ。この前も、最近知り合った女の子とエッチしたんだけど、夢中になれないの。昨日も別の子で試してみたけどダメだった。気持ちよくないんだ。ていうかむしろ痛いんだ。ここがさ」<br/>
　胸を押さえて、シンは寂しそうに笑った。<br/>
「――僕、アヤ以外の女の子とはしたくないみたい。だからエッチの代わりに酒に溺れようと思ってさ。だからここんとこ、お酒ばかり飲んでる」<br/>
　俺は頭が痛くなった。飲みすぎのせいとかでは全然なく。<br/>
「おまえが優里さんのことを好きなのは知ってるぜ。何年も前におまえから聞いたからな。ようは、アヤは優里さんの代わりだったんだろ？　アヤにも、付き合い始める前に言ったんだよな。アヤのことは好きだけど、あ、愛せないって」<br/>
　愛せない、って部分を口にするときに恥ずかしさのあまりどもってしまう。こんな恥ずかしい言葉を、女を目の前にしてる時以外に言う羽目になるとは思わなかった。<br/>
「オキはやっぱりなんでも知ってるなあ」<br/>
　エヘヘと笑いながらシンは言う。笑ってる場合じゃないっての！<br/>
「うん。アヤには付き合う前にちゃんと言ったよ。好きだけど愛せない。僕には他にいちばん好きな人がいるんだって。優里のことが好きなんだとは、さすがに言ってないけど」<br/>
　シンは自分の姉のことを、たいてい優里と呼び捨てにする。<br/>
「今はどうなんだ？」<br/>
　この際、単刀直入に俺は聞くことにした。<br/>
「今もアヤのことは――その、愛してないのか？　優里さんのことだけを、おまえは愛してるのか？」<br/>
「わかんない」<br/>
　俺に何度も恥ずかしい言葉を言わせながら、シンは全く俺の期待に応えない返事をした。ムカムカムカ。俺はいい加減腹が立ってきた。<br/>
　さすがにそんな曖昧な言葉では俺が納得しないと気づいたんだろう。シンは慌てて言葉を続ける。<br/>
「優里のことは今でもいちばん好きなんだと思う。もうずっと好きでいすぎて、体の一部になっちゃったみたいに。優里のことが好きだって気持ちは、それくらい僕にとっては自然な気持ちなんだよ。けどさ、アヤのことは正直よくわかんないんだ。アヤは僕にとって、とても大事な女の子だと思う。一緒にいると楽しいんだ。エッチしてると、その間は優里のことも完全に忘れられるくらいアヤに夢中になるし。好きだよアヤのこと。けどさ、やっぱり僕は優里のことを愛してるし、アヤへの気持ちはそれとは違うんだ」<br/>
　俺はため息をついて、今の心境を正直に口にした。<br/>
「……おまえの言うことは、俺にはややこし過ぎて、よくわからん」<br/>
「僕にもよくわからないんだよ」<br/>
　困ったように言いいながら、３杯目のレモンサワーを飲む。<br/>
「けどな、アヤのことをおまえがどれだけ必要としているか、それならよくわかってる」<br/>
「え、本当に？」<br/>
「ああ、じゃないとあんな歌、作れねえよ」<br/>
<br/>
　次の日、俺はアヤの携帯電話に電話した。<br/>
『はい』<br/>
「なんでシンに連絡しないんだ？」<br/>
『……オキには関係ないでしょ』<br/>
　関係ないだと！？　誰のおかげで、昨日あっけなく酔いつぶれたシンを介抱する羽目になったと思ってんだ！<br/>
「本当に、関係ないと思うのか？」<br/>
　沈黙。アヤは泣きそうな声で言った。<br/>
『もうイヤになっちゃったの。アヤね、シンくんのこと、心のどっかで期待してたんだと思う。いつかアヤのことをいちばん好きになってくれるんじゃないかって。けどもう無理！　だって――！』<br/>
　そっから先は声にならないようだった。電話の向こうで、アヤは泣き続ける。<br/>
　どれくらい経っただろう。ようやくアヤが多少落ち着いたのを見計らって、俺は言った。<br/>
「３日後のライブには、絶対来いよ」<br/>
『やだ。もう行かない。決めたの。シンくんとはもう会わないって』<br/>
「だったら、ちゃんとシンにそう言ってやれ」<br/>
『言う義理ないもん。なんでアヤのこと最後まで愛してくれなかったひとに、そんなこと言ってあげなきゃいけないの』<br/>
「３日後のライブで、新曲を１曲やるんだ」<br/>
『だからそれが――』<br/>
　アヤが言い募ろうとしたのをさえぎって俺は続けた。<br/>
「シンが作った曲だ」<br/>
『――え？』<br/>
「あいつが、初めて自分と向き合って作った曲だ。もう会わないのなら会わないでいい。別れの言葉を伝えないのなら、それでもいい。けど、せっかくあいつが、初めて自分自身と向き合いながら作った曲なんだ。たぶん、いちばんおまえに聞いてもらいたいんだと思う。だから聞いてやれよ」<br/>
　返事をせずに、アヤは電話を切った。<br/>
　ため息をつく。<br/>
　めんどくさいヤツらだ。誰も彼も。そう思った。<br/>
　人の世話をついつい焼いてしまう自分の性格が、いい加減恨めしい。<br/>
<br/>
　　　５<br/>
<br/>
　３日後。ライブの夜。<br/>
　この夜のライブも、場所は前回と同じだった。下北沢のライブハウス。<br/>
　お客さんもそこそこ来てくれて、俺たちのテンションも結構高かった。<br/>
　今日も後輩の栞は来てくれていた。もはや目当ては俺の演奏ではないだろうけどな。<br/>
　あと、ちょっと驚いたことに、ライブハウスのいちばん奥、隅のほうに洋輔がいた。一年前の事故で左手を負傷してドラムを続けられなくなってから、洋輔は音楽を完全に断っていたはずだ。<br/>
　忌まわしい事故だった。あの事故で洋輔は左手の自由を失い、音楽を失い、やけになって酒と女に溺れて、やがてリリも失った。まあ、リリとは最近よりを戻したけどな。<br/>
　どうやらいまだに酒と女にはだらしないみたいだが、それでも洋輔はやっと、かつての自分を取り戻そうとし始めているのかもしれない。そう思うと俺は少し嬉しくなった。<br/>
　洋輔は今日は黒いシャツを着ていた。長い茶髪を若干前にたらし気味にして、つばのついた帽子をかぶっている。おまけに暗いライブハウスの中だというのに薄い色のサングラスをしているのは、もしかして顔を隠しているつもりなのだろうか。<br/>
　けど確かに俺以外のメンバーは洋輔に気づいていないようだから、それは成功しているのかもしれない。<br/>
　もしハルトが洋輔を見つけたら、ハルトの演奏に支障がでないと限らないから、洋輔のその判断はありがたかった。<br/>
　シンの姉の優里さんは来ていなかった。それもそのはず、シンに聞いたところによると、優里さんは一週間前に旦那さんのいるアメリカに帰ったらしい。<br/>
　アヤはまだ来ていない。<br/>
　今日の俺たちの演奏は６曲。シンの作った新曲は４曲目に演奏する予定だった。<br/>
　演奏が始まった。<br/>
　一曲目が終わり、２曲目が終わる。それでもアヤはこなかった。<br/>
　そのまま３曲目に入る。歌は『吹く風のように』。前回は最後に披露した歌だ。<br/>
<br/>
『俺は風のようでなくていいんだ』<br/>
<br/>
　そのフレーズと共に演奏が終わる。客の反応もいい。しかしこの歌をライブで歌うと、シンのやつ必ず泣くな。そんなにこの歌に感情移入してるんだろうか。ハルトの作ったこの歌は、シン本人とはかなりイメージ違うと思うんだが。<br/>
　いよいよ次は４曲目だ。シンが初めて作った歌。<br/>
　その前にＭＣを入れる。中盤のＭＣはたいてい俺の役目だ。ちょっとした雑談と、次のライブの告知。アヤはまだ姿を見せない。俺はそれらをできるだけゆっくりと喋った。<br/>
　けれど別に俺はＭＣが得意なわけでも、好きなわけでもない。そんなに引き伸ばせるものじゃなかった。しかも次のバンドもあるから、時間自体に制限がある。<br/>
　もうこれ以上引き伸ばせない。俺は思い切って言った。<br/>
「では次の曲を聞いてください。曲はGLASS EYES」<br/>
　お客さんがくれる拍手の中、しかしバンドのメンバーは全員戸惑っていた。<br/>
「おい、オキ。曲順間違えてるよ」<br/>
　ハルトが俺に耳打ちする。<br/>
「わかってる。――やっぱりシンの曲は、いちばん最後がいいんじゃないかって、さっき思ったんだ。だから突然で悪いけど、曲順変えさせてくれないか？」<br/>
「ええ、あの新曲を最後にやるのか？　まだ一度もお客さんの反応を見てない曲を最後に持ってくるって、結構冒険じゃないか？」<br/>
「頼むよ。俺の勘を信じてくれ」<br/>
　アヤがくるのをギリギリまで待ちたいんだ。とは、俺は言えなかった。<br/>
　ハルトはもしかしたら、そういうバンドを私物化したような発言を嫌うかもしれないからな。代わりに俺は、精一杯強い目でハルトに訴えかけた。<br/>
　ハルトは俺の目に、何かを感じてくれたようだった。<br/>
「……わかった。シン、次はGLASS EYESだ。シンの曲は最後にする」<br/>
「……うん、わかった」<br/>
「サンキュー」<br/>
　俺はハルトに礼を言った。<br/>
「気にするなよ。どうせなんか理由があるんだろ？　さっき言ったのとは別の」<br/>
　ハルトの笑顔に、俺は思わず目を伏せてしまう。<br/>
　洋輔の言うとおり、ハルトは優しいやつだ。優しすぎて、人の気持ちを思いやるあまり、たまに臆病すぎるように思えることもある。<br/>
　けれどこのバンドで、ハルトの決定にむやみに逆らうやつはひとりもいない。<br/>
　それはハルトが、いつもバンドのことをとても大事に考えてくれていると、みんなが信頼しているからだ。バンドのことや、俺たちひとりひとりのことを、こいつはいつもいちばんに考えてくれている。俺たちのそんな期待を、ハルトはただの一度も裏切ったことはなかった。俺は改めてそれを思い出した。<br/>
　ハルトは優しいやつだ。そして信じられるやつだ。洋輔、おまえもハルトのそんなところが好きなんだろう？<br/>
<br/>
　なかなか曲を始めないのに、お客さんがざわつき始めていた。<br/>
　そのざわつきを押さえつけるように４曲目が始まった。<br/>
　GLASS EYES。硬質の音を集めた、俺たちの持ち歌の中ではいちばんハードなナンバーだ。<br/>
　とても速い、オーディエンスのテンションを煽る曲だ。同時に、演奏側のテンションもどんどんあがっていく。<br/>
　みんなが無意識のうちに好き勝手な暴走をしようとする中、けど俺の音はそれを制し続ける。<br/>
　どんなときも、走らず、ひたすら淡々と音を出す。全体の調整役。それが俺の役割だった。そんな地味な役割が、けど俺は結構気に入っていた。<br/>
　なんだかんだ言って随分世話好きな性格の俺に、このベースってやつはたぶん合っているんだと思う。<br/>
　意味もなく走ろうとするメンバーを、ベースの音で制御する。ためて。ためて。もっとためて。<br/>
　ほらここだ！　俺は解放した。<br/>
<br/>
　シン！<br/>
　ベースの弦を叩きつけるように弾いた。この音でシンのやつを怒鳴りつける。<br/>
　ほら、歌え！！<br/>
<br/>
　シンのシャウトが、最高のタイミングで爆発した！<br/>
<br/>
　オーディエンスが一気に盛り上がる。ドラムのリクと一瞬目を合わせ、リズム隊同士でつかのま喜びを分かち合った。<br/>
　そのままの勢いで４曲目が終わり、音を途切れさせずに５曲目に入る。本当だったら最後だった曲だ。<br/>
　淡々とベースを弾きながら、俺はライブハウスの防音扉から目を離さなかった。<br/>
　アヤ。くるんだ。俺は願った。<br/>
<br/>
　しかし、５曲目が終わってもアヤはこなかった。<br/>
<br/>
　お客さんの歓声は今まででいちばん大きなものだった。本当はこの歓声でライブが終わる予定だったんだけどな。<br/>
　けどあと１曲。たったひとりの女の子に、聞かせたかった歌がある。<br/>
<br/>
　息を整えて、シンがステージからお客さんに向けて言った。<br/>
「最後の曲は、新曲です」<br/>
　最高潮に盛り上がった客は、大きな拍手をくれる。<br/>
　シンは満面の笑みを浮かべた。<br/>
「この曲は、本当はいちばん聞かせたい人がいたんだけど。けどその子は今日は来てくれてなくて。だからその子に聞いてもらうのはまた次の機会かなって思ってます」<br/>
　振られたのか？　客のひとりがそんなことを言った。どっと笑いが起きる。シンはニヤリとした。<br/>
「ま、人生そんなこともあるよね。じゃ歌います。新曲。CAPACITY OVER」<br/>
<br/>
　ギターソロから入る。<br/>
　ギターの音だけが鳴り響く中、シンは歌い始めた。<br/>
<br/>
『廃墟の中に　立ちすくむ冷たい鉄塔<br/>
　風に揺れる途切れたロープ<br/>
　あんなものにでもぶら下がってみたら<br/>
　こんな痛みなんて　忘れられるのだろうか』<br/>
<br/>
　あの日、この歌をシンから初めて聴かされたとき、すぐにこれは優里さんとアヤのことを歌っているのだとわかった。<br/>
（アヤに聴いてもらいたいんだ）<br/>
　歌い終えた後、少し照れくさそうにしてシンは言っていた。<br/>
<br/>
　徐々に、俺も含めた他のメンバーの音が入り始める。<br/>
　曲のペースが一気に上がっていく。<br/>
<br/>
『巨大な交差点　向かってくる人たちはみんな<br/>
　それぞれあさってのなにかを見てた<br/>
　孤独を知って　立ちすくみそうになる<br/>
　俯いてロボットのように　足を動かした<br/>
　灰色の空は落ちてこない』<br/>
<br/>
　そして最初のサビの部分。<br/>
<br/>
『終わらない夜の中で<br/>
　終わらない雨に濡れて<br/>
　いつも差し伸べられている手も　僕は握れない<br/>
　想いに気づかれるのが怖くて』<br/>
<br/>
　優里さんへのどうにもならない気持ち。<br/>
　シンはいったいいつから、こんな気持ちを自分の中に抱え込んでいたんだろうか。<br/>
<br/>
『逃げ出した僕を　相変わらず<br/>
　僕のとは違う愛を込め　見守ってくれている<br/>
　そんな目で見られたくないから　逃げ出したのに』<br/>
<br/>
　間奏に入り、ギターソロ。この曲ではシンがソロを受け持つことになっている。悲しいくらい澄んだシンのギターの音が、突き刺すように閉ざされた空間を疾走する。<br/>
<br/>
　その時ライブハウスの防音扉が開いた。なにかの予感がして俺は開いた扉を見た。<br/>
　やっぱり。<br/>
　そこにはアヤがいた。<br/>
　じゃあ無駄ではなかったんだな。喜びがベースの音に反映されようとしていたのを、意志の力で制御する。<br/>
<br/>
　シンも、アヤが来てくれたことに気がついたようだ。<br/>
　当たり前だ。シンがアヤに、気づかないわけがない。<br/>
<br/>
　シン。おまえは好きに弾け。<br/>
　ベースの音に、俺はそんな気持ちを込めた。<br/>
　跳ね上がるようなギターの旋律がベースを踏み台に踊る。シンは歌った。<br/>
<br/>
『歌を歌って　誰かと体だけ繋げて<br/>
　キャパシティの足りないハートは<br/>
　一時の喜びさえもすぐになくす<br/>
　だからまた歌って　別の体を求めた』<br/>
<br/>
　アヤはじっとシンを見ていた。<br/>
　これがたぶんアヤにとって、最後のシンの姿になる。少なくともアヤはそう思ってここまで来たんだろう。<br/>
　そんなアヤを、シンは同じように熱い視線で見返していた。<br/>
<br/>
『時の止まった場所　歌いながら出会った君は<br/>
　こんなにもなにも持たない僕から<br/>
　いったい何を　見つけてくれたんだろう<br/>
　愛せないと言った僕を　それでもどうして<br/>
　そんなにまっすぐ見てくれるの』<br/>
<br/>
　２回目のサビに向かって、バンドのメンバー全員の出す音が俺の手を離れ、どうしようもなくシンの出す音に引き込まれていく。俺自身も。<br/>
　クソ――！<br/>
　微かな敗北感。そして圧倒的な喜び。<br/>
　もうなるようになれ！　クソ、やっぱりこいつら最高だ――！<br/>
<br/>
『終わらない夜を越えて<br/>
　終わらない雨を越えて<br/>
　君が差し伸べてくれた手を　僕はそっと握る<br/>
　キャパシティの足りないハートに<br/>
　精一杯愛を　詰め込んで』<br/>
<br/>
　いつの間にかアヤは泣いていた。<br/>
　シンも泣いている。本当によく泣くヤツだよな。<br/>
<br/>
『そしてやっぱりこぼれていく愛を　絶望と共に捨てていく<br/>
　かけがえないものと　知っているのに』<br/>
<br/>
　――シン。気づいてないのか？<br/>
　ただアヤのことを思って歌う歌が、空気だけでなく、これほど人の心を震わせてるってのに。<br/>
　この歌に愛がないとでも？　おまえが歌っているのは、切ない、純粋なラブソングじゃないか。<br/>
<br/>
『終わらない夜を越えて<br/>
　終わらない雨を越えて<br/>
　君が差し伸べてくれた手を　そっと握り締める<br/>
　またこぼれ落ちるのを知りながら――』<br/>
<br/>
　アヤ。届いたよな。<br/>
　シンの気持ち――おまえに。<br/>
<br/>
『それでも精一杯　握り締めたんだ』<br/>
<br/>
　最後の一音が空気を震わすのを終えて。長い拍手の中、シンとアヤはお互いを見詰め続けていた。<br/>
　アヤがゆっくりと微笑んだ。右手を胸の前に出し、しぐさと口の動きでシンにその言葉を伝えた。<br/>
<br/>
　バイバイ。<br/>
<br/>
　アヤがそう言ったのがわかって、シンは悲しげに微笑む。<br/>
　嬉しいときも、悲しいときも、いつからこいつは、どんなときでも笑顔を向けることしかできなくなってしまったんだろう。<br/>
<br/>
　けど、そのときアヤの口が、また開いたんだ。<br/>
<br/>
　ま・た・ね。<br/>
<br/>
「――ええ、それどういう意味！？」<br/>
　けれどそのシンの疑問には答えてくれず、アヤは悪戯っぽい笑みを残して、俺たちに背を向けて去っていった。<br/>
　呆然としているシンを、俺は少し気の毒な思いで見た。<br/>
　たった３音。<br/>
　それだけで、今シンの心は気の毒なくらいかき乱されているんだろう。俺はため息をつく。<br/>
　やっぱり女には、男は敵わない。<br/>
　けどまあ、とりあえずはよかったな、シン。俺はもういい加減付き合ってられねえから、後はてめえで何とかしろ。<br/>
　ひと仕事終えたという満足感と共に、俺は足元においてあったボルヴィックのペットボトルを手に取った。<br/>
　ライブハウスの隅にいた洋輔と目が合う。と、洋輔がグラスを掲げて見せた。――驚いたことに左手で。<br/>
　握力、戻ってきてるのか。<br/>
　左手に持っていたグラスは、遠めに見ても少し震えていたが、誇らしげに掲げられていた。<br/>
　それに合わせて俺もボルヴィックを掲げてみせる。<br/>
「乾杯」<br/>
　声に出して言った。<br/>
</span>
<br />
<br />
　<span class="font_red">&#32;&#62;&#62;&#32;</span> 【<a href="http://www.cnovels.com/shortstory/noise05-01.html">noise Vol.05</a>】 に続く<br />
　<span class="font_red">&#32;&#62;&#62;&#32;</span> 【<a href="http://www.cnovels.com/shortstory/lovesong.html">noise Vol.04 - 前編</a>】 に戻る<br />]]>

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</entry>

<entry>
<title>ラブソング - noise Vol.04 - 前編</title>
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<modified>2010-05-01T03:31:32Z</modified>
<issued>2007-07-15T16:00:04Z</issued>
<id>tag:www.cnovels.com,2007://2.18513</id>
<created>2007-07-15T16:00:04Z</created>
<summary type="text/plain"> 　　　１  　今夜の下北沢でのライブは、アクシデントもありはしたけど、結果的には最高に盛り上がったライブだった。  　ライブが終わって、ライブハウスに残っていたお客さんたちに挨拶をしていると、「よかったよ」とか「最高でした」とかかなりの好感触。  　自主制作したＣＤも、なんだかんだで今日だけで２０枚も売れた。  　『noise』――ＣＤのジャケットに印刷されたその文字を、感慨深く眺める。nois...</summary>
<author>
<name>千歳</name>
<url>http://www.ckotoba.com/</url>
<email>ckotoba@gmail.com</email>
</author>
<dc:subject>050_noise (バンド系恋愛小説)</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.cnovels.com/">
<![CDATA[<span style="font-family:'ＭＳ Ｐ明朝','平成明朝',serif;">
　　　１ <br/>
<br/>
　今夜の下北沢でのライブは、アクシデントもありはしたけど、結果的には最高に盛り上がったライブだった。 <br/>
　ライブが終わって、ライブハウスに残っていたお客さんたちに挨拶をしていると、「よかったよ」とか「最高でした」とかかなりの好感触。 <br/>
　自主制作したＣＤも、なんだかんだで今日だけで２０枚も売れた。 <br/>
　『noise』――ＣＤのジャケットに印刷されたその文字を、感慨深く眺める。noiseというのが、俺たちのバンドの名前だ。初ライブから４ヶ月でようやく発売にこぎつけたＣＤは、今のところよく活躍してくれているようだ。<br/>
「あ、遠山先輩おつかれさまでした！」 <br/>
　後輩の佐藤栞（サトウシオリ）が、そう言って笑顔で出迎えてくれる。 <br/>
「今日も見に来てくれたのか」 <br/>
　俺はちょっと嬉しくなりながら栞のキラキラした眼差しを受け止めた。 <br/>
　栞は俺が通っている大学の後輩だ。ライブに興味があると言っていたので、この前誘ってみたら、すっかり俺たちのバンドを気に入ってくれて、前回今回と、二回連続で来てくれていた。 <br/>
「もちろんです！　遠山先輩のベース弾いてる姿、かっこよかったですよ♪　あ、ここではオキさんって呼んだほうがいいんでしたっけ？」 <br/>
　俺の名前は遠山央樹（トウヤマオウキ）。大学では「遠山」と、苗字でそのまま呼ばれることが多かったが、バンド内では「オキ」と呼ばれている。 <br/>
「んー、別にどっちでもいいぜ」 <br/>
「じゃあオキさんで♪　あ、乾杯です！」 <br/>
　栞は楽しそうに俺のことをそう呼びながら、手に持っていたカクテルらしき飲み物を軽く持ち上げた。 <br/>
「ああ、乾杯」 <br/>
　俺もそれに応える。 <br/>
「あたし今日もすごく感動しちゃいました！　あ、ハルトさんだ――ハルトさんおつかれさまです！」 <br/>
　栞のよく通る声で呼ばれて、ハルトが俺たちの方にやってきた。ハルトはバンドのリードギターを担当している。本名は結城晴人（ユウキハルト）というんだが、みんな下の名前で「ハルト」と呼んでいた。 <br/>
　ハルトは栞を見て、すぐに誰か思い出したようだった。 <br/>
「ええと、きみは確かオキの後輩の、栞ちゃん、だよね？」 <br/>
「はい！　わあ、覚えててくれたんだ！　うれしい！」 <br/>
　栞はとても人懐っこい女の子で、特に自分が気に入った相手に対しては最初からテンションが高い。 <br/>
　俺の勘では、栞はハルトにかなり興味を持ってるくさかった。シンも「シオリちゃんは、絶対ハルトに気があるね」と、前回のライブの時に言っていたから、間違いないと思う。 <br/>
　なんとなく可愛い後輩をハルトに奪われた感じがして、あまり面白くない心境ではあった。が、ハルトは最近女に振られたばかりで、いまだに失恋のショックから立ち直れていないという状況だった。ま、ハルトが元気になるのなら、栞のことはこの際大目に見てやってもいい。 <br/>
　しかしハルトには今のところあまりそんな気はないらしい。栞の積極的な各種攻撃に多少たじたじの様子だったハルトは、俺に助けを求めるように話を振ってくる。 <br/>
「なあ、さっき栞ちゃんとも話してたんだけど、今日の打ち上げはどうするのかな？」 <br/>
「ああ、そうだな。確か外の通りに居酒屋あっただろ？　そこでいいんじゃないか。――何人くらいになりそうだ？」 <br/>
「今日は結構たくさん友達とか来てくれてるみたいだし、だいたい２０人くらいじゃないかな？」 <br/>
「オーケー。じゃあ俺今から行って、席空いてるかきいてくるわ」 <br/>
「え、あ――いってらっしゃい」 <br/>
　結局俺に助けを求めそこなったハルトは、そのまま当面は栞の攻撃を受け続けることになるのだろう。 <br/>
　別にハルトを助けてやってもよかったんだけど、ここはやっぱり可愛い後輩の味方をしてやらないとな。去り際にこっそり栞と視線を合わせる。栞が愛嬌たっぷりに、俺にウインクして見せた。 <br/>
　あれくらい明るくて積極的な子がハルトには合ってるかもしれないと、改めて考える。 <br/>
　ハルトは優しいヤツだが、奥手過ぎて幸せを逃すタイプの男だからな。栞くらいの子が、あいつにはたぶんちょうどいい。 <br/>
<br/>
　　　２ <br/>
<br/>
　その後、俺は目当ての居酒屋で首尾よく座席を確保し、打ち上げ参加希望者を店まで誘導した。 <br/>
　８人用の大きなテーブルを３つ使って、各自思い思いのテーブルに座ってもらう。 <br/>
　大体揃ったところで乾杯する。乾杯の音頭はシンにやらせることにした。シンはうちのバンドのヴォーカル兼サイドギターだ。女みたいな顔と甘い歌声で、ライブのたびに新たな女性ファンを獲得してくれるうちの広告塔でもある。ちょっと、いやかなり女癖が悪いのが欠点だが、これまで女がらみで大きなトラブルが発生していないところを見ると、あいつはあいつなりにきっとうまく立ち回ってるんだろう。 <br/>
　ちなみに本名を橘真太郎（タチバナシンタロウ）というんだけど、大体のやつは「シン」と呼ぶ。真太郎なんて名前、ちょっと長すぎていちいち呼ぶ気になれないよな。 <br/>
「ええと、今日はみんな、noiseのライブを見に来てくれてありがとう。今日のライブはちょっとハプニングもあったけど――」<br/>
　俺に乾杯を促されたシンが、おとなしくビールグラスを持って口上を始める。 <br/>
　シン、おまえここんとこ打ち上げの参加をサボってばかりだったからな。今日は働いてもらうぞ。覚悟しやがれ。 <br/>
<br/>
『というわけで、乾杯！』 <br/>
<br/>
　唱和して打ち上げが始まった。特になにかのイベントを用意しているわけじゃないから、あとは適当に飲んでもらって話してもらって、それでいい時間になったら解散だ。 <br/>
　俺のゲストは今日は栞しかいないが、栞は当然のようにハルトの隣の席を確保して、さっきから半ばハルトを独占している状態だ。<br/>
　なんだ、もう俺の出番は必要なさそうだな。そんなわけで、これでようやく今日のライブがひと段落ついた気分になった俺は、ロックの焼酎片手にひとりくつろいでいた。 <br/>
　そんなときに、隣に座っていたアヤが前触れもなくきいてきたんだ。 <br/>
「ねえ、オキ。あのヒト知ってる？　あの、シンくんの隣に座っているヒト」 <br/>
　アヤがそう言って、シンの座っているテーブルのほうをこっそり指差した。 <br/>
　おいおい、また新しい女に手を出してるのか？　しかもアヤが見てる前で。 <br/>
　アヤはシンの恋人だ。――本当は恋人という言葉で片付けるには色々複雑な事情があるんだけど、まあそんなようなもんだ。 <br/>
　そんなアヤの目の前で別の女の子にちょっかい出してるんだとしたら、また後で血を見ることになりかねない。シンの横に座っている女性に、慌てて目を向ける。ああ、なんだ。 <br/>
「ああ、優里さんか。シンの姉さんだよ」 <br/>
　確かシンの３つ上だから、今２４歳のはずだ。髪が長いストレートで、大人っぽい。少し下がった目じりがシンに良く似ていた。 <br/>
「……ふうん、お姉さんか」 <br/>
　さっきのライブで、優里さんは突然ライブハウスに現れた。ちょうど最後の曲の演奏を開始したところだった。 <br/>
　優里さんがくることを、シンも全く予測してなかったんだろう。優里さんがライブハウスに入ってきたことに気づいたシンは、歌を歌うタイミングで歌詞ではなく優里さんの名前を思いっきり叫びやがった。まったく、あの時はさすがに驚いたな。 <br/>
　取り繕いようもなく、演奏は一時中断。ライブハウスの時が一時止まってしまった。 <br/>
　けど、それがなぜか良いほうに働いて、お客さんたちの励ましを受けながら、最後には最高の演奏が出来たんだけどな。 <br/>
　優里さんは快活そうな笑顔でなにかを喋っている。が、俺と、隣に座っているアヤまでは彼女の声は届かない。 <br/>
　対照的にシンはとても居心地悪そうにしていた。いつもなら人一倍騒ぐか、さっき俺が恐れたように目新しい女の子にちょっかい出してアヤに睨まれたりしているのに、今日はまるで借りてきた猫みたいにじっとして動かない。 <br/>
　優里さんが冗談らしきことを言ってみんなを笑わせてるのに対して、そのたびにシンは真っ赤になったり、困った顔でなにか言い返したりしている。 <br/>
「まるで別人だな」 <br/>
　俺は呆れた気持ちになりながら、思ったことをそのまま声に出した。 <br/>
「だよねー！　なんか調子狂っちゃう」 <br/>
　そのとき、シンが優里さんをチラリと見た。俺は衝撃を隠しきれずうつむいた。 <br/>
　シンの優里さんを見る目は、姉を見る眼差しとしてはあまりにも熱を持ちすぎていた。 <br/>
<br/>
　優里さんに対するシンの気持ちを、俺は知っていた。ずっと前に、シンに打ち明けられていたからな。 <br/>
<br/>
　シンは、優里さんのことを姉としてではなく、ひとりの女性として見ていた。 <br/>
　もちろん優里さんに、シンはそのことを伝えていない。伝えていたとしたら、こんな風になんでもない顔をしてふたり隣り合ってはいられないだろう。 <br/>
<br/>
　げ、そうだ！ <br/>
　そのことに気づいて、俺はアヤを見た。 <br/>
　やっぱり……アヤは俺の隣で、青ざめた顔でシンを凝視している。 <br/>
　今のシンの顔に、さっき優里を見つめたときに垣間見せたあの情熱的な様子は微塵も見られなかった。 <br/>
　けれど、それでもあの一瞬で、アヤには十分だったんだろう。 <br/>
「アヤ、どうしたんだ」 <br/>
　俺は白々しくそう声をかける。 <br/>
「――あ、うん。なんでもない」 <br/>
　そうは答えてきたものの、アヤは相変わらずシンを見るのをやめようとはしなかった。 <br/>
　シンの優里さんへの気持ちを、アヤはたぶん今、確信しているだろう。 <br/>
　再度アヤに話しかけようかどうか考えて、結局それはやめておくことにする。 目の前の焼酎をくいっと飲み干した。 <br/>
　打ち上げが終わるまで、アヤはほとんどずっと、シンを見ることをやめなかった。 <br/>
<br/>
　　　３ <br/>
<br/>
「ようオキ、久しぶり」 <br/>
　打ち上げが終わり、ひとりになって、さあこれからどうしよう、ひとりでどっかに飲みに行くかな、なんて考えていたら洋輔にばったり出くわした。 <br/>
「よう」 <br/>
　俺も洋輔と同じように、片手を軽く上げて応える。 <br/>
「ひとりか？」 <br/>
　洋輔がそうきいてくるのにうなずいた。 <br/>
「そっちとは違ってな。俺は孤独なんだよ」 <br/>
　今の洋輔の様子を、そんなふうに揶揄してやる。 <br/>
　洋輔は女と抱き合う形で俺と向かい合っていた。まったく、リリという彼女がいるくせに、こいつといい、シンといい、どいつもこいつも救いようがない。 <br/>
「そんなんじゃねえよ――そうだ、せっかくだからこれから一杯付き合えよ」 <br/>
「いや、それはお邪魔になりそうだからやめておくよ」 <br/>
「そんなの別に気にすることねえよ」 <br/>
　洋輔は自分の首にしがみついていた女を引き剥がすと言った。 <br/>
「こいつとは今別れるところだったんだ」 <br/>
　その言いようをきいて、女が反論する。 <br/>
「なに言ってんの洋輔くん？　今日はずっと一緒にいてくれるって、さっき言ったばかりなのに！」 <br/>
「悪い悪い、こいつ、俺の親友なんだ。また今度埋め合わせするからさ」 <br/>
　洋輔はすまなそうに女に謝りながら、じっと女の目を見つめた。 <br/>
「な、今日はこいつとふたりで飲みたいんだ。わかってくれよ」 <br/>
「――もう。またそんな目で見る。もう騙されないんだから」 <br/>
「騙してなんかねえよ」 <br/>
　ささやくような甘い声で洋輔は言った。女の全身の力が抜けたように俺には見えた。 <br/>
「また明日連絡するから、な？」 <br/>
「……ぜったいだからね？」 <br/>
　女はそれ以上抗議することなく、軽いキスを交わしてひとり駅のほうに去っていった。去り際に、俺に挑戦的に微笑みかけてから。 <br/>
「まいったよ」 <br/>
　洋輔は遠ざかっていく女の後姿を指差して言った。 <br/>
「昔付き合ってた女なんだけどな。いまだに俺に未練があるらしい」 <br/>
「……おまえ、そのうち刺されるぞ」 <br/>
　俺がそう言うと、洋輔は軽く鼻を鳴らす。長い髪をかきあげ、流し目気味に俺を見た。 <br/>
「フン。そんなヘマはしねえよ。――なあ、久しぶりにあの店に行こうぜ。男ふたりで飲むにはなかなかいい店だろ？」 <br/>
<br/>
　洋輔と連れ立って、俺は昔行きつけだったバーに入った。洋輔とバンドを組んでいた頃によく来ていた店だ。 <br/>
　カウンターのいつもの位置に座る。 <br/>
「乾杯。俺たちに」 <br/>
　洋輔はそう言うとビールを掲げた。ビールグラスを合わせ、ひとしきり話した後俺は何気なくきいた。 <br/>
「リリは元気か？」 <br/>
「ああ、元気だよ。今日はメールしかしてないけど」 <br/>
「いったん別れたおまえたちが、また付き合い始めるとは思わなかったよ」 <br/>
「俺も思ってなかった」 <br/>
　洋輔は素直に認めた。 <br/>
「けどな、男と女ってのはそういうもんだろ？　何がきっかけでどうなるかなんてわからない。付き合うときも、別れるときも」 <br/>
　洋輔にはリリという彼女がいる。一度別れたふたりは、今またよりを戻していた。 <br/>
　俺と洋輔とハルトは、昔３人で『BREATH』というバンドを組んでいた。その当時、洋輔とリリは恋人同士だった。<br/>
　その後BREATHが解散し、ほぼ同時に洋輔とリリが別れた。<br/>
　BREATH解散からしばらくして、俺とハルトは洋輔抜きで新しく今のバンド、noiseを結成した。<br/>
　リリはnoiseの初ライブから見に来てくれた。そしてその後は、ライブだけでなく、ハルトにくっついてバンドの練習にもよく顔を出していた。 <br/>
　ハルトとリリはいずれ付き合うようになると、俺は当時思っていた。 <br/>
　ハルトは誰が見てもわかるくらいリリにぞっこんだったし、リリ自身、ハルトのことを必要としていたはずだった。 <br/>
　それが、気がつけばリリは洋輔とまた付き合うようになっていたのだ。<br/>
　以来、俺たちのバンドの練習やライブには、リリは一度も顔を出していない。 <br/>
「おまえらがあいつのことをどう思ってんのか知らねえが、リリはいい女だよ。ただ、弱い女なんだ。誰かが支えてやらないといけない。だが支える価値がある。そんな女だ」 <br/>
　洋輔のその言葉に、意外なくらいリリへの優しさを感じて、思い出す。 <br/>
「そういえば、昔からおまえのまわりには、そんな女ばっかり集まってきたな」 <br/>
「女は嗅覚で、男を見分けるのさ」 <br/>
　当たり前のことを言うような口調で答えてくる。 <br/>
「さっきの女もそうだ。まわりの男がだらしねえから、いつまでたっても何かあったら俺を頼ってくる。こんな俺を――」 <br/>
　言いながら洋輔は自分の左手を眺めた。 <br/>
「――いつまでも頼ってくる。俺がいないと生きてられないみたいな顔して」 <br/>
　俺はそれには答えず、かわりにビールを口にした。 <br/>
「ハルトは元気か？」 <br/>
　俺がリリのことをきいたように、洋輔はハルトのことをそうきいてきた。 <br/>
「リリのこと気にしてるのか？　――もしかして、悪いと思ってんのか、ハルトに？」 <br/>
「まさか。俺がリリと別れていた数ヶ月の間に、リリを自分のものにできなかったのは、あいつがとろかったからだ。俺が悪いと思う理由がねえよ」 <br/>
　ハルトは優しいやつなんだ。そう言おうとして、俺は口をつぐむ。そんなことを言っても意味がないと思った。 <br/>
　この店に来る前からすでにそれなりに酔っ払っていた洋輔は饒舌だった。 <br/>
「あいつは根っからの根性なしだよ。臆病すぎて危ない橋は渡れねえのさ。そんなんじゃ、自分の好きな女のことも守れねえよ。見ろよ！　リリだって、俺みたいなろくでなしにまた奪われちまった！　くだらねえ野郎だ」 <br/>
　思わず俺は言った。 <br/>
「……あいつは、優しいやつなんだ」 <br/>
　ビールを飲み干すために洋輔は顔を上げた。泡が口の端を伝って、仕立ての良い白いシャツに落ちる。それを拭こうともせず、空いたグラスを乱暴にテーブルに置いた。 <br/>
「知ってるよ。けどな、ただ優しいだけじゃ、女ひとり幸せにしてやれねえんだ」 <br/>
　それが真実だ。そう言うと、洋輔は黙り込んだ。 <br/>
<br/>
　結局、俺と洋輔は始発の時間までバーで飲み明かした。その間に洋輔は幾度となくハルトのことを俺にきいてきた。 <br/>
　そのたびに俺は丁寧に答えてやった。うん、今もあの店でバイトしてるよ。少し前に軽の中古車買ったんだ。ギターはまたうまくなった。最近はドラムの練習も少ししてるな。今日はハルトの作った曲をライブの最後に持ってきたんだ。最高に盛り上がったよ――。 <br/>
　だろう。あいつの作る曲は悪くない。まあたいていはな。洋輔はとても嬉しそうに、ろれつの怪しくなった口調で言う。 <br/>
　めんどくさいヤツらだ。俺は後半かなりうんざりしていたが、きかれるたびに、ハルトの最新情報を洋輔に伝え続けた。洋輔は女の話をするときよりよほど熱心にそれをきく。本当にめんどくさいヤツらだ。 <br/>
　午前５時。まともに歩けなくなった洋輔に肩を貸しながら外に出ると、空はまだ暗かった。秋の風が冷たく吹きすぎていく。 <br/>
「寒い。ここはアラスカか？」 <br/>
「大げさだよ」 <br/>
　洋輔を何とかひとりで立たせようと苦心しながら、俺は的確につっこみを入れる。 <br/>
「本当に寒い」 <br/>
　洋輔はブルブル震えながら右手で左手をさすった。 <br/>
「なあオキ。あの頃、楽しかったなあ。おまえがベースで、ハルトがギターヴォーカルで、俺がドラムでさ。イカしたバンドだったよな。俺たち」 <br/>
「そうだな」 <br/>
「寒い」 <br/>
　洋輔はまた言った。左手をさすり続けている。 <br/>
「痛むのか？」 <br/>
　俺はきいた。 <br/>
「別に」 <br/>
　洋輔は短く応える。彼の左手は１年前の事故の時に、ほとんど握力をなくしていた。 <br/>
　ドラムスティックも満足に握れなくなった古傷だらけの左手を、洋輔は大事そうにさすり続けた。 <br/>
</span>
<br />
<br />
　<span class="font_red">&#32;&#62;&#62;&#32;</span> 【<a href="http://www.cnovels.com/shortstory/lovesong2.html">noise Vol.04 後編</a>】 に続く<br />
　<span class="font_red">&#32;&#62;&#62;&#32;</span> 【<a href="http://www.cnovels.com/shortstory/sexandlive.html">noise Vol.03</a>】 に戻る<br />]]>

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<title>CAPACITY OVER</title>
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<modified>2009-07-11T16:01:26Z</modified>
<issued>2007-07-14T15:05:09Z</issued>
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<created>2007-07-14T15:05:09Z</created>
<summary type="text/plain"> 廃墟の中に　立ちすくむ冷たい鉄塔 風に揺れる途切れたロープ あんなものにでもぶら下がってみたら こんな痛みなんて　忘れられるのだろうか 巨大な交差点　向かってくる人たちはみんな それぞれあさってのなにかを見てた 孤独を知って　立ちすくみそうになる 俯いてロボットのように　足を動かした 灰色の空は落ちてこない 終わらない夜の中で 終わらない雨に濡れて いつも差し伸べられている手も　僕は握れない 想...</summary>
<author>
<name>千歳</name>
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<email>ckotoba@gmail.com</email>
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<dc:subject>210_歌詞</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.cnovels.com/">
<![CDATA[<span style="font-family:'ＭＳ Ｐ明朝','平成明朝',serif;">
廃墟の中に　立ちすくむ冷たい鉄塔<br />
風に揺れる途切れたロープ<br />
あんなものにでもぶら下がってみたら<br />
こんな痛みなんて　忘れられるのだろうか<br />
<br />
巨大な交差点　向かってくる人たちはみんな<br />
それぞれあさってのなにかを見てた<br />
孤独を知って　立ちすくみそうになる<br />
俯いてロボットのように　足を動かした<br />
灰色の空は落ちてこない<br />
<br />
終わらない夜の中で<br />
終わらない雨に濡れて<br />
いつも差し伸べられている手も　僕は握れない<br />
想いに気づかれるのが怖くて<br />
<br />
逃げ出した僕を　相変わらず<br />
僕のとは違う愛を込め　見守ってくれている<br />
そんな目で見られたくないから　逃げ出したのに<br />
<br />
歌を歌って　誰かと体だけ繋げて<br />
キャパシティの足りないハートは<br />
一時の喜びさえもすぐになくす<br />
だからまた歌って　別の体を求めた<br />
<br />
時の止まった場所　歌いながら出会った君は<br />
こんなにもなにも持たない僕から<br />
いったい何を　見つけてくれたんだろう<br />
愛せないと言った僕を　それでもどうして<br />
そんなにまっすぐ見てくれるの<br />
<br />
終わらない夜を越えて<br />
終わらない雨を越えて<br />
君が差し伸べてくれた手を　僕はそっと握る<br />
キャパシティの足りないハートに<br />
精一杯愛を　詰め込んで<br />
そしてやっぱりこぼれていく愛を　絶望と共に捨てていく<br />
かけがえないものと　知っているのに<br />
<br />
終わらない夜を越えて<br />
終わらない雨を越えて<br />
君が差し伸べてくれた手を　そっと握り締める<br />
またこぼれ落ちるのを知りながら<br />
<br />
それでも精一杯　握り締めたんだ<br />
</span>]]>

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<title>シリーズ化した</title>
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<modified>2007-07-14T12:19:19Z</modified>
<issued>2007-07-14T02:48:41Z</issued>
<id>tag:www.cdailylife.com,2007://9.18515</id>
<created>2007-07-14T02:48:41Z</created>
<summary type="text/plain">　引き続き「群青の空」を執筆中。 　もはや「群青の空」というタイトルが変更になることは決定したも同然だけど(笑) 　そういえば、リリのシリーズを「noise」シリーズとして独立させたことに気づいている人はいるのかな？ 　シリーズとして、全体でひとつの大きなストーリーを形作っていく予定です。 　で、「群青の空」は、その「noise」シリーズの最新作になります。 　この回で、シンとアヤの関係を多少なり...</summary>
<author>
<name>千歳</name>
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<email>ckotoba@gmail.com</email>
</author>
<dc:subject>100_日常</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.cdailylife.com/">
<![CDATA[　引き続き「群青の空」を執筆中。<br />
　もはや「群青の空」というタイトルが変更になることは決定したも同然だけど(笑)<br />
　そういえば、リリのシリーズを「noise」シリーズとして独立させたことに気づいている人はいるのかな？<br />
　シリーズとして、全体でひとつの大きなストーリーを形作っていく予定です。<br />
　で、「群青の空」は、その「noise」シリーズの最新作になります。<br />
<br />
　この回で、シンとアヤの関係を多少なりとも変化させたいと思っているのだけれど、どのような変化を生じさせようか、現在悩み中です。<br />
　希望はありますか？<br />
<br />
　今書いている話では、そのほかにも色々と手を出しているエピソードがあり、そうなってくると特に考えなきゃいけないのが、ひとつのお話として見た時にきちんと一本線が立っているかどうか。<br />
　ここがちゃんとできてないと、ただのエピソードの寄せ集めみたいな話になっちゃうからね。<br />
　大きな流れの中での一章という考え方をしたら、ひとつくらいそういう回があってもいいんじゃないか？　ていう考え方もできるけど。<br />
　けど俺は、一作の長編小説を書いているわけではないから。<br />
　あくまで短編小説を書いている。最終的に、まとめて読んだら長編としても成立するようにはしたいけど。それでも前提は一作一作きちんと独立した、短編小説であるということ。<br />
　だったら、ちゃんとそれだけ読んでもお話として成立している話にしないとね。<br />
<br />
　ちなみにこの一本線の入れ方だけど、これはこれで俺なりに色々テクニックを持っています。<br />
　けどね、「群青の空」がまだ一本線入れることに成功していないこの状態で、一本線の入れ方について講義する気にはさすがになれないので、その話はまた今度。<br />
<br />
　そんなわけで今日もがんばって書きます。<br />
]]>

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<title>書くということ</title>
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<modified>2007-07-12T21:55:19Z</modified>
<issued>2007-07-12T14:13:50Z</issued>
<id>tag:www.cdailylife.com,2007://9.18514</id>
<created>2007-07-12T14:13:50Z</created>
<summary type="text/plain">　なんか昨日から少しおなかが痛い(&gt;_ 　ちょっと食あたり気味かな；； 　けどそんなことよりも。 　最近創作活動が快調なのです。 　今書いている小説も、たぶん三連休目の月曜日までには書きあがると思う。 　タイトルなんにしようかな。 　ちなみに仮題は「群青の空」。 　けどたぶん変えます。 　だって、今のところまったく空とか出てこないし。 　なんでこんなタイトルが浮かんだのかさえもはやわかんない(^_...</summary>
<author>
<name>千歳</name>
<url>http://www.ckotoba.com/</url>
<email>ckotoba@gmail.com</email>
</author>
<dc:subject>100_日常</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.cdailylife.com/">
<![CDATA[　なんか昨日から少しおなかが痛い(>_<)<br />
　ちょっと食あたり気味かな；；<br />
<br />
　けどそんなことよりも。<br />
<br />
　最近創作活動が快調なのです。<br />
　今書いている小説も、たぶん三連休目の月曜日までには書きあがると思う。<br />
<br />
　タイトルなんにしようかな。<br />
　ちなみに仮題は「群青の空」。<br />
　けどたぶん変えます。<br />
　だって、今のところまったく空とか出てこないし。<br />
　なんでこんなタイトルが浮かんだのかさえもはやわかんない(^_^;)<br />
<br />
　今日も友達にちらっと話したけど、小説を書くという行為は、ある意味自分自身をさらけ出す行為そのものだと思う。<br />
　少なくとも俺の中では。<br />
<br />
　別に小説に自分の過去をそのまま書いているわけじゃないけど。<br />
　俺の小説に出てくる主要な登場人物は、みんな必ずどこかに俺そのものを含んでいると感じる。<br />
<br />
　タクミも、ハルトも、リリもシンもアヤも。今書いているオキも、洋輔も。みんな俺をどこかに反映している。<br />
<br />
　もちろん、知っている誰かを登場人物に重ねていることもあるけどね。<br />
　けれど、それでも自分が書いている登場人物たちは、他の誰よりもまず自分自身だと思う。<br />
<br />
　なので、私の作品を読んで「あ、このキャラクター俺だ！」とか「このキャラクターに共感する！」とか思った人は気をつけてください。<br />
　その人は、私によって登場人物のモデルにされているか、<br />
　または、考え方や心のあり方、生き方に、私と共通する部分を多く持っているか、<br />
　あるいはその両方です。たぶんw<br />
<br />
　まあそんなわけで、今まで生きてきて、いろんな経験をしてきてよかったとつくづく思います。<br />
　これまでの過去の蓄積すべてが、こうして物語を生み出してくれるから。<br />
<br />
　そりゃあ辛いこともそれなりにあったけど。<br />
　挫折もしたけど。いろんな出会いや別れを、これまでに繰り返してきたけれど。<br />
　たくさんの涙や、喜びや、泣き顔や笑顔とともに。<br />
　すべて受け止めてきたから。<br />
<br />
　だから今こうして、たとえ少人数でも人の心を打つ作品を生み出すことができているんだ。<br />
　幾千の物語を紡いでいるのだと。<br />
　そう思うと、自分は幸せ者だなと。今はそう思えます。<br />
<br />
　うう、またおなかが痛くなってきた。<br />
　明日になっても治らなかったら下痢止めでも飲むか。今日は飲まない。明日金曜日だけど俺休みだし、この際ダイエットにちょうどいいからｗ<br />
　明日の日中は、取材も兼ねてお出かけしようかな♪　雨があんまり強くなければ(^_^;)<br />
]]>

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<title>冷たい手</title>
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<modified>2009-10-01T11:36:24Z</modified>
<issued>2007-07-10T13:14:16Z</issued>
<id>tag:www.cnovels.com,2007://2.18554</id>
<created>2007-07-10T13:14:16Z</created>
<summary type="text/plain"> Happy daily like a dream Only two of the world なんとなく　いつか叶うんじゃないかって思っていた夢を キミは他の誰かと　知らないうちに見ていたんだね 冷たくて持てない わがままをいうこの子のために ボクは缶コーヒーを両手であたためてあげた キミは少しだけぬるくなったコーヒーを手に持って　ニッコリと微笑む そしてふたり並んで歩くんだ ボクの冷たい心が　...</summary>
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<name>千歳</name>
<url>http://www.ckotoba.com/</url>
<email>ckotoba@gmail.com</email>
</author>
<dc:subject>210_歌詞</dc:subject>
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<![CDATA[<span style="font-family:'ＭＳ Ｐ明朝','平成明朝',serif;">
Happy daily like a dream<br />
Only two of the world<br />
なんとなく　いつか叶うんじゃないかって思っていた夢を<br />
キミは他の誰かと　知らないうちに見ていたんだね<br />
<br />
冷たくて持てない<br />
わがままをいうこの子のために<br />
ボクは缶コーヒーを両手であたためてあげた<br />
キミは少しだけぬるくなったコーヒーを手に持って　ニッコリと微笑む<br />
そしてふたり並んで歩くんだ<br />
ボクの冷たい心が　手から伝わらないように<br />
缶コーヒーで冷えた両手を　ポケットであたためながら<br />
<br />
Happy daily like a dream<br />
Only two of the world<br />
今はもう　手には入れられないんだってわかっている夢を<br />
諦められないなら　キミの幸せを壊すしかない<br />
<br />
熱すぎて持てない<br />
わがままをいうこの子のために<br />
ボクは缶コーヒーが冷めるまで持っててあげた<br />
キミは少しだけぬるくなったコーヒーを手に持って　ニッコリと微笑む<br />
そしてふたり並んで歩くんだ<br />
ボクの冷たい心が　手から伝わらないように<br />
缶コーヒーを持ってたほうで　キミの手をにぎりながら<br />
<br />
Happy daily like a dream<br />
Only two of the world<br />
さよならは　言わないけれど　きっと永遠に交わらないね<br />
諦められないけど　キミが幸せならそれでいいんだ<br />
<br />
Happy daily like a dream<br />
Only two of the world<br />
そしてふたり並んで歩くんだ<br />
ボクの冷たい心が　手から伝わらないように<br />
<br />
Happy daily like a dream<br />
Only two of the world<br />
そしてふたり並んで歩くんだ<br />
キミの手のあたたかさに　少しだけ救われながら<br />
<br />
Happy daily like a dream<br />
Only two of the world<br />
でもそれでも　ボクはこの気持ちを<br />
なくすことができない　どうしてもなくせないんだ<br />
</span>
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<title>SEX ＆ LIVE. - noise Vol.03 -</title>
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<modified>2010-11-24T12:21:09Z</modified>
<issued>2007-06-30T17:36:01Z</issued>
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<created>2007-06-30T17:36:01Z</created>
<summary type="text/plain"> 「彼と別れたの」 　ラブホテル。ぼくの胸板やら腕やらに唇を押し付けて遊んでいたアヤが突然そんなことを言った。 「そうなんだあ」 　そろそろタバコが吸いたくなって、もぞもぞし始めていたぼくは、彼女の目を見る。 「その割には落ち込んでないね」 　アヤが前の彼氏、じゃもうないか。前の前の彼氏と別れたばかりの時のことを思い出す。あの時は、確か１０日間くらいは落ち込んでた。 「うん、新しい彼が、その後なぐ...</summary>
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<name>千歳</name>
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<email>ckotoba@gmail.com</email>
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<dc:subject>050_noise (バンド系恋愛小説)</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.cnovels.com/">
<![CDATA[<span style="font-family:'ＭＳ Ｐ明朝','平成明朝',serif;">
「彼と別れたの」<br/>
　ラブホテル。ぼくの胸板やら腕やらに唇を押し付けて遊んでいたアヤが突然そんなことを言った。<br/>
「そうなんだあ」<br/>
　そろそろタバコが吸いたくなって、もぞもぞし始めていたぼくは、彼女の目を見る。<br/>
「その割には落ち込んでないね」<br/>
　アヤが前の彼氏、じゃもうないか。前の前の彼氏と別れたばかりの時のことを思い出す。あの時は、確か１０日間くらいは落ち込んでた。<br/>
「うん、新しい彼が、その後なぐさめてくれたから」<br/>
　まさかぼくのことじゃないよな？<br/>
　そう思って警戒してたらアヤは笑った。シンくんのことじゃないよ。シンくん彼氏にしたら、アヤ、嫉妬しすぎて死んじゃうもの。<br/>
「なんだあ、ちょっと残念だな」<br/>
　ガリ。安心して軽口を叩くぼくの腕を、アヤが強めに噛んできた。<br/>
「いたっ」<br/>
　ちょっと、それ強くかみ過ぎだから！<br/>
「ねえ。今日、すごーくよかったよ？」<br/>
　頬をすり寄せながら言うアヤがとてもかわいくて、ぼくは彼女の頭を、自由なほうの手を回して撫でてやる。<br/>
「へえ、それはライブが？　それとも……」<br/>
　言いながらアヤの唇をすくい取るように舐める。彼女の舌がすぐに出てきて、ぼくの舌に絡まった。<br/>
「ふふふ。さあ、どっちでしょ――あん、もう、ダメッ」<br/>
　そのままエスカレートし始めたぼくの右手を優しくつかまえて、アヤは叱るような目でぼくを見た。<br/>
「ダメよ。終電間に合わなくなっちゃう。今日はこれから彼のうちに行くんだから」<br/>
　なにぃ！　それをきいてぼくのテンションは一気に下がった。<br/>
「ええ、ぼくとしたばっかりなのに、これからまたそいつとするつもりなの！？」<br/>
「だって、付き合い始めたばかりだし♪」<br/>
　そういって、ぼくを押しのけて、アヤはベッドから降りた。バスルームのドアを開けながら振り返って首をかしげる。<br/>
「アヤ、今すごく求められてるのよ？　だからシンくんのことばかり相手してあげられないの。ごめんね？」<br/>
　ドアの閉まる音と、まもなく始まったシャワーの音。そんなのをききながら、ぼくは両膝を抱え込むような格好でベッドに座り込んだ。<br/>
　しょんぼりした気持ちとは裏腹に、まだまだ元気いっぱいなぼくの相棒に「今日はもう終わりだってさ」と言ってやる。相棒をしまうためにパンツを探して目を泳がせた。<br/>
　見っけた。よりにもよってパンツはギターケースに引っかかってブラブラしてた。そういえば最中に、勢いよく投げ捨てたんだっけ。<br/>
　ぼくは思わず吹き出してしまう。ライブで張り切って歌いすぎたせいで少しかすれた笑い声が、ラブホテルの閉ざされた空間の中で、意外なくらいきれいに響いた。<br/>
　セックスとライブ。そんなぼくの一日を、このパンツとギターはユーモアたっぷりに象徴してくれてた。写真をとっておこうと思って携帯電話を探す。あったあった。パシャリ。<br/>
　GUITAR & PANTS.　今度そんな歌を書こうかな♪　なんて考えながらぼくはパンツに手を伸ばした。<br/>
<br/>
　次の日、昼前まで寝てたら携帯電話の着信音に起こされた。<br/>
　ハルトだ。ハルトは一緒にやってるバンドのメンバーで、リードギターを担当している。彼の性格をそのまま映し出してるみたいな、とても純粋な音を出すやつなんだ。<br/>
　そんなハルトの電話に、けどこのときばかりは正直出たくなかった。だからって嫌なことを先延ばしにしても、あんまりいいことはない。ぼくはあきらめて電話に出ることにした。<br/>
「……はいはい」<br/>
　案の定、ハルトは怒っていた。昨日のライブのあと、清算にも打ち上げにも付き合わずにさっさとアヤと消えてしまったことがその理由だ。<br/>
　たまにだったら大目に見てもらえるんだけど、最近続いてたからなあ。<br/>
「ごめんなさい。次はちゃんと参加するので許してください」<br/>
　ひととおりハルトの言葉に耳を傾けた後、俺は素直にそう謝った。<br/>
　実際問題ハルトの言うことになんの間違いもない。ライブの後の清算はもちろん、打ち上げだってせっかく来てくれた人たちと交流を深めるための大事なイベントだった。<br/>
　サイドギター＆メインボーカルのぼくが打ち上げに毎回参加しないじゃ、来てくれた人たちのテンションも下がっちゃうよね。<br/>
　ほとんど涙を流さんばかりに謝っていたら、ハルトはしょうがないなというように携帯電話の向こう側の世界でため息をつき、ぼくのことを許してくれた。ハルトは厳しいことも言うけれど、優しいから好きだ。<br/>
「ありがとね、ユウくん♪」<br/>
　思わず調子に乗って、ハルトの特別なあだ名を口走ってしまい、すぐに後悔する。<br/>
「ごめんなさい！」<br/>
　すぐに謝ったら、ハルトは電話の奥で笑った。気にするなよ。そう言って優しいハルトはまたぼくのことを許してくれる。<br/>
　ハルトは、最近とても大好きな女の子にフられてしまったのだ。<br/>
　リリっていうその女の子は、ハルトのことをユウくんと呼んだ。ハルトの苗字が結城（ユウキ）だからユウくん。ハルトのことをユウくんと呼ぶのはリリだけだったので、ぼくらもたまにユウくんと呼んでハルトをからかっていた。<br/>
　けど、それもハルトがリリにフられるまでの話だ。フられてからのハルトは、なにもできなくなるくらい落ち込んでいて見てられなかった。からかうなんてとんでもない状態だったんだ。<br/>
　最近ようやく少し元気が出てきて、ぼくらはホッとしていたところだった。そんな時にうっかり出てしまった軽口だった。けれどそれでもハルトは、ぼくの失言を優しく許してくれる。<br/>
　ハルトは自分のことでは滅多に怒らない。怒るのはいつも、誰かに迷惑をかけたりしたときだけだ。たとえばライブ後の打ち上げをサボって、来てくれた人たちをガッカリさせること。バンドの練習に遅刻してメンバーの時間を浪費させること。女の子を傷つけること。そんなことに、ハルトは怒るやつだった。<br/>
　リリって女はダメだな。決してハルトの前で口には出さないけど、ぼくはそう思う。<br/>
　ぼくはリリのことが許せなかった。リリ自身が傷ついているときに、さんざんハルトに甘えておいて、最後にはハルトを捨てて元彼のところに戻ったリリのことが許せなかった。<br/>
（リリ、おまえの選んだ男はどうしようもないやつだぞ）<br/>
（いろんな女をあちこちで泣かして歩いているやつだぞ）<br/>
（こんなにいいヤツなユウくんが、せっかくおまえのことを好きでいてくれていたのに、よりによってあんなカスを選ぶなんて）<br/>
（やっぱりおまえは最低な女だよ）<br/>
　そんなことを心の中でだけ思いながら、ぼくはハルトに声をかける。<br/>
「ねえハルト」<br/>
「ん？」<br/>
　昨日ライブに来てくれてた、女の子いただろ？　ええとオキの後輩の――。<br/>
「栞ちゃんのこと？」<br/>
「そうそうシオリちゃん。その子さ、たぶんおまえにちょっと気があるぜ」<br/>
「……突然なに言い出すんだよ」<br/>
「ん、この情報はほんのお詫びのシルシだから。とっておいてね」<br/>
　本当は、ぼくが仲良くなろうかなって思ってたんだけど、キミにゆずるよ。<br/>
　だから早く元気になってね、ハルト。<br/>
「そんなことより、シン。伝えなきゃいけないことがあるんだ」<br/>
「え、なに？」<br/>
　次のハルトの言葉に、ぼくの世界を包んでいたオブラートが、いとも簡単に剥がれ落ちた。<br/>
「優里さんが帰ってきてるよ」<br/>
「…………」<br/>
　なにも言わないぼくに、ハルトは続けた。<br/>
「さっきメールが来たんだ。帰ってきてるからシンに伝えて欲しいって。今、家にいるってさ」<br/>
　その言葉を最後まできくこともなく、電話を切ったぼくは家を飛び出していた。<br/>
　と、パンツ一枚でいたことに気がついて、すぐまた部屋に戻る。<br/>
　慌ててデニムを履きながら、ぼくの頭の中は優里でいっぱいになってしまっていた。優里、ゆり、ユリ。<br/>
　この電話の直後に、ハルトはぼくにメールを送ってくれていた。けれどそれに気がついたのは、これから２時間も経った頃だった。<br/>
『今日の練習には来なくていいから』<br/>
　メールにはそう書かれていて、読んで、ぼくはまたハルトに感謝した。<br/>
　セックスとライブ。どっちもぼくは大好きだけれど。<br/>
　優里にはかなわない。<br/>
<br/>
　閑静な住宅街の普通の一軒家。特別な人がいるのでもない限り、絶対に目に留まることなんてない、そんな普通の家。<br/>
　だけどここには今、優里が帰ってきているらしい。<br/>
　それだけで、ぼくの指は震えてしまう。震える指を必死で制御し、どうにかインターホンを押した。<br/>
「はい」<br/>
　機械に劣化させられた声。だけどそれでも優里の声は、これでもかとぼくをドキドキさせる。<br/>
「真太郎です」<br/>
　ブツリ。<br/>
　インターフォンが切れた。待ちきれなくて、ぼくは数を数える。<br/>
　いち、に、さん、し……<br/>
　無音になってきっかり１０秒後だった。<br/>
「真太郎」<br/>
　家の扉が開いて、優里が出てきて言った。<br/>
「魔法のインターホンだ」<br/>
　ぼくは思わず口走っていた。<br/>
「え？」<br/>
「押すだけで、優里が目の前に現れた」<br/>
「あははは！」<br/>
　ぼくよりも通る、透き通った声。<br/>
　優里はぼくを門まで迎えに来て、そしてそっと抱きしめてくれた。<br/>
　ぼくは言った。<br/>
「おかえり」<br/>
「ただいま」<br/>
　泣いているぼくの顔を見て、優里はバカねと優しく笑ってくれる。<br/>
　バカなことあるもんか。<br/>
　優里と３年ぶりに再会して、そして今、彼女はぼくだけを見てくれているのに。<br/>
　泣く理由に、他に何がいるだろう。<br/>
「おかえり、優里――姉さん」<br/>
<br/>
「今日は泊まっていくんでしょ？」<br/>
　そんなわけで、ぼくは優里と再会するために、久しぶりに実家に帰ってきていた。<br/>
　優里と、父さんと母さんと、ぼくにあまりなついてくれない猫との、本当に久しぶりの一家団らんというやつだ。<br/>
　晩御飯を食べながら、優里はぼくにきいてくる。<br/>
「久しぶりに家族がみんな揃ったんだから、こんな日くらい泊まっていくわよね？　ていうかここ、あんたのうちなんだし」<br/>
「うん」<br/>
　ぼくは優里の言葉に逆らえず、素直に頷いてしまう。<br/>
「それと後で、今持ってる携帯電話の番号とメアドも教えること。ハルトくんとすぐに連絡取れたから良かったけど――家族にも知らせないで連絡先変えるなんて、なに考えてんだか」<br/>
「ていうか、いったいいつの間にハルトのメアド知ってたんだよ？」<br/>
「あ、わたしが帰ってきたこと、ハルトくんから伝わったんだ？」<br/>
「そうだよ。優里、ハルトと一度しか会ったことなかったよね、確か？」<br/>
「こんなこともあろうかと、前にライブ見に行った時にきいてたのよ。オキにもメールしたんだけどね」<br/>
　オキとぼくは幼なじみだ。うちにもよく遊びに来てたから、優里とも顔見知りだった。<br/>
「ああ、オキのやつ、今日は昼バイトなんだよ」<br/>
「そうなんだ？　――けど、こんなに早くあんたが捕まるとは思わなかった。ハルトくん、やっぱり律儀な男の子よねー。第一印象と実際の性格がおんなじだわ」<br/>
「……そういえば旦那さんは？」<br/>
「旦那は帰国してないよ。私だけ帰ってきたの」<br/>
「え、じゃあ出戻りってやつ？」<br/>
「あ、今嬉しそうな顔した。姉の不幸を想像して喜ぶなんて趣味悪いよ」<br/>
　続けて出戻りじゃないよと優里は言った。日本には少しの間帰ってきているだけらしい。<br/>
　なんだ。ぼくは内心がっかりしながら、久しぶりの母さんの手料理を口に運んだ。あ、それ私が作ったのよ。里芋の煮っ転がしを指差して優里がそう言う。おかげで今日は里芋の煮っ転がしを１年分は食べてしまった。<br/>
　ご飯を食べ終わるとリビングに移動した。苦手なアルコールを付き合い程度に少しだけ飲みながら、優里の向こうでの暮らしをきく。優里が話している間、ぼくはその声をひとつもきき漏らしたくなくて一生懸命耳をそばだてた。<br/>
「で、真太郎、最近バンドはどうなの？」<br/>
　優里の話がひと段落ついたら、彼女はぼくにそうきいてきた。優里は昔から、ぼくのことをフルネームで「真太郎」と呼ぶ。<br/>
　ぼくはぼくでそれに対抗するように、３つ離れた姉のことをたいてい「優里」と呼んだ。姉さんとはたまにしか呼ばない。<br/>
　優里がぼくの実の姉であることを、強く意識しないといけないとき。そんなときにしか、ぼくは優里のことを姉さんとは呼ばなかった。<br/>
「次のライブはいつあるの？」<br/>
「ええと、２２日かな」<br/>
「そうなんだ。じゃあ行ってみようかな――はい」<br/>
「なに？」<br/>
「チケットよ。どうせ余ってるんでしょ？　買ってあげるからちょうだい」<br/>
「こ、こなくていいよ！」<br/>
「なによ。あーあ、本当男の子って、こういうので家族がくるのをいやがるよねえ。お姉ちゃん寂しいわ」<br/>
　そんな話をしていたら、あっという間に深夜になった。<br/>
　父さんと母さんはもう先に寝てしまっている。猫もソファーで体を伸ばしきって寝てた。今この家で起きているのは、ぼくと優里だけだった。<br/>
　まるで世界でただふたり、ぼくと優里だけになってしまったみたいだ。<br/>
　ぼくの心臓は次第に高鳴っていく。たぶんそれは、飲み慣れないアルコールのせいだけじゃなく。<br/>
「……今日はちょっと飲みすぎちゃったかな。やっぱり家だと安心してすぐ酔っちゃうわ」<br/>
　お酒を飲んで、頬が赤くなっている優里が、そう言いながら缶ビールを頬にあてる。クスクス笑う優里の濡れた瞳が、ぼくにはとてもなまめかしく見えた。<br/>
　ぼくはソファーから立ち上がった。<br/>
「ん、どうしたの？」<br/>
「ちょっと外の空気吸ってくるよ」<br/>
「はーい、いってらっしゃい」<br/>
　言いながら優里はソファーに寝転がる。このまま寝ちゃうんじゃないかな。そう期待しながら外に出た。<br/>
　家ではガマンしていたタバコに火をつける。<br/>
　フウ。煙を吐き出すと、ようやく気分が落ち着いた気がした。<br/>
　３年前、この家で家族と暮らしていた頃は、ぼくはおとなしい１８歳の男の子だった。<br/>
　すくなくとも家族の前では、タバコも吸わなかったし、お酒も飲まなかった。自己主張とか全然しない、うーんとおとなしくて目立たない男の子だったんだ。<br/>
　家の外ではそれなりに遊んでたけどね。けど、そのことを両親や優里には知られないように気をつけていたし、実際ぼくはうまくやっていたと思う。<br/>
　あのひとたちが知ってるぼくは、おとなしくて、めだたない、ちょっと頼りないけど心の優しい男の子。<br/>
　実際、中学生の頃のぼくは確かにそうだった。<br/>
　バンドとか、ライブとか。あの頃のぼくしか知らない人は、今のぼくがそんなことしてるなんて想像できないだろうな。<br/>
　もうあの頃とは、ぼくはずいぶん変わってしまったんだ。けど今のぼくを家族に見せるつもりはまったくなかった。<br/>
　うちの親たちはぜったい戸惑うと思うし、優里はきっと――うーん、けど、優里がどんな反応するかは全然わからないや。<br/>
　タバコを吸いながら、駅に向かって歩き出す。<br/>
　うん、実はもう、今日はこのまま実家に戻るつもりはなかったんだ。<br/>
<br/>
　電車の中で、昨日ぼくをおいて彼氏のもとに行っちゃったアヤに、メールを打った。<br/>
『急にアヤに会いたくなっちゃったよ。これから会えないかな？』<br/>
　少しして返事がくる。<br/>
『ダメだよ。今日は彼と一緒にいるから』<br/>
　また彼か。ぼくはうんざりして、それでもしつこくメールを送る。<br/>
『なんとかなんない？　アヤに会いたいんだよ』<br/>
　本当に、今日はどうしてもアヤに会いたかったんだ。<br/>
『……どうしてそんなに会いたいの？』<br/>
『もちろん好きだから』<br/>
『好きだけど、愛せない。でしょ？』<br/>
『うん。それじゃダメ？』<br/>
『いいよ。けど今日は会わない。今日はアヤのことだけ見てくれているヒトと一緒にいたいの』<br/>
　携帯電話を電車の中で握りなおした。<br/>
「アヤのことだけ、か……」<br/>
　声に出してつぶやく。<br/>
　昔、アヤにとても真剣に告白された。<br/>
　そのときにはもう何度か体の関係があって、相性もすごく良くて、それにアヤは一緒にいて楽しい女の子だった。<br/>
　そんなアヤに好きだと言われて、ぼくはとても嬉しかった。アヤのことを大事にしたいなと思った。<br/>
　だから正直に言ったんだ。<br/>
<br/>
（ぼくもアヤのことが好きだよ）<br/>
（うん、けれど一番、じゃないんだ）<br/>
（アヤのことは好きだけど、一番好きな人がほかにいるんだ）<br/>
（違うよ。好きだよ。けど――たぶん愛せない）<br/>
<br/>
　ぼくの言うことに泣いてしまったアヤは、それからしばらくぼくの前に姿をあらわさなかった。<br/>
　そして次に会ったとき、アヤはぼくに言ったんだ。<br/>
<br/>
（アヤね。彼ができたの）<br/>
（アヤのこと、すごく愛してくれてるの。だからアヤにとっても、いちばん大事なヒトなんだ）<br/>
（だからシンくんは、アヤの２番目に大事なヒトだよ。ね、これでおんなじでしょ？）<br/>
　そう言って、アヤはぼくにキスをした。とても情熱的な、２番目どうしのキス。<br/>
<br/>
　ぼくとアヤの関係は、どこかゆがんでる。<br/>
　ふたりが時々寄り添っていられるように、寂しがりやなアヤが見出した、それはたぶんギリギリの折り合いのつけ方なんだと思う。<br/>
　そしてぼくは、そのままなにもせず、ただアヤに甘えて過ごしている。<br/>
　ぼくはずるい男だった。<br/>
　本当はぼくは、ハルトをフって元彼のところに走ったリリのことを、最低だなんていう資格はなかったんだ。<br/>
　大好きな人のことを忘れようとして、ハルトの気持ちを利用したリリ。<br/>
　大好きな人のことを忘れられないまま、ただ寂しくてアヤを求める自分。<br/>
　本当に最低なのはリリじゃなく、ぼくのほうだと思う。<br/>
「ごめんね、アヤ」<br/>
　けれどぼくは。<br/>
<br/>
　そして１週間後の２２日。下北沢でぼくたちのライブが行われた。<br/>
　出来は……一言でいうとめちゃくちゃだったかな。<br/>
　今日はアヤがライブに来てくれてた。<br/>
　あの夜にメールで会うのを断られて以来、なんとなく連絡してなかったので、アヤがきてくれたのは結構嬉しかった。<br/>
　ぼくがアヤを見つけたことに、彼女は敏感に気づいたらしい。目が合った瞬間、アヤはぼくに向かってアッカンベーをした。驚いたぼくはギターの弦を押さえそこなって、ちょっと演奏が乱れてしまう。<br/>
　それでもすぐに演奏を立て直して、フィニッシュ。お客さんから拍手をもらって、ベースのオキにＭＣをまかせながらチューニング。その間に気持ちを切り替える。<br/>
　次は最後の曲だ。１・２・・ぼくはギターを思いっきりかき鳴らした。<br/>
　短いギターソロの後、一気に他の楽器のパートが入る。ぼくは声を張り上げようと熱い空気を吸い込んだ。<br/>
　そのとき奥の防音扉が開いた。<br/>
　いつもなら演奏中だろうと気にもしないようなことなのに、なぜかぼくの目はその扉に釘付けになった。そして中に入ってきたのは、なんと優里だった！<br/>
「優里！」<br/>
　歌に入るまさにそのタイミングで、思わずそう叫んじゃった。ピックが滑って手から落ちる。<br/>
「ええ！？」<br/>
　普段物静かなハルトがそんな声を上げた。それくらい思いがけない出来事だったらしい。そりゃそうだよな。ボーカルが、歌うタイミングで姉の名前を叫ぶなんて、予想できるわけない。<br/>
　そんなわけで、あまりのぼくの突然のアクションに演奏は完全に止まってしまった。なにごとかと唖然とするお客さんたち。ライブハウスの中は一瞬シンとしてしまった。<br/>
<br/>
　ね、めちゃくちゃだろう？<br/>
<br/>
　そんな散々なことがあったライブだけど、どういうわけかあの派手なハプニングが、かえってお客さんたちの気を引いたらしかった。<br/>
「気にするな！」<br/>
「がんばって！」<br/>
　と、暖かい声援をもらったぼくたちは、なんかもう開き直ったみたいな気分になっちゃった。<br/>
　メンバー同士で一瞬視線を合わせる。リクがドラムスティックでカウントをとり始めた。１・２・・<br/>
　ぼくのギターの音。そしてすぐにハルトのギターと、オキのベースとリクのドラムが入る。音の奔流の中、ぼくはギターから目を離して顔を上げた。<br/>
　けしからんことに、アヤが心底おかしそうにケラケラ笑っていた。<br/>
　さっき突然名前を叫ばれた優里は、わけがわからないみたいなポカンとした顔をしている。<br/>
　アハハ！　そんなふたりが面白くて、心の中だけで笑う。<br/>
　そしてほとんど反射的に音に満たされた空気を吸い込み、５つ目の音――ぼくの声を張り上げた。<br/>
<br/>
『子供の頃に　なりたかったもの<br/>
　特になかったけど　しいていうなら風がよかった』<br/>
<br/>
　これ以上ないタイミングで声を出すことができて、一人鳥肌をたてる。<br/>
<br/>
『風はあんなに軽くて<br/>
　山のてっぺんまでも　軽々と飛び越えていくのに<br/>
　俺の体は　こんなにも重く<br/>
　学校の　塀も飛び越えられない』<br/>
<br/>
　やばい、楽しい！<br/>
　けどちょっと走り気味かも。<br/>
　もう少し、気持ちを落ち着けたほうがいいのかな。<br/>
<br/>
『風のようになりたいと<br/>
　どんな大変なことも　軽々と超えていけるような<br/>
　そんなやつになりたいと　何度思っただろう』<br/>
<br/>
　だんだん自分の声と、手に持つギターに意識が集中していくのがわかる。仲間の音が、鼓膜を貫き通すみたいに脳に直接響いてくる。<br/>
<br/>
『そう男の子がみんな　ヒーローに憧れたように<br/>
　俺はきっと　風に憧れていたんだ』<br/>
<br/>
　風に憧れていた。これはハルトの作った歌だ。<br/>
　ハルトらしい、とてもひたむきな、まっすぐ前を向いた歌。<br/>
<br/>
『けどいつからか　なくした気持ちなんだ<br/>
　確かにガキだった　俺があの頃言ってたとおりで』<br/>
<br/>
　ぼくはこんなふうには生きられない。<br/>
　自分のいちばん大切なはずな気持ちに向き合うこともできず、ただ、その気持ちから逃げることだけを考えている。<br/>
<br/>
『風はあんなに軽くて<br/>
　ビルの屋上までも軽々と飛び越えていくのに<br/>
　俺の体は　ますます重くて<br/>
　駐車場の　塀も飛び越えられない』<br/>
<br/>
　優里から逃げるように家を出て、たくさんの女の子と付き合って、ヒマだしかっこいいからという理由で音楽を始めた。<br/>
<br/>
『けど風のようになりたいと<br/>
　どんな大変なことも　軽々と超えていけるような<br/>
　そんなやつになりたいと　今はもう思わない』<br/>
<br/>
　ライブをするようになって、最高だと思った。<br/>
　アヤに会って、大事にしたいと思った。<br/>
<br/>
　けど、それでも優里への思いが、消えることは全然なくて。<br/>
<br/>
『重たいのは　生きているという証<br/>
　これは命の重さ』<br/>
<br/>
　今では大好きになった音楽や、アヤさえも。<br/>
　まるで優里から逃れるための道具のように、ぼくは使って。<br/>
<br/>
『風のように　軽々とでなくていい<br/>
　飛べなくてかまわない<br/>
　この命と　向き合って生きていく<br/>
　そう決めたんだ　だから』<br/>
<br/>
　もうわかっている。<br/>
　この歌のようにまっすぐには、ぼくは生きられない。<br/>
<br/>
　絶望の涙が流れる中、ぼくは歌った。<br/>
　最後のフレーズを。思い切り。心を込めて。<br/>
<br/>
『――俺は風のようでなくていいんだ』<br/>
<br/>
　ワアッ！<br/>
<br/>
　演奏が終わって、歓声を浴びて。<br/>
<br/>
　快感にも似た歓喜が体中を駆け巡る。この瞬間、優里への思いからも完全に開放されて、ぼくは最高にハイになっていた。<br/>
　けど、あともう少しすればまたあの狂おしい、決してとげられない思いがぼくを絶望させることになる。<br/>
<br/>
　SEX ＆ LIVE.<br/>
<br/>
　とてもよこしまな気持ちで、ぼくはこれからもその二つを求めるんだろう。<br/>
　愛してる。そんな、自分の中のいちばんピュアなはずの思いが、結局他の何もかもを狂わせていく。<br/>
<br/>
　けどいいや。今こうしていて、ぼくはとてもハッピーだから。<br/>
　体を満たす甘い痺れに、今はただ身をゆだねて。<br/>
　SEX ＆ LIVE.　絶望を忘れさせてくれる、ぼくの最高のドラッグ。<br/>
</span>
<br />
<br />
　<span class="font_red">&#32;&#62;&#62;&#32;</span> 【<a href="http://www.cnovels.com/shortstory/lovesong.html">noise Vol.04 - 前編</a>】 に続く<br />
　<span class="font_red">&#32;&#62;&#62;&#32;</span> 【<a href="http://www.cnovels.com/shortstory/lili02.html">noise Vol.02</a>】 に戻る<br />
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<title>ありがとう</title>
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<modified>2009-07-11T16:01:26Z</modified>
<issued>2007-06-15T16:02:06Z</issued>
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<created>2007-06-15T16:02:06Z</created>
<summary type="text/plain"> 　ありがとう　君にあえたから 　僕は今また　新しい自分に向き合えた 　理由さえもわからない苛立ちに 　意味なく傷つけたり　傷つけられたり 　他の人に言われても 　なにも感じないはずの言葉が 　こんなにも痛みをともなうのは 　君が大事な人だったから 　ありがとう　壊れた心も 　きっといつかは　新しい世界に向き合えて 　もう僕らはきっと会うこともなく 　はじめからこの出会いは　なかったように 　違う...</summary>
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<name>千歳</name>
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<email>ckotoba@gmail.com</email>
</author>
<dc:subject>210_歌詞</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.cnovels.com/">
<![CDATA[<span style="font-family:'ＭＳ Ｐ明朝','平成明朝',serif;">
　ありがとう　君にあえたから<br />
　僕は今また　新しい自分に向き合えた<br />
<br />
　理由さえもわからない苛立ちに<br />
　意味なく傷つけたり　傷つけられたり<br />
　他の人に言われても<br />
　なにも感じないはずの言葉が<br />
　こんなにも痛みをともなうのは<br />
　君が大事な人だったから<br />
<br />
　ありがとう　壊れた心も<br />
　きっといつかは　新しい世界に向き合えて<br />
<br />
　もう僕らはきっと会うこともなく<br />
　はじめからこの出会いは　なかったように<br />
　違う道を歩むけど<br />
　いつか見た　あの時の景色は<br />
　僕の一つ一つの細胞に<br />
　きっとなにかを残している<br />
<br />
　ありがとう　君にあえたから<br />
　僕は今また　新しい自分に向き合えた<br />
　ありがとう　壊れた心も<br />
　きっといつかは　新しい世界に向き合えて<br />
　ありがとう　こんな言葉さえ<br />
　もうあなたには　届かないけれど　ありがとう<br />
</span>]]>

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<title>もしも彼女が</title>
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<issued>2007-06-08T14:14:59Z</issued>
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<summary type="text/plain"> 「ねえ。朝起きて、もしもあたしが猫になっていたら、あなたどうする？」 「…………」 　またか。俺はその質問に正直うんざりしていた。 　彼女が初めて俺に聞いてきた架空の話はどんなんだっけ――そうだ。「もしもあたしが人殺しだったら、あなたどうする？」確かこいつは俺にそう聞いてきたんだった。 　そのときは「自首するように勧める」とかなんとか言ったら、どうやらそれは彼女の意に染まない返答だったらしい。か...</summary>
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<name>千歳</name>
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<email>ckotoba@gmail.com</email>
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<dc:subject>060_恋愛小説</dc:subject>
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<![CDATA[<span style="font-family:'ＭＳ Ｐ明朝','平成明朝',serif;">
「ねえ。朝起きて、もしもあたしが猫になっていたら、あなたどうする？」<br>
「…………」<br />
　またか。俺はその質問に正直うんざりしていた。<br>
<br>
　彼女が初めて俺に聞いてきた架空の話はどんなんだっけ――そうだ。「もしもあたしが人殺しだったら、あなたどうする？」確かこいつは俺にそう聞いてきたんだった。<br>
　そのときは「自首するように勧める」とかなんとか言ったら、どうやらそれは彼女の意に染まない返答だったらしい。かなり機嫌が悪くなった。<br>
<br>
　その後も、魚だったらどうする？　木だったら、ゴミだったら、と、彼女は様々な架空の話をして俺に聞いてくる。<br />
　いったいどういう意図があって、彼女は俺にそんなことを毎回聞いてくるのか。そもそもそれが俺にはわからない。最初はなにか不安なことでもあるのかとも思っていたけど、どうやらそれだけでもないようだった。<br>
　最初のうちはそれでも（俺からすれば）辛抱強く聞いて、考えて、彼女の喜びそうな答えをなんとか言おうとした。<br>
　しかしどうやら俺は彼女にとっては模範的な回答者とは言いがたいらしく、彼女が俺の答えに満足した顔をしているのをほとんど見たことはない。<br>
<br>
　そして彼女の質問に戸惑いっぱなしのまま、俺はだんだんその質問自体を鬱陶しく感じるようになってしまう。<br>
「今忙しいんだ」<br>
　そんなことを言って、質問自体から逃げるようになっていった。<br>
　もちろんそんな俺の態度に、彼女はあからさまに不機嫌な顔をする。<br>
　しかし言わせてもらえば俺だってそんなわけのわからない質問をされて少なからず不愉快なのである。<br>
<br />
　そして今夜、冒頭のセリフが彼女から発せられたのだ。<br />
「ねえ。朝起きて、もしもあたしが猫になっていたら、あなたどうする？」<br>
「…………」<br />
　ついに俺は言ってしまった。<br />
「知るか」<br />
　で、そっからが大変だったわけだ。<br />
　ちゃんと答えて。嫌だ。の不毛な押し問答のすえ、彼女は怒って俺の部屋を出て行ってしまった。風呂入ったばかりなのに、化粧もせずハンドバックだけ持って。<br>
<br>
　そのときはさすがに俺も焦ったが、しかしそれでも大人気なく「もう勝手にしろ！」なんて考えていた。<br />
　ガラステーブルの前にあぐらをかいたまま、飲みかけのビールを一気に飲み干す。<br>
　彼女が最近好きで聴いている音楽にさえムカツキを覚え、オーディオの電源を消して代わりにテレビをつけた。<br>
<br>
　そしてどれだけの間こうしていただろう。<br />
　やることもなく、ぼけーとテレビを眺めながら、早くも俺は後悔し始めていた。<br />
「ちょっと言い過ぎたかな？」<br />
　なんて考えて反省してみたりする。<br>
　しかし、どう考えても今度のことは自分は悪くない。その思いはどうやら俺の中で変わりそうになかった。<br>
　一人ため息をつく。<br>
　今夜は、彼女と二人で過ごす予定だった。<br />
　だから当然他に予定は入れてない。<br>
　この夜は、このまま無為な時間を過ごすことになるのか。<br>
　そう考えると、ひどく空しい気持ちが押し寄せてくる。<br>
「まあ、いいか」<br>
　空しさの後に去来したのは諦めのような気持ちだった。<br>
　あいつになにを言っても無駄だ。言葉が通じない。<br>
　そんな風にさえ思っている自分に気がつき苦笑する。<br>
　もう、今夜は彼女は帰ってこないだろう。<br>
　そう割り切って出かけることにした。<br>
　こんな夜に、一人でこの部屋にいたくなかったんだ。<br>
<br>
「それでここに来たわけね」<br>
　ジンのロック片手にグチグチ愚痴を言う俺の話をひとしきり聞いたあと、マスターは男にしては高い声でそう言った。<br>
「ああ、そうさ」<br>
　カラン。俺の手がグラスを揺らし、中の氷が音を立てる。<br>
「バカだねえ。」<br>
　ためいき交じりなマスターのそんなコメントに、俺は少し身を乗り出した。<br>
「だろう？　まったく、あいつなに考えてんのかさっぱりわかんねえよ」<br>
「私が言ってるのはあんたのことよ」<br>
「ええ？　なんでだよ」<br>
「女はね。寂しがりやな生き物なのよ」<br>
　したり顔でオカマのマスターは言う。<br>
「こんな女心がわからない男と付き合ってちゃ、あの子も不安にもなるわよね。かわいそう」<br>
「……悪かったな。女心がわからなくて」<br>
　男だって寂しがりやなんだよ。そう思ったが、それを口にする代わりに煙草に火をつけた。<br>
「特にあの子はね。いつも心のどっかに、孤独をかかえてるようなところがある子よ」<br />
「…………」<br />
　一息吸って吐き出した煙が、やけにくっきりと店の空気に線を入れた。<br />
「それはあんたもわかってるでしょう？」<br>
「……ああ」<br />
<br />
　知ってるそんなことは。<br />
　悲しいくらい。<br>
<br />
（――ねえ、どう思う？）<br />
<br />
　寂しがりやで臆病で人見知り。けれどそれを人に見せない。<br>
　だからみんなあいつのことを、社交的で明るい子だと勘違いする。<br>
　けれど、けれど本当のあいつはそれとは全く逆で。<br>
<br>
（ねえ、どこにも居場所がないって、どんな気持ちだと思う？）<br>
（ここはあたしのいる場所じゃない。そう思ってるのに、そこから離れられないの。それってどんな気持ちがするものだと思う？）<br>
<br />
　付き合って間もない頃、あいつは俺にそう聞いてきた。<br>
　じゃあ俺を、お前の居場所にすればいいだろ。俺は少しぶっきらぼうに、けれど出来るだけ優しく聞こえるように気をつけながらそう言った。<br>
　そしたらあいつ、笑ったっけ。<br>
　寂しそうにして。<br>
<br />
　いつも、心のどこかに孤独を抱えている女の子。<br />
　だけど初めて会ったときはとても明るくて、そんなことに俺は全く気づきもしなかった。<br />
　自分の気持ちを隠すのがとてもうまくて、気まぐれで。初めて体を重ねたときも、きっとあいつは俺のことを別に好きでもなんでもなかった。<br />
　ただあいつは寂しかったからそうしたんだ。<br />
<br />
　そしていまだに俺は、あいつがなにを考えているのかわからない。<br />
　これだけ一緒にいるのに。なのに俺はあいつのことを、時折どうしようもなく遠くに感じてしまう。<br />
<br />
「あんたは、あの子の居場所になりたいんでしょ」<br />
「ああ。けど、あいつは多分、俺を居場所だなんて思っちゃいない――って、なんで知ってんだそんなこと！？」<br />
「バカだねえ」<br />
　マスターはクックッと笑った。<br />
「あんたとあの子が付き合い始めたころにさ。あの子がこの店に来て、そう話してたのよ」<br />
　だからバカだって言ってんのよ。マスターはおかしそうに続ける。<br />
「あの子、とても嬉しそうに話してたわよ。あんたが、俺を居場所にすればいいって言ってくれたって、とても嬉しそうにね」<br />
<br />
　俺は席を立った。<br />
「あら、もう帰るの？」<br />
「あいつを探さないと」<br />
　探して、見つけ出して、謝ろうと思った。<br />
　それに、寂しがりやなあいつのことだ。これ以上放っておいたら、どこで何をするかわからない。<br />
「あっそう。ついでだからもうひとつ教えといてあげるわよ。女の子がそうやって絡んでくるうちは、その男にまだ気がある証拠よ」<br />
　女はね、どうでもいい男にはそんなこと聞きもしないんだから。<br />
　マスターのそのセリフを背に、俺は店を出た。<br />
<br />
　もしかして俺の部屋に戻ってきているかもしれない。<br />
　そう思って戻ってみたら、本当に彼女がいた。<br />
「どこ言ってたの？」<br />
　泣きそうな顔をして、彼女が言う。<br />
「ごめん」<br />
　俺は謝った。<br />
「もうあなたは帰ってこないんじゃないかって、あたしさっきまでそう思ってたのよ」<br />
「ごめんよ」<br />
　俺は彼女を抱きしめた。<br />
<br />
　甘やかな時間の後、彼女が俺に言った。<br />
「で、どうするの？」<br />
　なんのことかわからず、間の抜けた声で俺は問い返す。なにを？<br />
「だから、あたしがもしも猫になったら。そしたらあなたはどうするの？」<br />
　まだその質問は生きてたのか！<br />
　突然の難題に、俺は数秒間パニクった。<br />
　そして恐る恐る答えた。<br />
「じ、じゃあ俺も猫になるよ」<br />
「……意味わかんないんだけど」<br />
　思わずなにか言い返そうとして、思い直し、別のことを聞いた。<br />
「今日はどんな一日だった？」<br />
　機嫌が悪そうな目で睨まれたが、ちょうど今日起きたことで話したかったことがあったらしい。<br />
　彼女はいつの間にかその話に夢中になり、俺はひそかにほっとしながら、その話に聞き入っているフリをした。<br />
　こうやって話をしてくれるってことは、どうやら彼女は今も俺のことを必要だと思ってくれているようだ。<br />
<br />
　俺には、彼女が本当はなにを考えているかなんてさっぱりわからない。<br />
　もしかしたら彼女も同じ気持ちなのかもしれない。男と女は、本当の意味ではなかなか分かり合えないのかも知れなかった。<br />
<br />
　けれど、俺はこいつのことが好きだから。<br />
　だからこれからも、そのたびに変わる彼女のルールで伝え続けようと思った。<br />
　ただ、好きだという気持ちを。<br />
</span>
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<title>もしも彼女が</title>
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<issued>2007-06-08T13:41:53Z</issued>
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<created>2007-06-08T13:41:53Z</created>
<summary type="text/plain">本ページは、特集用に作成したご案内ページです。 お手数ですが、以下リンクをクリックして本作にお進みください。 　&amp;#32;&amp;#62;&amp;#62;&amp;#32; 【もしも彼女が】に移動  ...</summary>
<author>
<name>千歳</name>
<url>http://www.ckotoba.com/</url>
<email>ckotoba@gmail.com</email>
</author>
<dc:subject>400_恋愛小説</dc:subject>
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<![CDATA[本ページは、特集用に作成したご案内ページです。<br />
お手数ですが、以下リンクをクリックして本作にお進みください。<br />
<br />
<br />
　<span class="font_red">&#32;&#62;&#62;&#32;</span> 【<a href="http://www.cnovels.com/rs/moshimoshimo.html">もしも彼女が</a>】に移動 <br />
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<title>14時のカフェ</title>
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<issued>2007-06-05T12:33:35Z</issued>
<id>tag:www.cdailylife.com,2007://9.18502</id>
<created>2007-06-05T12:33:35Z</created>
<summary type="text/plain"> 　二日酔い気味のランチを、職場近くのカフェで過ごした。 　誰かと一緒にご飯を食べるのも好きだけど、一人で過ごすこういうのも、自分にとっては大切な時間だ。 「カフェラテのバニラ入りとミックスサンドイッチください」 　かっこつけてるときはなんとなく抵抗のあるメニューをここぞとばかりに注文。灰皿を持って窓際の椅子に。 　くたびれた胃はサンドイッチみたいな軽食にもびびってたけど、甘いカフェラテで無理やり...</summary>
<author>
<name>千歳</name>
<url>http://www.ckotoba.com/</url>
<email>ckotoba@gmail.com</email>
</author>
<dc:subject>100_日常</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.cdailylife.com/">
<![CDATA[<!-- autolink content -->
　二日酔い気味のランチを、職場近くのカフェで過ごした。<br />
　誰かと一緒にご飯を食べるのも好きだけど、一人で過ごすこういうのも、自分にとっては大切な時間だ。<br />
「カフェラテのバニラ入りとミックスサンドイッチください」<br />
　かっこつけてるときはなんとなく抵抗のあるメニューをここぞとばかりに注文。灰皿を持って窓際の椅子に。<br />
　くたびれた胃はサンドイッチみたいな軽食にもびびってたけど、甘いカフェラテで無理やり流し込んでやった。<br />
　耳に押し込んだイヤフォンから聴こえてくる、昔のビジュアル系の曲。<br />
「時代は追いかけるもんじゃないぜ。守るもんだ」<br />
　そんな言葉を思い出した。10年以上前、元ヤンキーの山本先輩がリーゼントを整えながら言ってたセリフだ。<br />
　そういえばPHSのイヤフォン端子部分が日曜に壊れた。だから今は携帯電話の方で音楽を聴いている。やっぱりこういう端子口って、良く使ってたら痛むんだな。いつか携帯電話の端子も使えなくなったら、しょうがないからなんかプレイヤー買おう。<br />
<br />
　サンドイッチ食い終わって、タバコを吹かして、気持ち悪さを感じる神経が刺激されて吐き気を覚える。<br />
　それでもタバコを吸い続ける。自分でも意味が分からない。こんな辛い思いをしてまでタバコを吸う意味があるんだろうか。Ｍか俺は。<br />
<br />
　いい感じにダサかっこわるい昼下がり。そんな自分に何故か俺はとても安心して、読みかけの本を開いた。<br />
「私は凄く幸福だった。」<br />
　そんな一文に、不思議なくらい心を奪われる。<br />
<br />
　カフェラテの氷が溶け切るまでの時間。とても天気のいい14:00台の昼下がり。<br />
　好きな歌に好きなタバコ。友達からのメール。<br />
　凄く、ではないのかもしれないけど、こういうのはきっと、幸福な時間の中に入ると思った。<br />
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